第17話 魔力測定

結論から言うと魔力測定は無事に終了した。


正直無事に終了するまではドキドキだったけどカリトとの計画通りに事は運んだのだった。



今日は朝から公爵邸では教会の人を出迎えるために忙しそうにしてたので、私はお兄様と一緒に図書室で大人しく読書をしていた。


勿論、朝一番にカリトにも確認して貰い、魔力は普通レベルまで封印済みだ。属性もステータスに隠匿をかけて水属性と風属性の二つしか読み取れないようにしてある。当然加護系やスキル関係に関してもだ。お兄様も二属性持ちなので、これで特段目立つことはないだろう。


「ルナ、そんなに心配しなくても魔力測定は凄く簡単だから大丈夫だよ」


本を読みながらもソワソワしているのを隠せていないルナにアルスは苦笑する。


「そうなのですか?」

「うん。丸い水晶玉の形をした魔道具に手を乗せるだけだよ」

「え?それだけでわかるんですか?」


そうだったろうか?昔聖女になった際はもっと......


「うん。昔より魔道具の性能が良くなったから、それだけで魔力量と属性がわかるようになったそうだよ」

「へぇ......便利ですね......」


たとえ性能が良くなってたとしても体内の魔力自体を封印してないものとして偽装しているから反応する事はないと思うけど......大丈夫よね?


コンコンと扉を叩く音がしてお兄様が返事を返すとエルマが顔を出した。


「アルス様、ルナ様、教会の方がお見えになられましたので旦那様がサロンへお越し下さいとの事です」

「わかりました。さ、ルナ行こうか」

「......はいっ!」


いよいよ私の運命の第一歩よね!ここで上手く行けば取り敢えず学園に行くまでは何の問題もなくただの公爵令嬢として生きていける筈よ!頑張れ私!!




「はい、測定が終わりましたよ」


お兄様が言った通り、測定はあっという間に終わった。本当に水晶玉型の魔道具に手を乗せるだけ。

手を乗せた瞬間、光が部屋を明るく照らし、その光は徐々に消えていく。


「それでルナの魔力量と属性はどうなんだい?レイス」


サロンに入って教会の方に挨拶をした時のお父様の口調が妙に親しげな事に不思議そうにすると、実はお父様と学園で同級生だったことが判明した。


レイス・スターレン侯爵子息。白に近い金髪にブルーサファイアの瞳の美青年で独身。スターレン侯爵家の次男で治癒魔法が使える事から、学園卒業後は教会に所属しているそうだ。今回の私の魔力測定もお父様がレイス様に直々にお願いしたのだとか。


「そうだね、魔力量はアルス君と同等ぐらいあるね。心持ちルナ嬢の方が多いぐらい。まぁ公爵家の子供なら妥当な魔力量だから特段騒がれる心配はないと思うよ。で、属性は水と風。アルス君が風よりの水に対してルナ嬢は水よりの風だから、兄妹で凄くバランスが良いね」

「そうか......それは良かったよ」


お父様とお母様は安堵した表情を見せる。


「変に魔力量が高くて属性が多いと騒がれるし、王家が出張ってくる可能性が出てくるからねぇ.....ルナ嬢可愛いし綺麗だし、将来が楽しみだね」

「......やらんぞ?......いや、むしろ虫除けにお前と婚約した方が......」


ちょっとお父様ー!?


「私には幼女趣味はないんだけどね.....」

「冗談だ」

「ルナ嬢が成人しても一人だったら考えても良いかな」

「私は冗談だと言った」


二人のやり取りをお母様は楽しそうに笑っている。もしかして学生時代もこんな感じだったのかもしれない。


「じゃあまぁ、国王にはそんな感じで伝えて大丈夫かな?」

「ああ頼むよ。皆が期待していたような結果でなくて申し訳ありません、とでも伝言を頼むよ」

「盛大な嫌味だな」

「そもそもが公爵家の娘だからと期待し過ぎなんだ」

「まぁな」


お父様達の会話から推測するに、やっぱり私の魔力量や属性が多かった場合王家が取り込もうと画策してたっぽい......本当に偽装が上手く行って良かったわ......


「良かったね、ルナ」

「はい。お兄様が言った通り簡単な測定でしたね!」


そんな事を話していると、お父様達の話し合いが終わったのかいつの間にか持って来ていた魔道具を片付け立ち上がっていた。


「そろそろ失礼するよ」

「レイス今日は助かったよ」

「いや、お前達の子供を測定出来るなんて光栄だよ。ルナ嬢」

「はい」


レイス様はその場にしゃがみ、私と視線を合わせてくれる。細やかな気遣いの出来る男性......!


「ルナ嬢は貴族令嬢にしてはアルス君と同じように魔力量が多く、多い魔力量は魔法を使用する際の制御め難しくなる。中級魔法や高位魔法は学園に通いだしてからになるだろうがそれまでは基礎をしっかり学ぶようにね」

「はい、わかりました!」

「良い子だね」


そう言ってフッと見せたレイス様の優しそうな微笑みが、私の心の中に小さな小さな灯りを灯したのを、私はこの時には気が付かなかった。











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