電気がきた!
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廃墟から役立つ品を略奪した僕ら一行は帰路につき、ニートピアへ帰った。
色々と荷下ろししている物資の中に、キラリと光る銀の筒がある。
そう、あのデンジャラス水筒だ。
もちろん危険については色々考えたとも、うん。
まず、放射性物質を持ち込む危険性。
これはまぁあるよね。
戦いの最中、気まぐれな砲弾がこの水筒を破壊したら?
きっとニートピアは深刻な汚染にさらされるだろう。
といっても、コロニーを放棄すればいいだけの話だし、ちょっと遠くにおいておいてそこでウィンウィンしてもらえばいい。
心の平穏のためには、別室を作ってそこに隔離する必要がある。
部屋ができるまでの間は、一時的に元倉庫に置いておこう。
まあ数日なら、直ちに影響はないだろう。うん。
あとは冷蔵庫だが、これは中の仕切りを取って、お肉ボックスとした。
干し肉に加工するまでの間、肉を保存しておくのに役立ちそうだ。
缶詰やお菓子なんかの保存の利く食品を大量に持って帰れたのも助かる。
食糧問題も改善した。
いやあ、あのキャラバンのおっちゃん、めっちゃいい人だなぁ!!
廃墟の地図があったら、また買うとしよう。
さて、遠征が終わったので、次は干し肉を作る作業が始まる。
ギリーさんがウサギの肉を削いで、ハクやクロたちが干し台に広げて干す。
僕の仕事は作業場になっているカマドまでの肉運びだ。
マトモに料理できないから仕方ないね。
元倉庫でデンジャラス水筒と一緒に唸っている冷蔵庫を開けると、いささか危ない雰囲気を
そして、ギリーさんが作業するカマドの上に置くと、彼女はすぐさま作業に取り掛かった。
塊肉を大雑把に三枚に下ろすと、そこからシャッシャとナイフを振り、肉を器用に削いで行く。いやあ手慣れたもんだ。
ペラペラになった肉は、そこらへんの草を使ってポチが作ったザルに盛り付けられ、あとは干すのを待つだけとなる。
「冷蔵庫のお陰で、肉が腐る前に全部干せそうですね」
「ああ。電気サマサマだね」
「まさか、こんな簡単に電気が手に入るとは思いませんでしたね」
「そうだねぇ。……気をつけな?」
「えっ?」
「あんたは墜落者ギルドの新入りだ。それなのに、だ。墜落者ギルドが目の色を変えて取り組んでるモンをもってるんだよ」
「あっ、やばそう」
「誠意を見せろ。そんなことも有り得そうだねぇ?」
「よし、全力で隠し通しましょう」
「それが良いね」
なにしろあのデンジャラス水筒は、コンビニ一軒分の電力を賄える発電機だ。
欲しがっている連中なら、何をするかわからない。
たとえ墜落者ギルドの仲間でも、いつまで品のいい顔をしていられるだろう。
うん、何の保証もない。
あまり考えたくはないが、万一のことを考えたほうがいい。
下手したら流血沙汰になりかねないな。
ぱっと見、電気を使ってるってバレないようにしないといけないな。
冷蔵庫もしばらく安全のために隠しておこう。
少なくとも、「本家」墜落者ギルドと足並みがそろうまでは。
「ほら、切った
「すみません。いま並べます」
さて、切られた肉をザルに並べるとするか。
塊肉をスライスし、2つのザルに薄く切り取られた肉が放射状に並べられた。
うん、なんか通販の写真とかで見たことある。
我ながらこういう並べるとかの雑用は得意だ。
それそれそれそれ! そーれっと!
僕の指でつままれた肉は、ザルの中心から5℃の角度で傾きながら、機械的精密さでもって並べられていく。うむ、美しい。幾何学的な美がある。
「何か気味悪いくらいキレイに並べるね、アンタ」
「そうですか?」
「もっと適当でいい、って言いたいんだけど……普通に速いしね」
「ありがとうございます」
よし、肉を盛ったザルが完成した。
……おや?
せっかく干す用意ができたのに、ハクとクロの姿がない。
これはまさか……。
◆◆◆
「すずしー」
「こらハク! サトーさんに勝手に開けるなって言われたでしょ!」
「でもすずしーぜー? クロも涼んでけよ―」
「ちょ、ちょっとだけですわよ……?」
「こらっ二人共! お肉が悪くなっちゃうでしょ!」
「「ひゃいっ!!」」
案の定、冷蔵庫をフルオープンにして涼んでいた。
まあ、こういうこともあるしな。
気まずそうな顔をしたハクとクロに肉を盛ったザルを渡して、干しに行かせる。
仕方がないっちゃ仕方のないことなんだが、冷蔵庫をエアコン代わりにされるとちょっと困る。せっかくのお肉が台無しになるからね。
しかしこの冷蔵庫、不思議だな。普通、業務用の冷蔵庫って室外機とか付いて、それで熱を吐き出してるもんだけど……これには何もついてない。
そもそもの話になるのだが、実はこの機械、側面のプレートを調べると冷蔵庫とは書いてない。プレートの説明によると、「反エントロピー装置」だそうだ。
会社の名前も聞いたことがない。
ワンダーランド。とだけ書いてある。本当に会社なのかも疑わしい。
これも何か怪しい気配がするなぁ……。
ま、いっか。
なにも問題が起きてないのに、アレコレ考えてもしょうが無い。
確実な未来、希望について考えよう。うん、そのほうが良い。
干し肉とコンビニの食料があれば、数週間は持ちそうだ。
干し肉の完成が待ち遠しいな。
元倉庫をでた僕は空を見上げ、ふと思い出す。
そういえば、久美子が乗ってきた
あれに電源を供給し直せば、この星のことが何かわかるかもしれない。
この星に降下する前に、久美子はこの星を詳細にスキャンをしているはずだ。
なぜなら、それをしないと着陸視点を推定できない。
最悪の場合、降下船は海の中に落ちてしまう。
正確な地図が分かれば、宙族の拠点なんかの場所も判明するのでは?
もしかしたら、各地にある廃墟の場所もわかるかも。
……うん、試して見る価値はありそうだ。
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