第77庫 そこだけは譲れない
20階の広間に到達。
僕たちは昨夜と同じくしてポケットハウスにて休息をとる。
各々、現状を詳しく確認していくという話になった。
ネーム Naco
ジョブ 魔法少女(レベル45)
種族 ミミモケ族
保有スキル 魔装デバイス(ON OFF) 使い魔
「わぁ、魔法少女のスキルが一つ増えています」
「……40を超えるまでスキルが1つだったってのもすごいわね」
「普通はいっぱいあるものなんですか?」
「メジャーなジョブだったら、平均的に4~5つくらいはあると思うわよ。ソラもレベルの方は上がってる?」
ナコに続いてステータスを表示する。
ネーム Kura
ジョブ 触術師(レベル20)
種族 人族
保有スキル 触手 捕食 触診
「わぁ、僕の触術師もスキルが増えてる」
「……ソラ、いくらなんでもレベル低すぎない? ゲーム時のここの適正レベル80よ? よく上級ダンジョンに行こうって気になったわね」
「誘ったのゴザルさんじゃんっ!」
「冗談だってば。リアルになった今レベルはそこまで強さには関係ないから――って、言いたいところだけど超越者の域になってくると違うわ。超越者だけに与えられる『特別なスキル』はオンリー・テイルの世界に置いて最強の一角となり得る」
ゴザルさんは僕とナコを真正面から見据え、
「この世界で生きていく限り、あなたたちも超越者を目指しなさい。強くなって損になることなんてなに一つないわ」
説得力のある言葉だった。
ネーム Gozaru
ジョブ 武者(レベル112)
種族 人族
保有スキル 火・土・水・風・氷・雷・無の刃 瞑想 神眼
ゴザルさんがステータスを開く。
「二人のステータスを見て、私だけ見せないってのもなんだから」
「お侍さん、すごいレベルですっ!」
「うふふ、ありがとう。でもね、ナコちゃんの側にいる人の方が――私よりもレベルは上だったのよ。オンリー・テイルの世界に置いて、魔法剣士というジョブで彼より最強のプレイヤーなんていなかった。今は笑えるくらい弱いし低レベルだけれど」
ゴザルさんが僕を見て笑いながら言う。
「ゲーム時はクーラとお侍さん、どっちが強かったんですか?」
「僕だよ」「私よ」
重なる回答。
ナコは究極の質問をしてしまった。ゲーマーとしてどちらが強いかというのは、いつの時代に置いても譲れぬ戦いなのである。
火花を散らし交わり合う視線、僕は先手必勝で攻める。
「おかしいなぁ、PvPでは遥かに僕の方が勝率高かったよね」
「私はあんなズルい戦いの結果を負けと認めない。遠くからちまちまちまちま――状態異常、魔法攻撃、バインドの繰り返し、あんなので勝って満足してたの?」
「武者と正面切って戦えるわけないだろ、魔法剣士はあの戦術が正攻法だから。イノシシを倒すには罠がメインになるんだよ」
「へぇ、私がイノシシって言いたいわけ?」
「ゴザルさんバカの一つ覚えみたいに一直線に走って来るからね。そりゃもうそのルートに設置型の魔法仕掛けまくって待機するのは当たり前だから」
「再戦を希望するわ、表にでなさい」
「うわぁ、魔法剣士じゃない僕に勝って嬉しいの? ゴザルさん大人として恥ずかしいと思わないんですか?」
「……な、中々に煽ってくるじゃない。私恥ずかしいと思いません、中身が一緒なら勝ちは勝ちなんで」
「開き直った!」
その時、パンっと手を叩く音が響く。
「二人共、喧嘩しちゃメッ! です」
「「すいませんでした」」
重なる謝罪。
僕とゴザルさんが大人ならば――ナコはまだ子供だ。ナコが呆れて制するほどに僕たちはヒートアップしていたのだろう。
大人としてお恥ずかしい姿を見せてしまった。
「口論しちゃってごめんなさい。ナコちゃん、このくだらない話は私の方が強いということで終わりにするからね」
「うんうん。は? いやちょっと待ってよ、なにさり気なく自分が上で終わらせようとしてるの?」
「……お侍さん、クーラ」
ナコがジト目で睨み付けてくる。
「よし、僕とナコの新しいスキルについて検証してみよう」
「ナイスよソラ、名案だわ」
大人の狡猾な手段、急な話の転換にて僕たちは逃げ切るのであった。
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