第76庫 無限のパワー
翌日。
イレシノンテ、11階から20階――僕たちは順調に突き進んでいた。上級ダンジョンといえども、モンスターが生きている限り基本的に急所は一緒だ。
――僕は触手による内部破壊を繰り返していく。
オーラ・ストーンにてハイスパイダーと対峙した時にも感じていたが、手強いモンスターになればなるほど一撃で仕留め切るのが難しい。
急所の大きさもモンスターごとに異なり、外皮が硬いモンスターにいたっては糸状の触手を侵入させることすらできない。
「ソラの動きが悪いわね、もっと深く踏み込んだ方がいいわよ。ゲーム時が中間的な役割だったせいもあるのかしら」
僕の前職は『魔法剣士』、攻守共に器用貧乏的なジョブであり、パーティーに足りていない役割、その埋め合わせを担って前衛や後衛どちらもやることがあった。
今の触術師は完全に前衛寄り、多少経験が生きてくれると嬉しい。
「やっぱり、今まで使用していたジョブは関係あるの?」
「あくまで私という一例になるけどね。ゲーム時のスキル連携、使用していたキャラクターのアクション、長年のプレイで身体に刻み込まれているでしょ。それを体現する感覚で私は動けるわ」
ゴザルさんは僕の後方で待機しながら、
「動きが悪いとは言ったけど、ソラも普通以上には動けているわよ。魔力操作も思っているより全然上手い。触術師なんて初めて見たけど、モンスター相手より人間相手の方が遥かに強そうなジョブね」
僕がモンスターを倒す動きから、ゴザルさんは察知したのだろう。
「逆にナコちゃんは全てに置いて桁違いだわ。持久力が良い意味で異常すぎる、魔力が枯渇しているように見えないのよね」
常にフルパワー。
ナコが黒い波動を身にまといながら、僕がモンスターを一匹倒す間に――数倍の数を斬り倒している。
僕の後ろから、ゴザルさんが暇そうに話しかけてくるのもわかる。
何故なら20階に到達目前の今、ゴザルさんと同じくして後列に打ち漏らすということが一度もないのだ。
ゴザルさんはナコに指摘する箇所がないようで、
「普通、あの威力の攻撃を連発していたら魔力なんてすぐになくなる。全ジョブ魔力量は共通のはずなのに、ナコちゃんはその概念をぶっ壊しているわ」
「ゴザルさんでもその源はわからない?」
「……うーん。ま、魔法少女、だから?」
やはり、ゴザルさんの行き着く先もそこなのであった。
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