第35話 野外学習当日・4
ザワザワと木々が揺れ鳥が飛び立っていく姿に先生達の緊張も増していく。
「先生、他のグループの子達は森の中に入ったままなんですか?」
他に生徒の姿が見えないので戻ってはいない事はわかっているがあえて聞いてみるがその返事はやはり期待したものでは無かった。
「.....いや、君達以外に引き返してきた生徒はまだ居ない....最悪だな.....」
「森の中で何かに遭遇しているか、何事もなく進んでいたか、か。だが今の何かの咆哮で森の中に何かの魔獣がいることだけは理解した筈だと思うけど....」
誰も戻っていないと言う言葉に、第二王子殿下が先生を見上げて現状把握に努めようとする。もう少しすれば他の先生が知らせた騎士団が到着する筈だ。そうすれば.....。
「た、助けに行かなくて大丈夫なのかしら?」
「マリア....気持ちはわかるけれど私達には無理よ」
エリーゼがマリアを嗜める。他の生徒達が心配なのはわかるが私達が行っても足手まといになり余計に怪我人を増やすだけだろう。
ガサリと音がして皆の視線が音のした方へとゆっくりと向けられた。
「.....ブラック、タイガー.....だと?何故この森に中級以上クラスの魔獣が?」
先生が驚愕の表情を浮かべて茂みから出てきた魔獣を見る。
「ブラックタイガーとは?」
「真っ黒の毛並みを持つ中級以上クラスの魔獣で、あの鋭い牙と爪で獲物に襲い掛かってくる最悪な奴です.....第二王子殿下は後ろに御下がり下さい」
「何故?」
「....いくら学園の中では身分は考慮しないとは言え、想定外のブラックタイガーから殿下に怪我をさせる訳にはいきません」
まぁそうよね。流石に王族に怪我をさせる訳には行かないだろう。彼が今回の野外学習に参加できていたのは、この森が安全だとされていたからだ。まさかブラックタイガーが出るとは誰も予想していなかっただろう。
「今はそんな事を言ってる場合ではない。彼奴をどうするかだ」
「私達教師が騎士団が来るまで何とか持ちこたえて見せるから君達はすぐこの場から逃げなさい」
「先生!それは流石に....危ないっ!!ウォーターボール!!」
魔獣討伐に慣れている冒険者ならいざ知らず、教師だけでブラックタイガーを抑えておくのは難しいだろう。それを言う前にブラックタイガーが殿下や先生達の方へと飛びかかろうとし、咄嗟に水魔法を唱えた。
「「マルシーネ嬢!」」
私の放った水魔法はブラックタイガーの顔面に命中し、森の中へと押し返した。
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