第48話 ファーストコンタクト

さて、俺はたった今授業をサボっている最中なわけだが、どこに行こうか。


普段なら屋上に行って昼寝をしたり、運動部のジムに行って筋トレしたりするのが日課だったのだが、俺にはとある事情があってある女のそばを離れることができない制約のもと生きている。



桜は前に100mと言っていたがあれはおそらく嘘だろうな。


体育の授業の時は男女別で授業をするわけだが、明らかにその時に100m以上離れていたからな。



しかしまあ、俺の位置は桜にはまる分かりなわけだし、下手に遠くまで行くことはできない。



今頃、俺がサボり始めたことは桜も薄々気づいただろうからな。



まあここは無難に屋上で昼寝でもしますか。






おや?珍しいな........



俺の歩いている廊下の先に一人の黒髪短髪の女の子を見かけた。



俺が思うのもなんだが、なんでこいつ、ここにいるんだ?


はは~ん.......


さてはこいつもサボりだな?



真面目そうな見た目をしているからそんな奴には見えないがな。


桜みたいな容姿でサイコパスみたいなやつもいるわけだし、人間見た目だけでは判断できないってことだな。



まあいいや、俺には関係ないし。


無視して早く屋上に行くか。



「やあやあ、そこの君!」



「.......あん?」



急に高いテンションで話しかけてきた....



「ちょっと道に迷ってしまってね。ちょっと教室まで案内してほしいな~...なんて思っちゃって(チラッ」



何言ってんだこいつ.....


イカれてんのか......?



「そんなわけあるかよ!それならアンタ、今までどうやって学校生活送ってきてんだよ!」


「私は今日、転入してきたばかりなんです!」



転入?今5月だぞ。


こんな時期に転入って......まあなくもないのか?


桜だってつい最近転入してきたばかりだしな。


あれはちょっと別の事情のある転入だけど。



「.....分かったよ。んで?どこの教室に行きたいんだ?」



「2年C組の教室に行きたいんです」



「2年?(年上か....)そうだな...そこの窓から校舎が2つ見えるだろ?」



「はい!」



「その右側の校舎が2年教室だから」



「ふむふむ...」



「んじゃ....」



「えっ!」



「なんだよ。まだ何かあんのか?」



その女の子は目を丸くして俺の裾をつまんだ。



「教室まで案内してくれないの....?」



俺はその手を冷たく振りほどいた。



「俺が行かなくても行けば分かるよ。というか俺はあっちの校舎言ったことないから詳しい教室の位置までは分からないんだよ。あとは自分で探してくれ....」



『あれ~、おかしいな~。大体の男の子は上目遣いで優しくお願いしたらいうこと聞いてくれるんだけどな....』



「ん?なんか今言ったか?」



「いやいや、何でもないよ」



........変な奴.....



まあいいか。



俺はその女の子に背を向け、階段を上り始めた。



階段を上りながら、俺はとある違和感に気づく。



なんだ?


俺の足音とは別の音が後ろからする。


誰かが後ろから来ているのか?



恐る恐る振り返って確認するとそこには......




「ちょっと....待ってよ~~~.....」




なぜか、さっきの女が後ろから息を切らしながらついてきていたのだった。

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