第15話 しばしのお別れ

それから瞬く間に一週間は過ぎた。初日にお母様からのやんわりとした苦言に彼らも考える事があったのだろう。あれから特に魔力測定の話も、婚約者候補の話も表向きは一切出る事はなく、普通の友人のように近くの池に釣りをしに行ったり、ピクニックをしたりして休暇を楽しんだ。


そう、私も楽しかったのだ。


これだけ長い期間、同じ年頃の.....と言ってもお兄様と同じ歳だから私とはかなり違うけど、子供同士で遊ぶことがなかったから純粋に楽しくて、彼らが帰る日にはそれなりに寂しさを感じていたのは仕方がない事だと思うの。


「じゃあアルス、また学園で」

「課題忘れんなよ~」

「アルス、一週間楽しかったよ!また学園で会おうね」

「うん。君達も領地まで気を付けて」


彼らの領地まではおよそ1日ぐらい掛かる。社交界シーズンになれば一家で王都の屋敷に滞在するが基本的には領地にいる貴族家が多いそうだ。


「ルナ嬢も元気でね。一週間楽しかったよ」

「またアルスと一緒に遊ぼうな!」

「今度は僕達の領地にもアルスと一緒に遊びに来てね」

「はい、お元気で。私も楽しかったです!」


次に会えるのが何時になるかはわからないが、こんな風に過ごせるならまた会いたいな、とは思う。


意外と私って単純なんだな。でもせっかく普通の令嬢に生まれ変わったんだから今までの生で出来なかった事はやりたいよね。


こうして無事に彼らがそれぞれの領地へ帰っていき、家族だけの穏やかな日々が過ぎていき、いよいよ私の魔力測定の日がやってきた。


魔力測定には領地にある教会から派遣される鑑定人が魔道具を使って調べるそうだ。今回もマルシーネ家がお世話になっている教会の人が来てくれるそうで、何でもお父様達と懇意にしているお家の方との事。実は知り合いに鑑定して貰った方が測定結果に対して優遇して貰いやすいからだそう。勿論、良い意味での優遇で、例えば思っていた以上に良い結果が出た場合や逆に悪い結果だった場合、ある程度はその家の意向に組んだ範囲での公表にして貰えるそうで......。そうでないと五歳でその子供の魔法の才能の当たり外れが社交界で囁かれ、どれだけ努力してもその子供が認めて貰えないなどの弊害が過去にあったそうだ。

なので必ず結果の公表に関してはその家の意向にそった情報しか公表しなくても良いそうで。


まぁこれは私からしたら嬉しい事だし、そもそも本当の能力は隠すつもりだしね。

今までこっそりやってきた魔力操作の訓練で魔力を隠す事も出来るようになったし、属性も家族と同じものしか使えないように見せるつもりだ。


ここを無事に乗り切れば、取り敢えずは何とかなる筈!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る