第2話 三歳になりました
月日が立つのは早いもので私も三歳になりました。
第三公爵家に産まれたと言っても両親・祖父母共に穏やかな人柄な為、基本的な礼儀作法やマナー以外は伸びやかに育てられてます。
けれど今日の我が家は五歳年上のお兄様の誕生日パーティーで使用人達は朝から大忙しで、私は邪魔にならないように部屋で侍女と大人しく待機中。
「お嬢様、そろそろご準備させて頂きますね」
「ありがとうー」
私の専属侍女のエルマは男爵家の三女で現在十八才だ。元々はお母様の侍女の1人だったが私が生まれた時に私付きの侍女になったそうだ。
茶色の髪の毛に濃い茶色の瞳のエルマは可愛く優しく頭の回転も早く、私も大好きだったりする。
「今日のドレスはどうしますか?」
エルマはいつも私の意見を聞いてくれるので嬉しい。どうせ着るなら自分の好みの服を着たいのはどの年齢の女性でも当然の権利だろう。まぁ私はまだ三歳なのでお父様やお母様好みの服を着させられる場合が殆どだけど。
「う~んとね、あのみずいろのがいいな!」
「お嬢様が1番お好きなドレスですね」
「うん!」
基本的にシンプルな物の方が好きなルナのドレスは流行の型は押さえつつ、極力いらない部分を排除した水色のドレスはルナの銀色の髪とも相まってルナを美少女に仕立て上げていた。綺麗に梳かれた髪はサイドを編み込みドレスと同色のリボンで結ばれた。
コンコンと扉をノックする音と共に、兄のアルスが扉からひょっこりと顔を覗かせた。
「ルナ、準備は出来たかい?」
「おにいさま」
扉を閉めて近づいて来る兄に、ルナは笑顔で迎える。
「アルス様、ちょうど今準備が終わったところです」
エルマがそう答えるとアルスはゆっくりとルナの方へと歩いて来る。その動作は子供らしさを感じさせない落ち着いた所作だ。今日で八歳を迎えるがまだまだ子供に変わりのない年齢だが次期公爵家当主として教育されているからか、至って子供らしくない子供であった。
「ふふふっ、僕の妹は今日も可愛らしいね」
「おにーさまもすてきですわ!」
ルナの誉め言葉にアルスは嬉しそうな笑みを浮かべると、そっとルナに手を差し出す。どうやらエスコートしてくれるようだ。そんな些細な気遣いがルナには嬉しく思う。
「じゃあ一緒に行こうか」
「はい」
いい子だよねー...本当にお兄様はいい子なんだよね~...とルナは心の中でしみじみと思う。
兄であるアルスは顔立ちはどちらかと言えばお父様似の金髪碧眼。対してルナは母親似の銀髪で瞳は夜空をはめ込んだかのような深い青で、まるで両親のミニチュア版のように対照的な容姿をしている。
今でも年齢の近いご令嬢からは熱い視線を多々浴びているアルスだが、このまま成長すれば今以上にご令嬢達の熾烈な争いは増えるだろう。
「おにいさまがんばってね」
「え?何が?」
思わず数年後の兄の心配をせずにはいられないルナだ。
「なんでもない」
「...そう?何だかよくわからないけど頑張るよ」
そして兄にエスコートされ部屋を出れば兄の護衛であるライナスが後ろに付き、そのまた後ろにエルマが同行し、パーティー会場である庭園へと向かうのだった。
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