第20話 王立学園
王都にやって来た翌日、お兄様と私は王立学園へと向かった。勿論カリトも一緒だ。
『なんで俺まで一緒に行かなきゃいけないんだ?』
カリトは不満気に見上げてくる。部屋で気持ち良さげに寝ていたのを連れて来られたから機嫌が悪いのだろう。
『だって、学園の中は広いってお兄様が行ってたからいざカリトが学園に来た時に迷子になったら困るでしょ?』
お兄様にわからないように念話で会話をする。
『俺は対象物の魔力を感知して移動出来るからお前を見失うことはないぞ?』
『あら、そうなの?』
『......そうだ......もしかして今まで気がついてなかったのか......』
カリトが呆れた様子で私を見ると思わず視線を外してしまう。
うん。全く気がついてなかったわー.....。
「ほらルナ、あれが王立学園だよ」
こっそりと内緒話をしているとお兄様が指差した先を馬車の窓から覗き込むと、まるでお城みたいな大きな建物があった。
「え、あれが王立学園なんですか?」
「そうだよ。大きくてビックリするだろう?」
ビックリなんてものではありませんわ、お兄様......。
「迷子になるの必須では?」
「慣れれば大丈夫だけど.....毎年新入生は迷子になる人が多数いてね、至るところに警備を兼ねて騎士を配置してるんだよ。実際僕も数ヵ月は移動教室の度に迷ってたよ」
ハハハと笑うお兄様に笑い事ではないのでは?と思ってしまう。
「ある程度のルートを覚えてしまえば大丈夫だよ。さ、着いたようだ」
いつの間にか馬車が停まっていたようで、御者が馬車の扉を開けてくれる。お兄様が先に降り、エスコートされて馬車から降りると目の前に馬車の窓から中から見たよりも更に大きく見える学園があった。入り口の門から建物の出入口までには小振りながらもシンメトリーの庭園が広がり、色取り取りの花が咲いている。ベンチもあり、普段は学生達の憩いの場所にもなっているのだろう。
本当に凄いわね。これだけの施設を管理している事だけでも我が国は凄いと思うわ。
そんな学園に私ももうすぐ通えるのが凄く楽しみで仕方がない。お兄様と一緒に通えるのが一年間しかなくて寂しいと思ってたけど、これなら残りの五年間も楽しめるかも知れないわね。
出来れば女の子の友人が出来れば嬉しいけど。
前世達では同性の友人を持つことは一度もなかったから......。
「じゃあどこか見たい場所はある?ルナ」
「お兄様の教室が見たいです!」
見学したい場所を聞かれ間髪入れずに即答した私にお兄様は苦笑する。
「ルナが見たいなら構わないけど、そんなところを見たいのかい?ただの教室だよ」
「はい!お兄様が毎日勉強を頑張ってる空間が見たいのです!!」
って私これだと変態みたいに聞こえるかしら?自分の言動に急に不安になりお兄様の顔をチラッと伺うと、お兄様は両手で顔を覆って上を向いていた。
「お、お兄様?」
「可愛すぎる......あ、いや何でもないよ。じゃあルナね希望通り僕の教室に案内するよ」
そう言ってお兄様は私の手を取りゆっくりと歩きだした。
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