第174庫 ライカの叫び

「俺はね、彼が望む覇王の道を成就させてあげたいんだよ」

「……リボル、君は狂っている」

「狂ってなんかいないさ。いずれ、クーラにもわかってもらえると思っているよ。ゲーム時のまま進む世界なんて――全てがわかっていて面白くもない」


 リボルは両手を天高く掲げ、


「俺はフレイムドルフの統治した世界が見たいんだっ! 独裁者による徹底的な実力至上主義、オンリー・テイルの世界は大いに変わるぞっ!!」

「フレイムドルフ、あなはたそんな王の成り方で満足するのね」

「武者ゴザル、お前の言いたいことはわかる。いいように扱われるのは癪ではあるが、我の道には必要不可欠な人物と判断した」


 フレイムドルフが剣を抜き、


「未来を掴み取るには未知の力がいるのだ。今から我は触術師クーラにとどめを刺す、お前はこれをどう防ぎ切る? 先ほどのように我の剣をとめることはできるか? できるわけがないだろう」


 一歩、一歩、僕たちに歩み寄って来る。

 治療中で動けない僕、ゴザルは震える身体で僕の前に立った。両手を広げ、フレイムドルフの前に立ちはだかった。


「……やめ、なさい」

「くっくっく。土下座をしながら懇願したら考えてやるぞ」


 その一言にゴザルが身を屈ませる。

 額を地面に、屈辱的な姿を――僕のためだけに実行した。

 横たわるだけの無力な僕は、事の顛末を見ることしかできなかった。


「……やめて、ください」

「武者ゴザル、お前たちの負けだ」


 フレイムドルフがゴザルの頭を踏み付ける。


「自身の求める結果に繋がるのなら過程などなんだってよい。最後に頭上で立っているものが勝者であり王なのだ。安心しろ、武者ゴザル――お前だけは生かしておいてやる」

「……約束が、違うじゃないのよ」

「あくまで我は考える――そう言ったはずだ。お前は我のに必要な存在、それ以外のプレイヤーはいらん」


 その時、ナコが遠くから弾き飛んで来る。

 こちらも傷だらけ、ナコはすでに――気を失っていた。

 ニャニャンが仕掛けてきたPvP は惨敗という形で幕を閉じた。


「はい、こっちも終わったよ」


 ホムラがニャニャンの横に立つ。

 全ての勝者と敗者の立ち位置が――完全に決まった瞬間だった。

 フレイムドルフが剣を掲げ、僕とナコにとどめを刺そうとする。


「クーラ、君はまた――この窮地を乗り越えられるか?」


 リボルが笑う。

 奇跡なんてものは――そう何度も起きない。もし、自ら起こせるのだとしたらそれは奇跡とは言わない。

 まさに、絶体絶命の瞬間――、


「マスターぁあっ! 助けてぇええっ!」


 ――緊迫した空気を壊すようライカが叫んだ。

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