第33話 逆刃志麻
「やれ校内を統一するだの、一人の女に固執して復讐するだの。そんなことはとても小さいことだったと俺は気が付いてしまったんだ.....」
「何言ってるんすか...?冗談っすよね...?」
「......いや、冗談じゃない。マジだ。俺はもう、喧嘩はしない...」
「そんな...兄貴......どうしてそんなことを言うんですか....」
志麻は絶望した表情をして膝をついて俯いた。
俺と志麻は中学の頃からの付き合いだった。
年は一つ下で、俺が中2の頃、同じ中学へ転入してきた。
喧嘩っ早くて、しかも強い。
当時の俺の下っ端では手が付けられないと相談を受け、俺が出向いたのだ。
小柄な女の子だと思っていなかったから、初見は凄く驚いたのを今でも覚えている。
喧嘩の腕はというと、それはそれは強かった。
その体格からは考えられないほどの力とスピードとキレがあって、勝つには大変苦労をした。
お互い素手で戦ったが、志麻が剣道を習っているというのは後から聞いた話だった。
もし、彼女が最初から武器を持っていたとしたら結果はどうなっていたか分からない。
この俺が一目置くほどの人物なのである。
その決闘が終わってからというものの、俺は志麻にやたら懐かれるようになった。
自分のことを舎弟だというようになり、俺のことは兄貴と呼ぶようになった。
中学時代は志麻と一緒につるむことが多くなり、二人で他校との喧嘩に明け暮れてる毎日だった。
そして高校入学と共に中等部のヘッドの座は志麻に譲った。
俺が新しい高校のヘッドになると約束して。
「どうしてしまったんっすか兄貴!!昔の兄貴はそんなこと言う人じゃなかった!!おかしいっすよ!こんなのって.......」
志麻には悪いことをしたな....
今までの舎弟は、俺にビビって仕方なく付いてきたやつらばっかりだった。
だけどこいつだけは唯一俺のことを慕って付いてきたんだもんな....
でもよう.....
しょうがないじゃねえか.....
なんでなのかよく分からんけど、俺には魔法少女が付きまとっているんだもの...
数百人の魔法少女を倒さないと、背中が破れて死んじゃうんだもの.....
「悪い...とにかくもう、ライダーは解散したんだ....もう志麻は俺の舎弟じゃないんだよ。これからは志麻が自分のチームを引っ張ってよろしくやっててくれ。
もう、俺にかかわるな......」
「兄貴ぃ.......そんな......」
「ねえ、そのうるさい子何?明人君の知り合い?」
そういえばこれも忘れていた。
俺は今、一人じゃなかったのだった....
「は?何っすかお前、いつからいたんっすか?」
「最初っからいたわよ!!なによ、失礼なガキね!私が見えないってなら、チビのあんたは私からしたらもっと見えないわよ!」
おい、やめろ!志麻を挑発するな!!
そいつは俺以上に戦闘狂なやつなんだ!
事態をややこしくするんじゃない!!
「ああっ!今私のことチビって言ったな!!許せねえ!!私の身長を馬鹿にするやつは女だろうが容赦しねえ!!」
ほれ、見たことか!
「あー、待て待て、落ち着け志麻」
今にも殴り掛かりそうな志麻を羽交い絞めにして持ち上げる。
「なんで止めるんっすか!この女、兄貴の知り合いなんすか?そういえばさっき兄貴の名前を気やすく呼んでたな....野郎!ますます許せねえ!!」
「だから落ち着けって!!(ったく....相変わらずの馬鹿力だ....)」
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