第38話 激昂する獅子

「その声は、桜か!」



『苦戦しそうなら私が強化魔法でバフかけてあげるわよ。そうすれば早く倒して一緒に帰ることができるでしょう?』



「..........」



『溜めに少し時間がかかるからもう少し時間稼ぎをして...』



「いや、いい。必要ない......」



『へ?どうしてよ。苦戦しているんでしょ。勝ちたくないの?』



「勝つさ。だが、魔法の力は使わない。志麻は....全力で俺に挑んできてくれている。そんなアイツの気持ちを、俺が借り物の力で汚すわけにはいかない!!


志麻が真っすぐ、一直線で向かってくるのなら....


俺も全力で応えねえとなあ!!!」



振りかざした手刀にハイキックを浴びせる。


バランスを崩した志麻に向けて今度は水平に回し蹴りを腰に打ち込んだ。



吹っ飛んだ志麻が地面に背をつける。



『ふーん....そう......じゃあ勝手にしなさい。その代わり、絶対に負けないでね』



「ああ、分っているよ....」



志麻は顔についた砂をぬぐいながらすぐに立ち上がった。



「追撃しないんっすね....前の兄貴なら、倒れた相手には容赦なく殴りつけていってたのに.....」



「そこまでする必要はねえだろ....それより、もう降参でいいのか?志麻の言う通り、これが本当の喧嘩なら今ので俺の勝ちだし....」



志麻の顔が赤くなる。


烈火のごとく震えあがり、目頭が上に吊り上がった。



「本当の....喧嘩??


兄貴はにとって....私とのタイマンは練習....お遊びということなんっすか??」




きた!!


これは確実にキレている!!


ここからが志麻の本領発揮と言ったところか....




「ああ、遊びだよ。そもそも俺が志麻に負けるはずがねえし....」



「私はっ!!こんなに真剣に兄貴のことを思っているのにっ!!」



志麻は右腕を頭の後ろにまで振り上げ腰を大きく捻る。



「そういうところだぞ志麻!」



その瞬間を見逃さず、それが打ち出される前にみぞおちに膝を突き刺した。



「がはっ...」



「お前は周りが見えなくなると、すぐ大技を出そうとして隙の多いアクションを取るんだよ。その癖は昔と変わってないようだな!!」



素早く首を脇で絞め腰を抱えて逆さまの態勢で持ち上げる。



志麻は見た目以上に頑丈な奴だ。


中途半端な攻撃は、逆に志麻の感情のバロメーターを動かしかねない。


仕留めるなら、一撃で戦闘不能にするべきだ!!



「くらいな!俺のブレーンバスターを!」



勢いよく後ろに倒れ、志麻の背中を強打させた。



流石の志麻もこれには耐えきれなかったようで、白目をむいて泡をふいていた。



このタイマンは....俺の勝ちだ!!

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