第18話 十歳になりました

季節が流れるのは早く、あっという間に五年の月日が流れた。魔力測定を迎えた後は、私の結果が特筆してずば抜けた才能ではなく公爵令嬢として普通の結果だとお父様やお母様が社交界で密かに触れ回ったお陰で、釣書が無くなった訳ではないが特別増えた訳ではないので御の字と言えるだろう。心配していた王家からの婚約の打診もお父様が断ってくれている。実は我が国には王命で婚約を強制する事は出来ないように定められている。過去に何代にも渡って強引に王命で婚約を取り決めたにも関わらず、身勝手な理由で王子や王女から婚約を破棄された子息令嬢が相次いだからだ。

なので王家から婚約を打診されても断られればそれまでなのだ。無理に婚約を結ぶことは出来ない。ただ本人達が望めば問題はない。


王家には現在お兄様と同じ歳の王太子と私と同じ歳の第二王子と、ひとつ下の第三王子がいる。今年から私も第二王子も学園に通う為、ここで何とか交流を持とうと接触しようとしている事をお父様やお母様から聞いていが......。


「王子妃を望む高位貴族家の令嬢が沢山いるのだから、王子妃を希望していない令嬢に付きまとうような行動はやめて欲しいわよね......せっかくお兄様と一緒に学園に通える貴重な一年なのに......!」

「相変わらずルナ嬢は正直だね。私の前では構わないけれど、もう少しオブラートに包む話し方を学んだ方が良いかも知れないね」

「レイス先生」


実は五年前の魔力測定以降、月に数回レイス様から水魔法を使った治癒法を習っている。水魔法はお母様が得意としている魔法なのだが、実はお母様は攻撃魔法に特化した水魔法が得意で治癒系は苦手なのだそうで。


それで水魔法の治癒系魔法が得意なレイス様にお父様から話が行き習うことになったのだが、優しげな見た目に反してレイス様は魔法に関してはスパルタだった。


ちなみに聖女時代に使っていた治癒は聖属性からなる治癒魔法なので、水魔法の治癒とはまた発動方法が異なるので習わないと私も使えなかったのよね。


でも魔法以外の事に関する勉強はレイス様は博識で色んな私の知らない事を教えてくれて、私はレイス様との勉強が毎回楽しみになっていた。


「いよいよ来月から学園だね。来週には王都に発つんだろう?久しぶりにアルス君に会えるのが楽しみだね」

「はい.....でもその、レイス先生との勉強会が終わってしまうのが寂しいです」


レイス様の側は何故だか凄く居心地が良くて、ずっと側に居たくなってしまう。お父様と同じ歳だからお父様と一緒に居るみたいに安心感があるのかな?でもそれとは少し違う気もする。


「ふふ、嬉しい事を言ってくれるね......じゃあこうしようか。学園の一学期の最終試験で上位二十位までに入れたら、ご褒美に長期休暇で帰ってくるルナ嬢の言う事をひとつ聞いてあげるよ」

「本当ですか!?」

「勿論。私が出来る範囲ならね」

「約束ですからね!私、頑張ります!!」


ご褒美に張り切る私を優しい眼差しで見つめるレイス様に、まるで小さな子供のような態度を見せてしまった事に恥ずかしさから頬が赤くなってしまう私だった。








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