第171庫 3 vs 3 その1

 準備運動とばかりに、ニャニャンが屈伸をする。


「まっ、そっちは脱出したばかりで満身創痍、結果は決まりきってるかもにゃあ。ハンデとかいる? 片手で戦ってあげようか?」

「は? ハンデなんかいるわけないでしょ。私が万全かどうかなんて関係ない、ニャンに対する怒りが私の全てを覚醒させるわ」

「一度、ゴザルにゃんとはやり合ってみたかったのね」

「奇遇ね。私も今ニャンとやり合いたくて仕方ないわ」

「覚悟はいいかにゃあ? 行くよっ!」

「かかって来なさいっ!」


 ニャニャンが構え、ゴザルに攻め込む。

 拳闘士の型、いつもの姿を見て僕は――瞬間、極大の炎が飛来してくる。

 忍者のスキル"瞬炎"、僕は触手をバネ状に回避する。

 ご挨拶の一撃と言わんばかり、ライカが駆け走って来た。


「クーラお姉さんはぁ、ライカが相手してあげるぅ」


 忍者の武器はクナイ、小回りの利く速度重視となっている。

 スキルや手数では圧倒的に不利な上、ライカがどれくらいの実力者か見えていない。リボルが側に置く限り、手練という意識は持った方がいいだろう。

 自然とバトルの構図が出来上がっていく。

 ゴザルとニャニャン、僕とライカ、そうなると――ナコとホムラの戦いを避けることはできないだろう。

 ナコの精神状態が心配だが、こちらをどうにかしない限り動けない。


「……ライカ、どうして君はリボルに付いているんだ。やつの思想に賛同しているというのか?」

「んんー、マスターはライカの恩人だからねぇ。思想がどうとかライカはどっちでもいいんだけどぉ。この世界の人間は汚い――汚い汚い汚いっ! 殺せる側に立てるのならライカは殺せる側に立つっ!!」


 呪言のようにライカが叫ぶ。

 ライカの見た目は幼い、ニャニャンの話曰く年齢だけは転生前=転生後――もとの世界のまま反映されるのであれば、間違いなくライカはナコと同い年くらいだ。


「汚物は全員、ライカの手で消してやるんだぁっ!」


 今日にいたるまで、ライカにどんなことがあったのか。

 少女が抱える恨み、なんとなくではあるが察しが付いた。

 ナコも救出するのがあと少し遅れていたらと思うと――今でもゾッとするくらいだ。


「燃やすのが駄目なら、動きをとめてやるぅっ!」


 ライカが素早く手を動かす。

 忍者は忍術というスキルを持っており、特定の印を結ぶことによって発動することが可能となっている。

 この印は――辰、卯、寅、足もとを凍らせる忍術だ。

 忍術が発動する直前、即座に地面から跳躍する。ある意味、相手がよかったかもしれない――何故なら、僕は忍術の印を全て記憶している。


「"氷冷晶"っ! って、なんでもうすでに避けてるのぉっ?!」


 ライカが地団駄を踏む。


「もしかして、クーラお姉さん、ライカの印がわかってるぅ?」

「さあ、どうだろうね」

「そんなわけないっ! ライカにはまだまだすっごい忍術があるんだからぁっ!!」


 ライカが距離を取り、再度印を結ぶ。

 これは――"雷槍"か、直線上に放たれる忍術である。僕はそれを真横に回避、そのまま足もとに触手を展開――反転してライカの眼前に迫る。


「わわわぁっ、ええっ! これも避けちゃうのぉっ?!」

「ごめん。縛らせてもらうよ」


 僕はライカを触手で絡め取る。


「ぐぐ、ぎゅぅうわぁ」


 相手の戦力を消すに越したことはない。

 申し訳ないが――ライカの意識が飛ぶまで力の限り締め上げるのであった。

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