第31話 羨ましいなら代わって欲しい

野外学習のグループ分けをした後から、事ある毎に第二王子殿下率いる側近候補達は私達に積極的に接触してくるようになった。そんな私達を見てAクラス以外のクラスの子女は羨ましそうな、悔しそうな顔を向けているのに直ぐに気がつく。いや、むしろ気がつかない方が可笑しい。


Aクラスのクラスメイトの令嬢達は私達がそれとなく穏便にお断りをしようとしていた事を間近で見ていたので普段通りに接してくれているのが有り難かった。


もう本当に羨ましかったら代わるわよ、本気で!


此方としては大好きな友人と穏やかな学園生活を希望しているのに真っ向から邪魔された気分なのに。


......まぁ本人には勿論言えないけど.....



「本当に鬱陶しいですわ」


マリア、正直すぎ.....気持ちはわかるけど.....


「......聞かれたら不味いですわ。いくら本当の事でもここでは口に出さない方が良いと思いますわ」


エリーゼもマリアに続いて意外と容赦がないんだよね


「それもそうですわね」

「野外学習が終わるまでですし、私達が大人になって我慢しませんと」


もし私が二人にこんな事言われたら確実に死にそう。ピンポイントで抉って来てるわ......


「そうね、どうせ明日には野外学習が行われるのだしそれまでですものね。漸くまた三人でゆっくり出来ますわ」


そう、何だかんだで野外学習は明日なのだ。あれから魔法学の授業では野外学習の為にグループに別れ、各自どのような魔法を使えるか、剣等の武器は使えるか等の打ち合わせが行われていた。野外授業では魔獣との戦闘も予想されるのでグループの仲間がどれぐらい動けるのかを把握しておく事は凄く重要なんだとか。


勿論、実際に野外学習を行っている最中に打ち合わせしていた通りに各々が動けるかはわからないが、事前にある程度知っているのと知らないのとでは行動パターンが限られてしまうそうだ。より多くの手段を講じておくのは魔獣対策には特に有効なんだとか。


それを生徒に教える為の実地訓練なんだろうなぁと思う。


私も聖女だった頃はよく魔獣退治に同行していたけどそれは殆どが騎士に護られての上だった。きっと彼らもこんな風に学園生の時に訓練したんだろうなぁと思うと懐かしい想いが溢れてくる。


「そっか、明日いよいよ野外学習なんだよね。何事もなく無事に終わってくれると良いよね」

「.....そうですわね。毎年少なからず怪我人が出てるそうですものね」

「第二王子殿下含め、私達も誰一人怪我人が出ないように慎重に頑張りましょう」


私とマリアとエリーゼは笑顔で頷き合う。



そして野外学習の当日になった。





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