第6話 魔力

お兄様の誕生日パーティーから一週間。いつもと変わらず午前中はお母様からのマナー教育等々をこなし、午後からはお兄様に遊んで貰ったり、本を読んだりとそれなり充実した毎日を過ごしている。

そんな私に今一番気になっている事がある。


それは自分の魔力。


私の魔力は聖女の魔力を持って転生した魔王の魔力を更に持って産まれてきた。なので普通の貴族ではあり得ない程の魔力量の筈だ。


ちなみに聖女の時代は聖女が使える聖魔法以外に闇魔法以外の全ての属性魔法を使える事が出来た。


それに魔王時代の闇魔法までをも使えるようになっている。


聖女の魔力と魔王の魔力は本来なら相反するものであるにも関わらず、だ。


......流石にちょっとチート過ぎない?


この国で生活する全ての国民は五歳になると教会で魔力測定をし、魔力の有る者はどの属性の魔法を扱えるのかを調べ国に報告される事になっている。


私がこのまま何の対策も取らずに魔力測定なんかしたら待ったなしに監禁コースまっしぐらだ。さすがにそれは避けなければならない。


「......そもそも今現在どれぐらいの魔法が使えるんだろう?」


魔力が自分の中にあるのは把握出来ているし、前々世・前世からその魔力をある程度は操る事も出来ると思う......


「思うけど実際この身体で使った事がないもんね」


うーん。


「あ」


使った事がなければ使ってみれば良いんだよね!良いことを思い付いたとでも言うようにルナは座っていた椅子から立ち上がり部屋の中央へと移動する。


「念のために魔力をお母様達に感知されないように結界を張った方が良いよね?......や、でも逆に結界みたいな大きな魔力を使うと探知されちゃうかな......」


しばらく悩み、ルナは考えるのをやめた。


「ま、小さい魔法なら大丈夫でしょ」


そうしてルナは瞳をゆっくりと閉じながら両方の手のひらを身体の前へと持っていき重ね合わせる。深呼吸をしながら体内にある魔力に意識を向ければ、身体の奥底からゆっくりと、それは全身へと巡っていく。


......うん、やっぱり想像通りの魔力量ね.....この子供の身体でもある程度は制御は出来るみたいね......


「ウォーター」


ルナの小さな手のひらに水魔法により水が現れる。


「ファイヤー」


今度はその水を火魔法で蒸発させると、ルナは満面の笑みを浮かべる。


「よしよし。水魔法と火魔法は問題なく使えるみたいで良かったわ...後は風と土と光と聖と闇魔法だけど...流石に部屋の中では出来ないわよね」


聖女の使う聖魔法は怪我を治すのが一番手っ取り早いが何分三歳のルナの部屋に怪我をするような危険物は置かれていないので、試しに指先を切って治す等も出来ないのだ。


「誰かに試す訳にもいかないし......まぁ仕方ないか」


それぞれの属性の魔力は身体の中に感じるので水や火のように使う事には問題なさそうだ。

後は二年後に行われる魔力測定でどれだけ偽装出来るかが今後の課題になるだろう。マルシーネ家は代々風と水の属性を多く輩出してきている。現にお父様は風属性の魔力を、お母様は水属性の持ち主であり、何とお兄様はその二人の属性を受け継いで二属性の魔力持だ。なので私もその辺りを目指せば特段目立つ事はないだろう。


目指すは死ぬまでのんびり生活。これはそれに向けた第一歩なのだ。


「頑張らないと!」










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