第33話 野外学習当日・2
先生から配られた地図を頼りに森の中を歩き初めて30分は経つ。それなのに小動物一匹すら出てこない事にルナは逆に異変を感じる。
森の入り口付近で聞こえていた小鳥の囀ずりも、森の中に歩いて行けば行く程聞こえなくなった。
普通なら何かしら居ても良いのではないか?と思うのだ。
「あの、第二王子殿下」
「どうかしたかい?マルシーネ嬢」
取り敢えずこのメンバーを取り仕切っている第二王子殿下の指示を仰いだ方が良いのではないかと声を掛けると、第二王子殿下は歩みを止めて私達の方へと振り返った。
「もしかしたら私の気にしすぎかもしれませんが.....静かすぎませんか?」
「.....?それはどう言う.....」
「ルナ、森の中なのだから静かなのは当然ではないかしら?」
マリアもエリーゼも不思議そうに私を見る。
「森の中だから静かなのは確かにそうかもしれませんが.....小動物や鳥の鳴き声すら全くないのはおかしくないですか?まるで.....」
そう、まるでそれ以上の何かが居て怯えて出てこないとか―――
「それは―――」
第二王子殿下が何か言いかけたその時、茂みから一斉に小さな動物達が飛び出し私達を追い抜いて走っていく。まるで何かから逃げるかのように。
「皆!森の入り口に走りましょう!!」
私が慌てて皆に声を掛け、マリアとエリーゼの腕を掴んで走り出す。それに合わせ、第二王子殿下達も私達の背後を守るように走る。
「い、一体何が起こりましたの!?」
「わからない.....わからないけど先生達の所まで逃げないと!!」
マリアもエリーゼも理由がわからずただひたすら走るだけ。
小さな動物達が本能的に恐れて逃げ出す何かが居るのだ。この森の中に。
そしてそれが此方に向かって来ているのだと言うことも。
確か水魔法には防御に特化した魔法もあった。万が一はそれを皆に掛けて.....
ルナは走りながらも冷静に考える。聖女時代には沢山の魔獣達とも闘った事もあったのだ。使い潰され、結局最終的には死んでしまったけれど。
それでもここに居る誰よりも経験値があるのは間違いがないだろう。私と友人になってくれたマリアとエリーゼは絶対に守りたい。
......あとついでに第二王子殿下達にも怪我はさせられない.....怪我なんてさせたら後から王家から何を言われるかわかったものじゃないわ!!
ふと、他のクラスメイトや、クラスの人達はどうしているのだろうか?もし私達と同じ様に異変を感じたなら先に先生達に連絡している可能性もあるわよね。
それは恐らく難しいとは思いながらも期待せずにはいられなかった。
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