第40話 魔法少女 ブラックソード①

『明人君!!決闘は中止!!近くに魔法少女がいるわ!』



「分かっているよ!目の前にいるからな!!」



『なんですって!?』



「志麻は魔法少女だったんだよ!くっそ....今まで気づかなかったぜ....」




「兄貴....兄貴が悪いんっすよ.....あんな女にうつつなんか抜かして......

私と一緒に最強のチームを目指すって約束したのに!!」



大剣の重さを感じない軽やかな足取りで走ってくる。



「うわああ!!」



容赦なく振り回されるその大剣を躱すのに精いっぱいだった。



「何やってんだピーチ!!早く魔法使えよ!!」



『今溜め始めたところなのよ!』



「なんだとっ!その前に俺の体が半分になっちまうぞ!!」



『なんて自分勝手なっ....さっき必要ないって言ってたじゃない!!』



「状況が変わったんだよ!!今は大ピンチだ!!」



『なんとか時間稼ぎしなさい!!』



「どれぐらいだよ!!」



『最低でも3分!!』




無理無理!!


対峙して分かる。


昨日のべジキャロットとは段違いの強さだ。



本当にこのままだとヤバイッ.....




「さっきから何ぶつぶつ言ってんっすか?こんな時に電話っすか!?無駄っすよ。助けは誰も来ないっす。この空間には私と兄貴しかいられないようにしたから。まあもっとも、助けが来たところで大した障害にはならないし、兄貴にそんなダチはいないっすけどね!」




剣が地面に振り下ろされるたびに土がえぐれ、砂埃が舞う。


大きめの砂埃がお互いの視界を塞いだところで、俺は走って校舎の中へ逃げ込んだ。




「勝負の最中に背中を向けるとは何事っすか!!」




......っ!!


背中越しに追ってくるのが分かる。



やはり速い。


元々身体能力が高かった志麻が魔法少女の力を手に入れたんだ。


隙を見て稼いだこの距離もあっさり詰められる。




「もう逃げられないっすよ兄貴!!」



だが、ここまで逃げきれれば十分だ。



「この中ならそんなデカい剣は使い物にならんぞ!!」



さあ、振ってみろ。


力いっぱい振った剣が天井や壁に当たって動きが鈍ったところで接近してやる!!



「その程度で、私が止まるとでも?」



柄が赤く発光する。



「ブレイズチャージ!!」




なんかマズイ!!


避けろ!!




天井に当たったそれは一切の抵抗を受けず、素早く重い一撃が放たれる。



縦向きに振り下ろされた刃の衝撃でふっ飛ばされた。


熱風が巻き起こり、その剣の触れた場所は溶けたバターの様にドロドロになっていた。



剣は赤く熱を帯びていている。


一体何℃あるんだよ.....


あれを持っているブラックソードはどうやら平気そうだった。



クソ!!魔法ってやつはなんて都合のいいものなんだ......




「兄貴....降参してください.......私は兄貴を殺したくない.....」



「嘘つけ!殺す気満々じゃねーか!!おい!!」

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