第22話 視点:マリウス
興味本位だったんだ。
本当さ。クラウスが戻ってきた話は冒険者ギルドを通じて連絡があった。
クラウスはBランクの冒険者だし、ヤッたのはCランクの奴等だから問題ないとフツーなら思うけど、場所が場所なだけに、数日戻らないクラウスの生存は低い説が流れていた。
だからこそ、山脈からクラウスが戻ったと連絡を受けて安堵したよ。Bランク冒険者の数は少ないしね。
クラウスの泊まってる宿に伝言を残して復帰祝いの為に綺麗どころのいる店に足を向ける。
このお店は単価が高いせいか下手な低ランク冒険者は来ないし、ナイショ話も出来る。口の堅いオネエちゃん達はクラウスもお気に入りだ。
やってきたクラウスは五体満足で、傷跡も目に見える範囲にない。
聞けば一緒に街に来たお嬢さんに助けられたというじゃないか。
山脈に、10代の娘がいる異常性はなんともいえないけれど、傍に置いとく。
何よりの驚きは、ナイショ話を終えた後も綺麗どころを呼び寄せただけ。酌させているだけ。
あのクラウスが?
え、持ち帰らないの?あのクラウスが???
同じ冒険者の俺から見ても精悍な顔立ちで、背が高いうえにガタイがよく、カッコいいクラウスは街の素人娘から夜の蝶まで大人気なんだぞ。あまりにもモテすぎてクラウスだしな、ってなる俺たちだぞ?
見ろよ。綺麗どころのお姉さん達が、これ見よがしにしなだれかかってるじゃーん。太ももに手をおいてるじゃーん!
クラウスがこうなっているのに、少なからず影響を与えているだろうスズって子に俄然キョーミ沸くよね?
だから依頼について行ったのは必然だよ。
第一印象は華奢で色白のせいかどこか儚げ。
第二印象は規格外だ。
ほんと、こんな規格外だと思わなかったんだよ!!
テイマーだからわかるのさ。
魔獣より実は純粋な動物の方がティムは難しい。ブルーバードを使役している事にまず驚いた。
あっという間に薬草を採取したのも凄い。
けれど何より、角兎を仕留めた、あの魔法はナニ!?
細かく鋭い魔法が針のように角兎を襲っていた。
魔法を扱うものは、器用であれば武器に付与させ、そうでなければ多くはぶっ放すだけだ。
あんな細く鋭く細かい魔法操作なんか出来ない。しない。
角兎をサクサクと血抜きしている様子を僕は間抜けな顔で見ているしかない。
どういう事!?とクラウスを見てもこの場では話せないのか、めんどくさいのかわからないが、説明する気はないらしい。
ただただ混乱が増すばかりだ。
オマケに、見た目に対して容量が可笑しな鞄を持っているし、気軽に入れるか聞かれるし!
わかってるんだ。彼女に悪意はない。純粋に彼女にとってフツーに過ごしているだけ。
なんなら気遣いも持ってるんだ。
ただ、そう、ただ、規格外なだけで。
ゴブリンの討伐証明を革袋に詰めて、街に足を向ける。まだ半日しか経っていないなんて信じられないくらい濃い1日だ。
「あ、そういえばギルマスに話しておかないといけない事を思いだした」
「?報告終わったら先に宿に戻っておく方が良い?」
「あー、いや、スズが関係するから一緒に行こうぜ」
クラウスの言葉に僕もスズも首を傾げる。スズがした低ランク依頼をギルマスに報告する事なんてないよね?
採取の方法は規格外だけど、内容はごく普通の低ランク冒険者が行う依頼だし。
「あー、ソラの件が話題になっているみたいだ」
「ソラの?」
「ああ。とりあえずギルマスには報告しとかなきゃなんねえ」
そうなんだ、と小さく頷くスズに気が乗らないけどな、と大きな溜息を吐くクラウス。
ソラって誰のことだ?
「マリウス、昨日夜言ってたろ?山脈にワイバーンが出たって」
言ったね。ソイツが本当ならマジでヤバいもの。下手したらAランクの魔獣なんて災害級だよ?ギルドも慎重に情報収集に当たっているところだ。
「ソラってのは、スズのティムしたワイバーンの事だ。
で、なんなら俺とスズを山脈の麓まで運んだのもソラでな。
おそらくソレが目撃されたんだと思う」
「は?」
低層にはあまり近寄らないから驚かれたのかな?じゃないよ、スズ!
サンダーバードも反応ヤバかったしな、じゃないのクラウス!!
サンダーバードってなに!?初耳なんだけど!
君ら、なんなのいったい!?!?
僕はもう、驚きすぎて頭が痛いんだけど!!!
「大丈夫だマリウス、俺はもう驚きすぎてある程度流すようになったぞ」
すぐ慣れるさ、じゃないからクラウス。肩を叩かないでくれ・・・!!!
「大丈夫ですか?マリウス・・・頭が痛いなんて薬はありますか???」
スズ、優しいけど違う!!
心配は嬉しいけど原因はキミだし!
「(普段は面白おかしく、場を眺めることの多いマリウスだ。ただの好奇心、興味本位でスズが気になって首を突っ込んだんだろ。
藪蛇ってやつだよな。
思う存分、巻き込まれろ)」
ニヤリと笑うクラウスに僕は自ら巻き込まれに行った事を後悔する事になった。
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