第11話

冒険者ギルドの1階に戻ったスズは、先に冒険者の登録を行うためカウンターで金髪の女性、アリスから説明を受ける事になった。


説明中は邪魔をしないよう、クラウスはギルドマスターと共に隅に寄り、今の山脈の状況等の情報を提供する。


「改めまして、ギルドの受付をしておりますアリスと申します。よろしくお願いしますね!


スズさんの冒険者の登録は1番下のEランクからのスタートになります。


ギルドに入って右手、今クラウスさんとギルドマスターのいらっしゃる付近に掲示板が見えますか???


あの掲示板に依頼書が張り出されていますのでそのランクに応じた依頼をこなしていくとランクも上がりますよ。ランクは難易度にも比例しています。達成したときの報酬も、難易度が高いほど、高くなりますが、まずはコツコツと堅実に依頼を達成して下さいね!!


更に、ギルドでは買い取りも行っています。依頼以外で手に入れた素材なんかは、このカウンターにお持ちいただけますと状態等に応じて買取りを行います」


にっこり愛想良く案内するアリスに、スズはうんうんと頷く。


こつこつと働くのは得意だ。自分の能力以上に冒険するのは苦手だしする事はない。


「ここまでで分からない事はないですか??」


「大丈夫です」


「では、冒険者の証明書にあたるギルドカードの発行をしましょう!この水晶に手を当てて下さい」


言われるがまま球体の水晶にスズが手を置くと、ほのかに光って、すぐに消えた。


「はい。これがギルドカードになります!ランクや、達成した依頼の情報なんかはここに自動で残ります。冒険者のギルドに国境はありませんから、何処の国に行っても身分を証明してくれます」


「すごい便利ですねえ」


「ええ。さ、スズさん!冒険者をしていくうちに疑問が出たらいつでもいらして下さいね!!女性の冒険者は少ないので大歓迎です!!」


「わかりました。どうぞよろしくお願いしますね」


ぺこっと礼をしたスズは振り返りクラウスに手を振る。


「クラウスさん、終わりましたー」


「よし、じゃあアリス、そのままスズの買取りを頼む」


「まあ、買取り!!ではどうぞこちらに!あら?ギルドマスターも同席されるんですか?」


「山脈の素材と聞いたんでな!!」


良い笑顔のギルドマスターも加わってカウンターに集まる。


「じゃあ出しますねえ」


ごそごそと斜めがけの鞄から素材を出していく。


「ロックバードの羽、尾羽、オーロラサーモンの鱗、サンダーバードの羽、レッドウルフの毛皮、一角兎の肉、コカトリスの肉、尾羽?の蛇


とりあえずこんな感じでどうでしょう?売れます???」


小首を傾げるスズだが周りは静まりかえっており、なに?とクラウス達を見上げる。


「想像以上だ。すげえ・・・」


子供のように目をキラキラとさせるギルドマスターが1つずつ手に取って素材の状態を確かめる。


「どの素材の状態も最上だ。全部!買取りで良いのか!」


「ええ。こんなので良ければ」


ぐいぐい近寄るギルドマスターにスズはうんうんと頷く。


「オーロラサーモンの鱗なんか商業ギルドが羨むな・・・」


「コカトリスもすげえな・・・」


「精算しないと精算!」


顎に手をやりコカトリスの肉をしげしげと見るクラウスにうきうきと精算の書き取りをするアリス。全体的に目を輝かせるギルドマスターと場は賑やかだ。


「オーロラサーモンの鱗か・・・・・・良い装飾品になるが、オーロラサーモン自体も絶品だし食いたいもんだが」


「塩漬けならありますよ?売ります??」


よいしょとオーロラサーモンの切身ではなく一匹まるごと塩漬けにしたものを取出す。


「「買います」」


「(目がガチだ・・・)」


前のめりに答えるギルドマスターとアリスにスズとクラウスは苦く笑った。



この国の貨幣は白金貨、金貨、銀貨、銅貨とある。紙幣はなく硬貨のみである。

白金貨1枚=金貨10枚=銀貨100枚=銅貨1000枚の計算だ。


スズにじゃらっとしたお金の入った布袋手渡され、安心の反面、少しばかり不安にもなる。


「大金・・・」


「ギルドで口座を開設されますか?お金をお預かりしたり引き出したりがどこのギルドでも可能になりますが」


「ぜひ、お願いします。口座はギルドカードと紐付くのでしょうか?」


「その通りです。ではギルドカードをお預かりしますね。どの程度手持ちに残されますか?」


「金貨1枚と銀貨を20枚、銅貨を20枚以外預けます」


「承知いたしました。少々お待ち下さいね」


カウンターで作業するアリスを見守っていると、素材についてギルドマスターと話し込んでいたクラウスがスズの傍まで近寄る。


「ギルマスにも聞いていたんだが、今夜の宿はこの近くにあるスズランの宿が良いんじゃないかと思うんだがどうだ?」


「私に街の宿はわかりませんから、せっかくなのでそちらにお邪魔します」


「じゃあ俺が2人分宿の部屋を取れるか聞いてくるから、アリスとのやり取りが終わったら掲示板でも見といてくれ」


「??クラウスさんはこの街が拠点なのに宿を取るんですか?」


「定住していないんだよ。まあ、ぼちぼち腰を据えてもいいんだが、決め手に欠けててな。だから街にいる間は基本宿だな。飯は外に食いに行く事ばかりだし、宿によっては夜は食堂や飲み屋を併設しているから勝手が良いんだ」


「そうなんですね・・・では、宿のほうよろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げれば、おう!とニカリと笑ってクラウスはギルドを後にした。


そう時間が掛からないうちに口座の開設も終わり、スズは勧められたとおり掲示板を端から端まで眺める。


「ツユクサの採取、マツクサの採取くらいなら期限は3日で各10本だし行けるかしら」


ぺりっと依頼書を剥がして受付に持って行く。それぞれ初級ポーション、初級毒消しの材料になる薬草で、山脈に向かう途中に群生地が幾つかあったはず、とスズは午前中の道程を思い浮かべていた。受理の印を押された依頼書を大切に折り畳み、懐に直す。


「お、採取依頼か」


「クラウスさん」


「宿は無事取れたぞ。明日早速行くのか?」


「そのつもりです。ついでに街もみたいな、とは思っているんですけど」


「勿論案内する。というかそれくらいさせて欲しい。マジで」


「ふふ、じゃあよろしくお願いします」


「よし来た。んじゃ、とりあえず飯行こう」


2人連れだってギルドを後にしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る