お肉パーティ(1)

「プイ!」

「そうだな、僕の気持ちをわかってくれるのはお前だけだ」

「そういえば……サト―様が連れてるアレ、なんですの?」

「よく分からんけどね、ポチとか言って、物を建てたりしてくれるよ」

「へぇ、すごいんですのねぇ」

「ポチかー! よろしくなー!」

「キュイ!」


 どうやらポチもハクとクロに懐いているようで何よりだ。

 ポチがいればそのうち電気も手にはいるんだろうけど、まだ先は長そうだなあ。


 ハクとクロの二人は電気を探しているようだけど、彼女たちがニートピアにいるあいだに電気やクーラーを用意できたら、ウチに居着いてくれるかなぁ?


 彼女たちの力は、今後起こるだろう荒事を考えれば、かなり頼りになる。

 ……もちろん、性格が合えばの話だけど。


 まあ、考えても仕方がない。全ては仮定の話だ。

 ともかくニートピアに帰るとしよう。



「何もねーなー!!」

「ですわ! 驚くぐらいスッキリしてますわね!!」

「割と傷つく!!」

「プイ!」

「まあホントのことだからねぇ。せっかく人手が増えたんだ。ニートピアを広げてみるのも考えてみたらどうだい?」


 うん、ギリーさんの提案はもっともだ。

 元倉庫の宿舎には、キャラバンの人たちを泊める予定だった。

 だけど今はもう、完全にニートピアの住人の宿舎になってるからな。


「……そうですね。うちに来るキャラバンの人数次第では、彼らを泊める場所がなくなっちゃいます。新しい建物が必要かも」

「ま、今はこの肉をなんとかすることが先決だね」

「ですね」


 僕たちが持ち帰ったジャッカロープは、まあデカい。

 食糧問題は解決したが、こんどは毎日がお肉パーティになるという別の問題が出てきた。


「ギリーさん、リキシってつくれます?」

「リキシ……ああ、キリシね、干し肉のことかい?」

「あ、それです。それそれ」

「キリシつくるのかー?」

「そうですわね。これだけの量ですから、腐る前に加工しておきたいですわね」

「俺たちはペミカンにしちまうけどなー!」


 むむ、また知らない単語が出てきた。

 ペミカンってなんだろう?


「なんです? そのペミカンって」

「干し肉をベリーなんかを混ぜて煮込んで…」

「バターとラード、アブラでガッチガチにしたやつだぞー!」

「何そのカロリー爆弾」

「旅に使う保存食だね。良い職人が作るペミカンは結構うまいよ」

「へー」

「でもーサトーの家は貧乏だから無理だな!!」

「そうですわね。見た所、畑もないようですし」


 ゴフッ!

 本当のことだけどスゴイ傷つく! 


「そ、そうなんですよ、なのでお二人には畑を作るのを手伝ってもらおうかと」

「なにを植えるんですの?」

「うーん、特には決まってないかな」

「でしたら採りに行きましょうか」

「だなー! 肉だけだと寂しーぜ! イモとか豆とってこよーぜ!」

「そうですわね、おイモさんなら、残りは苗にできますわね」


 おお、採取もできるのか、でも……。


「今から取りに行ったら、暗くなっちゃいますよ」

「それなら心配ないですわよ、私たちなら、すぐ帰れますから」

「そうだなー!」

「えぇぇ?」

「では、いってきますわね」


 そう言った二人は、僕の返事もまたず身にまとった服に手をかけ、肩をあらわにした。おおおっ?! 大胆すぎるぞ?!

 

「わわっ」


 僕はとっさにそっぽを向いたが、その時「バサッ」と鳥が羽ばたく音がした。

 いや、鳥にしちゃデカい。むしろジャッカロープに似た……?

 何事かと思ってみると、そこには信じられない光景があった。


 クロは漆黒の翼を背中から伸ばし、しなやかな獅子の体に変じている。しかしその頭部はライオンではなく、タカのものだった。

 そして他方、ハクは白く輝く宝石のような鱗を身にまとい、トカゲの体にコウモリのような翼を広げていた。


 それはまさに、ナーロッパ物語に出てくる「ドラゴン」と「グリフォン」そのものだった。


 白と黒、二対の翼は砂塵を巻き上げて飛び立つと、サバンナの空に消えた。

 僕はカタカタ震えながら振り向くと、ギリーは頭を抱えていた。


「あーあれだ。こないだ言ったこと、覚えてるかサトー?」

「ええ、もちろん」

「あれがドラゴン族とグリフォン族だ」

「で……蛮族で一番ヤベー奴らですね?」


 ギリーからの返事はなかった。

 うん、これは下手をすれば、僕らが難民になりますね!!!


 必死で接待しないと、ニートピアが滅ぶぅ!!!!

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