第27話 後始末

俺と出会った魔法少女は基本的に即俺を殺そうとしてきた。


この空間で起きたことが全てなかったことにされるということなのだからそれは当然のことなのかもしれない。



その方が確実だから.....


ということは....やっぱり殺すのか....??



ピーチは....


元魔法少女だったとはいえ今は縛られて、見動の取れなくなっているただの人間の女の子を......



「ごめんなさい....殺さないで.....」



「よく言うわね!あんたは明人を殺そうとしてきたくせに!!」



「私のはギアを守るための正当防衛だから....」



「なんだと!!」



「ひいっ!!....」



今にも手を出しそうなピーチの間に割って入る。



「まあまあ....もういいだろ。そのギアを取った魔法少女は変身できないって言うんだからさ....この辺で許してやってもいいんじゃないか?」



ピーチは俺の方を睨む。



「明人は甘い!死にそうな目にあったのによくそんなことが言えるわね。魔法が使えないとはいえ事情を知っている人間というだけで十分脅威なのよ!前にも言ったけど、私たちは人間の前では使える魔法に制限がかかるの。この女は出会って即包丁で刺し殺そうとする女よ!復讐のためなら手段を選ばずになんだってしてくるわ!」



「そうか....だったらギアも返してやってくれ」



「はあ!?頭おかしくなったの??なんでそんなことしなくちゃならないのよ!!」



納得のいかないピーチだった。


それもそのはず、だってそれが目的で戦っていたのだから。


ピーチがそう言うのも分かる。


分かるのだが.....



「こいつは自分のために魔法を使っていた。その点で言えば銀行強盗していたあいつらと何も変わらない。でもこの子はただ自分の学校生活を守りたかっただけなんだろ。やってたことと言ったら料理の味を変えようとしていただけ。その点だけ見れば俺はそんなにこいつが悪いことをしたとは思えないんだ」



「許すっていうの!?酷い目にあったばかりなのに??」



「余計な復讐心を買うか、無抵抗の人間を殺すのかという2択で見た時、俺はどちらも選びたくなかっただけだ......」



ピーチは難しい表情をしながら自問自答していた。


少しは考えてくれる気になったのだろうか?



「甘い!甘すぎるよ!!ダメに決まっているじゃないそんなの!!これを集めるためだけに私は今まで明人君みたいな人を苦労して探し続けてきたのよ....これを返してしまったら.....私のしてきたことが全て無駄になってしまう!

明人!!あなたは私の奴隷なんだから!私の言うことに指図しないでよ!!」



「お前の奴隷か.......それは十分理解しているよ...」



「あっ.....ごめ....」



「ただな。ここでピーチがあいつを殺してしまったら.....俺はお前のことをこれから俺を殺した魔法少女たちと同等に思い続けなければならない。これから長く仕えるご主人様を俺はそういう目で見たくないんだ....」



そう言うと再びピーチは考え始める。


一分.....二分.....三分と時間は過ぎ、俺はピーチの答えを待った。



「う~~........分かったわよ....明人がそこまで言うなら返してあげる....」



「いいんでずが~~ありがどうございばぶ!!!」



鼻水と涙で詰まった声のキャロットの目に光が灯った。・



「ただし、返すからには協力してもらうわよ!!」



そう言ってピーチは自分のマジカルギアとキャロットのマジカルギアをつなぎ合わせる。


ピンクとオレンジの光が輝き、やがてそれは収まった。



「これで私たちは仲間になった。こうなったらキャロット。あんたもギアの回収に協力してもらうわよ!!」



「うう...仲間....??」



「あなたはまんまり戦ったことないから知らないかもしれないけど、仲間同士になった魔法少女はピンチになった時に救難信号が送れるのよ。私がそれを送ったらすぐにそこへ向かってきなさい!!30秒以内に!!」



ああ、だから魔法少女ものって一人がピンチになると都合よく全員が駆けつけるのか...



「いい?仲間になったからと言っても立場は私の方が上だから。私の言うことは絶対!分かった??」



「はい!分かりました!!!」



こうして奴隷が一人増えた。


キャロットの心も完全に折れたようで、マジカルギアを返した後はそそくさと逃げるように帰っていった。



「..........なあ、ピーチ....」



「なによ!言っておくけど、あなたのためにギアを返してあげたわけじゃないんだからね!!ギアの回収を効率よくするために仲間を増やしたほうが良いと思っただけなんだから!もしあいつが裏切ったりでもしたらその時は本当にぶっ殺してやるわ!」



「お前、キャロットを殺すつもりなんて最初から無かっただろ」



「な、何言ってるのよ!!本当にあなたって、不良のくせして頭お花畑ね!!」



「顔の傷、治したのピーチだろ。元から殺す気ならわざわざあんなに綺麗に治す必要は無かっただろ?」



「ふん!それは歯くらい治しておかないと、まともに会話もできないからよ!それに、あえて治してそして痛めつけるのを繰り返して拷問するやり方だってああるのよ!魔法少女はそういう世界なの!!いい加減慣れなさい!全く.....」



怒りながら先に教室から出て行った......




でもな、ピーチ。



結局は殺さなかったし、ギアだって返したじゃねえか.......



アンタも俺から見れば変わらねえよ。


十分アンタの頭もお花畑だ。









~ベジキャロット戦終了~



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