第85庫 真価

「なんだかそれは寂しい気がする。私たちと一緒に来てくれないかな?」


《 猫の少女よ、面白いことを言う 》


「駄目、かな?」


《 我が付いていくに値するのか見せてみよ 》


 穏便な空気から一転、張り詰めた空気が舞い戻る。


「白虎?! 僕はオススメできない――危険すぎるっ!」

「待ちなさい。勝手に話を進めるのは許さないわ」


僕とゴザルさん、慌てて白虎の提案に異議を唱える。


《 安心しろ、我から攻撃はせぬ。猫耳の少女よ、一撃我に放て――お主の真価を判断してやる 》


「大丈夫です。クーラ、お侍さん、白虎さんの言葉を信じてください」


 ナコがハッピーを構えて戦闘態勢に入る。

 一人と一匹のぶつかり合い、僕とゴザルさんは頷き合い――黙ってこの場を見守ることにする。


《 打って来るがよいっ! 猫耳の少女よっ!! 》


 白虎が立ち上がり、高らかに吼えた。

 改めて見てもなんという威圧感だろう。白の宝物庫イレシノンテの主、ゴザルさんはこんなやつを相手に圧倒していたのか。


 だが、僕が危険と言ったのは――そういう意味ではない。


 現状、ゴザルさんの方が色々な面で遥かに強いだろう。その圧倒的な強さに追い付き追い抜かすかのごとく、恐ろしい速度でナコは成長し続けているのだ。

 目まぐるしいまでの強さは――イレシノンテに来ても加速している。


「白虎さん、私の本気受けとめて」


 黒い波動がナコの全身を包み込む。

 溜めに溜めた渾身の一撃を白虎に放つつもりだろう。あまりの魔力量に白虎の間全体が振動している。本当にナコの魔力量ってどうなってるの? 絶対に僕たちと同じ保有量じゃないよね?

 数秒後の己の未来を悟ったのか、白虎の表情が一変する。


《 えぇっ! なにこれ――ちょっと待って?! 》 


「全てを打ち払え、暗波っ!」


 白虎が制止の声を上げるがすでに遅い。

 暗波は一直線に白虎のもとへ、もう僕ではどうすることもできない。


《 ひぃん、死んじゃう~ 》


 白虎が悲しげに叫んだ。


「あーもう、だから勝手に話を進めないでって言ったのにっ! どうせこうなると思ったわよっ!!」


 暗波の前、ゴザルさんが滑り込む。

 ゴザルさんもこの流れは想定内だったのだろう、すぐに動けるよう準備をしていたのかもしれない。


「無の刃――神威!」


 蒼き閃光が暗波をせきとめた。

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