第3話 お兄様の誕生日パーティー

本日の主役であるお兄様にエスコートされパーティー会場である庭園へと歩いていくと、既に沢山の人が集まっていた。今回はまだお兄様は成人していないので、ガーデンパーティーと称してあくまでも普段からお付き合いのある極少数の方々だけが招待されていた。それでも貴族社会は横への繋がりが広く、極少数とはいえそれなりの人数にはなる。ちなみに私はこのパーティーが実は初めてのお披露目となる。

私とお兄様に気が付いたお母様とお父様が手招きをし、私達は二人の元へとゆっくり歩いていく。それに気が付いたのか来賓の方々がお喋りを止め、私達へと視線を向けたのが嫌と言うほどわかった。


......こういうのって何度経験しても慣れないわよね~......


まさかまだ三歳の娘が内心そんな感想を抱いてるとは思いもしない両親・兄はその顔に益々笑みを浮かべて挨拶をすれば、あっという間に人垣が出来た。兄はすでに何度かお母様に連れられてお茶会やらパーティーに参加しているので顔見知りの人もいるようで、どちらかと言えば今日来た貴族達の興味はどうやら私らしかった。

そりゃそうだよね。これでも公爵令嬢である。血筋だけは良いのだから政略結婚の相手としては申し分ないだろう。自分の子供に最高の相手を用意してやりたいのが親心だし、公爵家と婚姻で繋がれれば自分の家の格も上がる(実際上がる訳ではないが)ので一石二鳥と言うものだろう。


だがここで忘れてはいけない。


お父様とお母様は教育には厳しいが基本的に子供には甘いのだ。我が家が公爵家と言うこともあって、政略結婚を子供には望んでいないのだ。勿論お父様とお母様が貴族には珍しく大恋愛結婚だったから余計にだ。異に添わない相手との結婚はしなくても良いと常日頃私達に言い聞かせる程に。


なのでご遠慮したい王家との婚約話も私が産まれた時から拒否してるそう。ちょうど年齢が釣り合いそうな王子がいるからって産まれたばかりの赤ん坊に婚約話持ち掛けるってどうなのよ?本人に一切拒否権ないの?貴族はそう言うものだって知ってるけど理解したくない。本当にお父様達の娘で良かったわ......

そもそも今世はのんびり生きるのを目標にしてるので王家との婚姻は断固拒否したい。


「......ナ、ルナ。どうかした?」

考え事に集中して呼ばれていた事に気が付かなかったようでお兄様が私の目の前で手を振っていた。

「なんでもないですよ。おにいさま」

「そう?ならルナさえ良かったら僕の友人を紹介したいんだけど良いかい?」

お兄様のお友達!

「はい!」

お兄様のお友達どころか、よく考えたら家族・親族以外の子供に会うこと自体が初めての事だ。

.....きっとお兄様のお友達なら良い子達なんだろうなぁ......ふふふっ、楽しみ!







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