第17話

「さあ、軽く街を案内がてら服屋や食材の店に連れて行こう」


冒険者ギルドを出て、振り返る。


中心部にある建物はほぼ石造りだが、3階建てなのは冒険者ギルドだけらしい。


右隣は武器屋、左隣は解体屋らしい。


「解体屋は基本ギルドに持ち込まれた素材を解体しているんだが、自分用で魔獣を狩ったが解体が出来ないやつはここに頼んでるな」


「解体できないのに狩るの?」


スズのきょとんとした顔にクラウスは苦笑する。


「解体は技術がいるからな。


今回みたいに解体した後、素材の買取に出すより丸のまま買取に出す方が解体費用を引かれるんで安くなっちまう。


だが、下手くそがやると、そもそも素材をダメにするからな。解体できない、或いはしない方が良い奴は多いぞ」


「へー」


山脈に住んでると、勿論誰もしてくれないので必然自分でせざるを得なかったスズはその環境あっての今なんだな、としみじみ思う。


「この道沿いには少し離れて商業ギルドがあるぞ。たまに商業ギルドの方が高く買取をする素材もある。


あとは冒険者への依頼には商人の護衛なんかも多いから意外と関係あるんだ」


「へー!ギルドは他にもあるの?」


「この街には冒険者ギルドと商人ギルド、農業ギルドがあるな。


他の国には暗殺者ギルドやテイマーギルドなんかもあるらしい」


「へえ、色々あるのねえ」


「さて、城壁に向かって歩いていくか。


服屋はいくつかあるんだが、とりあえず馴染みの店に連れていくぞ。ちなみに服の希望あるか?」


「うーん、動きやすければ良いかなあ。


背中空いているのも1着くらいあると良いかも」 


ヒラヒラしているのは苦手なの、と笑うスズに似合いそうなんだがな、とクラウスはスズを見下ろす。


華奢だから、いっそう女の子らしい格好が似合いそうだ、と続ければ、スズは照れたようにはにかむ。


どうにも褒められ慣れていないせいか擽ったい気持ちになるのだそうだ。


「ここが馴染みの服屋だ。《リズの服屋》って店だな。


店主は引退した冒険者なんだ。だから、冒険者向きの服も置いてある」


外開きの扉を開けば、チリンという鈴が鳴る。





「はぁい、いらっしゃ・・・クラウスじゃない。あんた死んだ説流れていたけど、無事だったのねぇ・・・」


2人を出迎えたのは金髪に菫色の瞳のグラマラスな美女で、クラウスの姿に目を丸くしながら口元に手を当てて、あらあら、まあまあと頭のてっぺんから足下まで眺める。


「なんで残念そうなんだオマエは」


「うふふ、気のせいよ。あら?そちらは??」


「スズっていう。俺の命の恩人だ。


スズ、この失礼な奴はリズっていう。元はCランクの冒険者だが、早々に引退して服屋を始めた奴だ」


「Cランク!凄いですねぇ」


「(スズの方がとんでもないんだが・・・)あー、リズ?スズの服を見繕ってくれ。


ひらひらしてない服が希望だそうだ。細々したモノも頼むわ」


「命の恩人っていうトコロを掘り下げたいところなんだけど・・・まあイイワ。


スズちゃん、そのド・シンプルな服しか持っていない感じなのね??ひと揃えって事よネ?


訳ありかしら?まあイイワ。さ!スズちゃん、お姉さんに任せときなさい~」


バチッと効果音が出そうなくらいのウインクを飛ばすリズに、スズは少したじたじになりながらお願いします、と軽く頭を下げた。




採寸後、ああでもない、こうでもないと服を宛がわれているスズを横目に、クラウスもトルソーに着せられている古着を眺める。


剣帯やベルトなんかの冒険者向けの小物や、髪留めやちょっとしたアクセサリーも置いてある。需要は前者の方が多いが、冒険者向きなモノだけでは作るのも売るのも楽しくないのだとリズは公言している。


「クラウス!!スズちゃんに服はイチから仕立てる??それとも古着も組み合わせる?


素材が良いから沢山作りたいっっ!」


「あー、仕立ては1着くらいで良い。肩甲骨のあたりの開いた服も欲しいな」


「残念だわ・・・でもこれが最初だものね!頑張るワ!


背中がぱっくり開いているので良いかしら?エロい感じの服も得意よ!スズちゃん華奢で可愛らしいから、ギャップね!!」


「あーまあソレでイイや」


イロイロ言い募るのも面倒くさいとクラウスは溜息を吐いた。









「冒険者向きの衣装ってシンプルすぎてイマイチなのが多いんだけど古着をリメイクしたのがいくつか似合うからソレを選んだわ。色は納得してないけど!


仕立てはちょっと時間をもらうわね。


デザインから任せてくれるって言うんだから張り切っちゃうわぁ!


下着や靴なんかも一揃い準備したからね!履き方や着方は教えたとおりだけど忘れちゃったらいつでもいらっしゃいね!」


着ていた服を脱いで、リズの選んだ古着を着る。


水色のシャツにフード付のローブを羽織り、黒いズボンを履いて編み上げのブーツを履く。


「(久しぶりにちゃんとした肌触りの服だわ)クラウス、似合う??」


「ああ。15歳だし、もうちょい可愛くても良いとおもうがな・・・コレつけとくか」


サイドに髪を纏めているスズに、似合うようにとクラウスが待ち時間に別で選んでおいた白い花飾りを髪に留める。


「あら、良いじゃない」


「いいの?クラウス・・・服もお金出してもらったわ」


「服を買うのを勧めたのは俺だしな!古着が多くてむしろちょっと申し訳ないが、多少買った所で懐は大して痛くないから気にするな」


「そうよ~。クラウスは腐ってもBランク!


無事生き残ったことだし、またドンドン稼ぐもの!


スズちゃんはクラウスのために今日買った服を着てオシャレを楽しむ切掛けにしたらいいのよ!」


ウインクをするリズに背を押される



「大切に着るね!おしゃれをするの、楽しみ!」


「贈り甲斐があるってモンだ!喜んでくれて嬉しいよ」


ニカッと白い歯を見せて笑うクラウスにスズも嬉しそうにはにかんだ。

















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