第38話 それからの話
結局野外学習から一か月余りが立っても犯人を特定することは出来なかった。
でも仕方がない事だと思う。手掛かりすらないのだから。誰がいつ、どこから持ち込んだのか。
範囲が膨大過ぎて特定することは不可能に違いない。
あれから森も特に異変はなく、普段通りに戻っていた。これなら、来年は通常通りに野外学習を行う事が出来るだろう。
それよりも、私達の学年は結局野外学習が出来なかった事になるのでその辺りの事はどうするつもりなのだろうか?
「ああ、それは代替案として実技のテストが行われる事になったようですわ」
マリアがさらっとそんな話を口にした。
「え?実技テスト?」
「まぁ.....」
私とエリーゼが驚いた顔をすると、マリアが兄から聞きましたの、と説明してくれた。
ギルバート様は何故そんなに学内の事情に詳しいのだろうか?それはマリア様から衝撃の事実を告げられた。
「お兄様は生徒会の副会長をしてますもの。先生方と今回の一件を話し合って実技テストに決めたそうですわ」
「.....生徒会副会長....そうだったんだ」
「ルナ、ちなみに生徒会長は王太子殿下ですわよ?もしかしてそれも知りませんでしたの?」
エリーゼが不思議そうに此方を見てくる。
「.....知らなかったわ。私、あまりそう言うのに興味がないから.....」
でも流石に自分の通う学園の生徒会メンバーを知らないのは不味いだろう。どれだけ興味がないのかが伺える。
「ルナらしいですわ。別に生徒会メンバーを知っている、知らないで何かが変わるわけではありませんし構いませんわ」
「そうですね。私達一学年とは接点も殆どありませんしね」
マリアもエリーゼも優しい!
「そう、それで流石にあんな事があって犯人もわかっていない状況で再び野外学習を行う訳には行きませんでしょ?ですけど、野外学習をやらなければその分の単位を取ることが出来ませんわ」
うんうん、と私とエリーゼが頷く。
「でしたら、野外学習に変わる別の事をする必要性がありますわよね?」
「それが実技テストなのね」
「ええ。元々野外学習はグループで協力して魔獣を倒し、ゴール地点を目指すと言う実技ですわ。それには魔法、協調性、実行力、判断力が必要ですからそれを見る為のものだと言うことですの」
「では実技テストでそれらを見る、と言う訳ですね」
「そうみたいですわ」
そっか。でも確かに実技テストなら協調性以外の物は確実にチェック出来るものね.....。
「お兄様からは今日にでも一学年全員に告知されるそうですわ」
「そっか.....じゃあ試験頑張らないとね」
「そうですわね」
その日の夕方のホームルームで野外学習の中止に伴う代替えの実技テストの詳細が担当教諭から正式に発表されたのだった。
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