自分だけのマイホーム

ほのぼの

第1話:人生逆転の始まり

 オレの名前は湯浅辰巳ゆあさたつみ、この物語の主人公だ。オレの住んでいる場所は都内から少しだけ離れたところの訳アリ物件に住んでいる。何でかって?そりゃあ引っ越しの決め手は費用が安かったからに決まっているだろう。

 ただし、訳アリ物件と言うのはどうも慣れるまで時間がかかるもので、今の家に引っ越して数か月経つと言うのに未だに全ての機能を使いこなせていない。

「ふぅ・・・。今日も疲れたな・・・」

 ある日の仕事帰り、疲れが溜まっていたオレはいつものように家に帰るやベッドですぐに横になったのだがその時からオレの心に語り掛けてくる人物が現れた。


「・・・けて!!」

「何だ?誰かいるのか?」

「助けて・・・、くれ・・・!!」


 助けを求める声が聞こえるので辺りを見渡したが、オレ以外に人の姿は見当たらない。そりゃあ、オレの心に直接語り掛けてるんだから当たり前なんだけど・・・。


「こっち・・・、こっちだ・・・!!早くしろっ・・・」


 あまりにもうるさいのでオレは、声のする方へ向かった。するとそこはテレビ台だった。そこで初めてオレは悪魔の呪いを封印したと思われるお札を見つけた。


「あれ?こんなのあったかな?」


 確か昨日の夜はこんなお札、無かったはずだ。まぁ、テレビ台の奥だからもしかしたら気付かなかっただけかもしれないが・・・。


「お前・・・、まさかこのオレ様の声が聞こえるのか?」

「あぁ。よく分からないけど聞こえてるよ」

「だったら早急にそのお札を剥がしてくれ。そうすればオレはまた現世に戻る事が出来る。」

「どういう理由で閉じ込められたかしらないが、現世に戻って何するつもりだ?」

「逆にそんな事を聞いて来る人間と出会うなんて、初めてだぜ。心配するな。このお札を剥がしてくれたらオレの持っている力でお前の住んでいるこの部屋に結界を貼るだけさ」


 悪魔と名乗る声はどうやらオレの見方についてくれるらしい。この部屋に住み着いて何年経っても利用者が現れなかった事で闇のエネルギーが溢れんばかりに溜まっているようだ。そのエネルギーは強力で、ちょっとやそっとの力では封じ込める事が出来ないようだが、このアパートが出来た時に、闇の呪いを追い払うため、とある神社の神主がお祓いをしてお札を貼ったんだと。


「そんなミステリアスな事が本当にあったなんてな・・・」

「今まで小説の中だけの世界で起きていると思ってたな?分かったら早く外せ。そしたらお前のやりたい事は、何でも出来るようになるさ!!」

「あぁ・・・。じゃあ助けてやるからオレの命は奪い取るなよな!!」

「おぉ・・・・・・。やっと出られた・・・!助かったぜ辰巳たつみ!!オレを助けてくれたお礼としてこの部屋に結界を貼ってやった。この結界の中ではどんな人間もお前の言いなりになる。やりたい事、あるならさっそく試さないとな・・・」

「試すって言っても・・・、どうやって・・・」


 確かに悪魔がオレの住む部屋に結界を貼った時、オレ自身に不思議な力が沸き起こった。今までになかった桁外れの集中力と体力、精神力の向上はまさしく彼によるものだ。


「お前・・・、さっき晩メシに宅配のピザを頼んだよな?今、宅配担当の女の子がお前の部屋目掛けてピザを運んでるから、その子で試せば良いぜ!」


さすがは悪魔・・・、オレの考えていることなど全てお見通しのようだ。


❝ピンポーン!❞


「すみませーん。湯浅様のお宅でしょうか?ピザのデリバリーをお持ちしました」


 インタホーンが鳴ったので、オレは尽かさず玄関に向かった。まだこの時点では結界の効果は発揮されない。彼女を無事、足を一歩でも玄関に招き入れる事が出来たら初めて効果が発揮されるので、ココは言葉選びが必要である。


「遠い所お疲れ様です。お手数をおかけしてしまいあれなのですが、もし良ければテーブルまで運んでもらえませんか?」

「もちろん大丈夫ですよ!じゃあ失礼しますね」


 何も知らずにオレの部屋に足を踏み入れようとする彼女・・・。

そして、玄関に入った瞬間、彼女の瞳がうつろになり、まるで時間が停止したように全然動かなくなった。


この時、また悪魔の声がオレに聞こえて来た。


「上手くいったな・・・。さぁ、後はお前のやりたいようにやるだけさ!」

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