第79庫 触診の真価
触診の話は続き、僕はゴザルさんにあるお願いをする。
「ゴザルさん。このまま、もう少しだけ触診を試してもいいかな」
「これ以上私のなにを調べる気なの?」
ゴザルさんが自身の身体を庇いながら、
「身長? 体重? 骨密度? ソラがここまでぶっ飛んでいたなんて私これからどう付き合っていけばいいの?! シスコン、ロリコン、ドの付く変態、危ない要素満載だったとしても大切な仲間――更生してあげないといけない」
「めちゃくちゃ早口で喋るねっ?!」
「覚悟を決めた、好きにしなさい。ソラ、あなたは私の全てでなんとかしてみせる」
ゴザルさんが僕に頷き返す。
僕はその合図を許可と受け取り、触診の効果をさらに追求していく。白い触手をゴザルさんの兜内に侵入させて――頭に繋ぎ直す。
捕食を習得した時もそうだった。
スキルというものは不思議なもので、使用タイミングが訪れるとイメージが漠然と浮かび上がってくるのだ。
ゆっくりと、白い触手に魔力を通してみる。
「……あれ、頭痛が治まっていくわ」
「さすがに寄生を駆除することは無理だったよ。兜が重たいのかな? それによる頭痛は治せたみたいだね」
触診の真価はここにあった。
回復系のスキル、まさに僕が待ち望んでいたものだ。魔力を使用した脱力感から推測するに――5回くらいが限界だろう。
対象のダメージ度合いもあるかもしれない、ここら辺の細かい部分は今後の課題としていこう。
「変態スキルかと思いきや、中々に使い勝手はよさそうね」
「変態スキルはひどすぎるっ!」
回復以外にもさらなる発見があった。
「この触診、意識を集中したら――触手の先端が視界に映り込んでくるみたいだ。ゴザルさんの兜の中が一瞬だけ見えた」
「別に隠しているわけじゃないし、見られてもなにも問題はないわ。髪の色や瞳の色はファンタジー的に変更したけれど、その他は全てカメラ認識で作成したのよ。私の素顔はどうだったかしら?」
「美人すぎてビックリした」
「……ほ、ほめすぎだから」
カメラ認識、ナコと同じ作成方法というわけだ。
オフ会で運命の出会いとかあったらいいなぁって思っていたけど、美少女ばかり出会っている気がする。
僕の前世よ、どんな徳を積んできたんだ。
いや待て前世の場合、もとの世界の僕が前世になるのか? これといった徳を積んだ覚えがない上、判断がよくわからないしどうでもいいか。
それにしても、ゴザルさんの顔どこかで見覚えあるような。
――コンコン、コンコン。
その時、不意にポケットハウスの扉を叩く音が鳴った。
僕たちは一斉に武器を構える。
モンスター? いや、状況からして知性あるものには違いない。
ゴザルさんが刀を構え――扉の方に向かう。
「私がでる。万が一があったらすぐに逃げて」
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