第4話 お兄様のお友達

お兄様に手を引かれて連れていかれたのは庭園の薔薇の花の側にあるテーブル。そこにはお兄様と同じぐらいの年齢の三人の男の子達がいた。


......あの人達がお兄様のお友達なのかしら?


「皆、今日はありがとう」

お兄様が近づいて来てる事に気が付いていたのだろう。椅子から立ち上がり近寄ってくる。


「アルス、誕生日おめでとう」

「おめでとう。ようやく僕たちに追い付いたね」

「おめでとう~!」


口々にお祝いの言葉を紡がれてお兄様も嬉しそうだ。砕けた話し方をするだけ仲が良いのだろ。同年代の同姓の友達がいない私からみれば少し羨ましいな。


「なぁアルス、もしかしてその子がお前の妹なのか?」

赤毛の子が私をじっと見ながら聞いてくる。

「そうだよ。僕の可愛い妹のルナだよ」

「はじめまして。ルナ・マルシーネです」

三歳児らしさを忘れずに、けれども習い始めたマナーもしっかりと実践するのを忘れない。

「流石アルスの妹だけあってしっかりしてるんだな。妹にも見習わせたいね」

三人のうちの金髪の少年が感心しながら誉めてくれる。

「そうか?三歳ならこれぐらい言えるだろう?ただの挨拶なんだし」

赤髪の少年、お前はダメだ。

「僕も凄いと思うな。僕なんて五歳ぐらいまで挨拶すらマトモに出来なかったよ」

「お前のは単なる人見知りだろうが」

茶髪の少年はどうやら控え目な性格らしい...それにしても流石お兄様の友人と言って良いのか...美形揃いだなぁ。もしこの世界が乙女ゲームの世界だったら確実に攻略対象だったに違いない...当然お兄様も含めて。

「ルナ、紹介するね。彼らが僕が1番親しくしてる友人だよ」


そう言って紹介された彼ら。


金髪にペリドットの瞳の少年が何と第1公爵ランドール家嫡男ギルバート・ランドール


赤髪にルビー色の瞳の少年はレッドベリ侯爵家嫡男セリオン・レッドベリ


茶髪にエメラルドの瞳の少年が第2公爵キーフェル家次男アレックス・キーフェル


三人共、王家主催のパーティーで両親達との挨拶回りがきっかけで仲良くなったと教えて貰った。王家主催のパーティーに行きたいとは特に思わないが、お兄様のように友人が作れる機会があるのは少しだけ羨ましい。


「......わたしもおともだちがほしいなぁ......」

「なんだ、お前友達がいないのか?」


悔しいが事実なので素直に頷くとお兄様が慌ててフォローに入ってくれた。

「ルナは殆ど屋敷から出たことがないから、そんな機会もなかったんだよ」

「ふーん?えらい過保護なんだな、お前のとこ」

「あ、じゃあ今日は丁度良いんじゃないかな?ルナ嬢と同じぐらいの女の子も少ないけど参加してるみたいだしね」

「そうだよ~」

ギルバートとアレックスが名案だと言うように私の顔を覗きこみニッコリと笑みを浮かべる。


......確かに何人かはいたけど......今日参加してるのってお兄様狙いの子もいそうなんだけどなぁ......ちょっと複雑かも


「友達なんて無理して作るもんじゃないぞ。話して気が合えば自然と友達になれるだろ」


セリオンが至極当然だと言わんばかりに言い切れば他の二人もお兄様もそうだね、と頷く。

「ルナもこれからはお母様とお茶会に参加することもあるだろうし、友達なんてすぐに出来るよ。こんなにもルナは可愛いんだからね」

「......おにいさま」


何だろう......お兄様が段々と駄目な方向に育ってる気がするんだけど......


「それに僕たちももうルナ嬢のお友達だよ」

「ルナで良いだろ?」

「僕、妹が欲しかったんだよ~」

「ギルバート、セリオン、アレックス......ルナは僕の妹なんだからね!」

私の頭をなでて来るアレックス様の手を叩き落とすお兄様に三人は苦笑とも言えない生暖かい残念そうな視線を向けるのだった。


こうしてお兄様のおかげで(?)、今世で初めてのお友達が私にも出来ました。

でもやっぱり女の子の友達も欲しいなぁとしみじみ思うのだった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る