第44話 肉と骨を切らせて骨を断つ!!

「遅い!!」



俺の拳は無慈悲にもブラックソードに止められた。


白い刃は俺の中指の関節を捉え、そこを中心に右腕が左右に裂け始める。


噴水のように血液が空を舞う。


もはや痛みは感じない。



「これで終わ....ウッ...」



右腕から出血したそれはブラックソードの両目に当たり、視界を塞いだ。


そして、少女の動きが一瞬止まったところを俺は見逃さなかった。



「剣の形状が変われば、お前の方が早い!それは想定済みだ!そしてその刀の向かう方向は......真っ先に俺の攻撃を止めに来る!!それを見越して、この拳はあえてその刀に向けて突き出してやったのよ!!それさえ止めることができたら、もうお前に攻撃手段は無い!!」



無傷の左腕を折りたたみ、肘を顎に叩きつけた。


ブラックソードの体がグラつく。


手ごたえありだ!



「こ...の......」



ブラックソードは俺の腕に縦に突き刺さった刀を抜こうとする。



だが抜けない。抜かせない!!



なけなしの力を右腕に込めて少しでもそれを抜き取る時間を遅らせる。


その隙に、本命の一撃を!!



左手を手刀の形に変えた。


刀を引き抜くために前かがみに重心を落としている。


そのがら防具のつけていないガラ空きの左鎖骨めがけて....



「終わりだ!!志麻...」



――――バキィ......



鎖骨が砕ける音がした。



「ゴボッ......」



吐血し、叩きつけられるように地面に倒れる.....


コンクリートの地面が割れ、刀も床に落ちた。



決まった!!!


今度こそ.....俺の勝ちだ!!






「あ....に....き.........」




!!!!!.....



嘘だろ...まだ意識があるのか!?


これ以上はもう、俺は戦えないぞ.......




「う...で....怪我している....そんなに強く....するつもり....なか....た...止血....しないと.....あにきが.....しんで......」



バタッ.......



そこで志麻が事切れたのを感じた。


変身が解け、元の制服姿の志麻へと戻る。




志麻........



最初から最後まで俺のことを殺しに来てたと思っていたが.....




『これでも手加減してるんっすよ.....この程度なら兄貴なら避けられるっしょ....』


『兄貴....降参してください.......私は兄貴を殺したくない.....』


『安心してください兄貴....殺しはしないっす....』




『そんなに強く....するつもり....なか....た...』




戦闘中の志麻の言葉がフラッシュバックする。



俺は死にたくなくて、全力で、必死こいて戦っていたというのに....



志麻は、俺が大怪我をしないように....死なないように........



ずっと手加減して戦ってくれていたのか.....



最初から、俺の安全は保障されていたんだ。



それでも、もし次にもう一度戦うことになったら.....


想像したくもない....




その前に志麻のギアを回収して....




................




.........あれ......



視界がぼやける........


なんだこれ?.....


床が真っ赤だ....いつの間に.....こんな......



体に力が入らない.......


あともうちょっと.....なのに...........

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