第23話 outside(素)

# 学生控え室

「では、先ず此方は労働基準法第五条に基づき辞表の提出から。受理されないと風営法30条で営業停止。」

「借金の件はどうする?」

「借金はないそうだけど。」

「そんな筈はない」

「何の借金?」

「五十万円の・・・・・・」

「五十万円の?」

「合法なんだろうなぁ?」

「・・・・・・」

「ジャッジ」

「返答不能で非合法。非合法と言うことは民法132条不法条件に当たり、借金と言う法律行為が無効、です」

「何だ。勝てるじゃん」

「シュミレーションではな。。。」

「相手は脱法非合法、だからなぁ」


#2 交番前ファミレス

「辞表は受け付けて貰えないと」

「営業に損害が出ますので」

「しかしそれでは風営法30条該当で営業停止ですが」

「そうですか」

「誘拐、ではなく略取で通報しますが」

「シンメとあの男は恋仲で」

「?」

「追いかけても無駄です、と申し上げている」

「しかし、此処に本人の辞表が」

「ですから強要は困ると」

「本人の意思です」

「違うんじゃないですか?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「不同意性交してますね?」

「証拠でも?」

「いいえ勘ですが」

「信用毀損は困ります」

「すると彼女処女で良いのでしょうか。調べれば判りますよ」

「恋仲の男が居ると」

「清い仲ですか?」

「さぁ、そこまでは」

「・・・・・・」

「よろしいですかな」

「仕事の内容ですが」

「?」

「不同意ワイセツでは無いんですか?」

「・・・・・・」

「なのですね。不同意ワイセツを含む契約は民法132条不法条件法律行為が無効。復、風営法30条で営業停止ですね。・・・・・・返していただけませんか?彼女。」


#3 国道

車は地下鉄の上を走る国道を南下して右折した。パークの外縁を西進する。

「高速かぁ」

黒音の軽では分が悪い。向こうは国産のスポーツカーだった。

左手にジャンクションが見えてくる。

逃げ切られてしまう、と思ったら。

車が左に寄って停車した。

トラブルか?と思ったらシンメと男が出てきた。

此方もすぐ後ろに着けて停車する。


「諦めた?」

「返すよ」

「?」

「上からの命令でね」

男は淡々とシンメを此方に寄越した。

日乃が上手くやったのだろうか。シュミレーション通り。

「遠慮無く持って帰るよ・・・・・・なに?」

「あまり、関わんなよ。その内あんたらの手に追えなくなる。その女で終わりにしてくれ」

「・・・・・・」

男は聞き届けたのを確認するように見据えて、車に乗り込んだ。

車が、排気ガスを出しながら去っていく。

ジャンクションに車が消えていくのを確認してシンメの方を見る。

シンメは無表情に車の去っていった方を見、其から此方を見た。

「戻ろうか」



#4  学生控室

「行方不明?」

リアンは少し怒っているようだった。

十七時を回った学生控え室の人は 疎ら。

早くなった夕暮れ、自動で電灯が点灯する。

「家出したきり帰ってこないって」

黒音が資料を各一部手渡してくる。

「身寄り合ったの」

居るという気がしなかった。

最近増えたという家出少女。

どの子の家庭も普通の家庭。

血縁で無いことを除けば。

「捜索願は出してないみたい」

「行く先が判っている、と」

「復湯没。」

「警察には聞いておく」

公安委員会が直接の管理者だった。

「突撃でもする?」

国家が最終的に相手、では何度やっても同じ結果になる気がする。

「前と同じならね」

テロリスト、ではないけれど。


窮鼠の採るべき道が暮れて行く闇に見えなくなりそうだった。







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