第25話 ライダーキック!!

「君は魔法少女と戦うのは初めてみたいだから教えてあげる.....人払いをしたこの空間で起きたことは、この魔法を解除した時にすべて現実世界では無かったことになる。壊れた物も元に修復されるし、ここから出て行った人たちも、どうして自分たちが空間内から出て行ったかを覚えていない。そしてここでもし、命を落としてしまったら.....?その時は、人々の記憶からその人は元々存在しなかったものとして扱われ、空間を解除した時に肉体ごと消滅してこの世から消えてなくなる.....」



「うう......」



「だから安心して、あなたがいなくなっても、悲しむ人は誰もいないから.....」




悲しむ人間だと....!?


そんなもの、最初からいねえよ......




だが.......



それでも、俺は.......死にたくない!!




この俺が、こんなイカレた女にいいように殺されるのは屈辱だ。



死んでも死にきれねえ.....




それに俺には、やることがまだある。




「あいつらと......お前をぶっ飛ばすという使命がなあ!!」



左肩に刺さった鰹節を掴んだ。



「なにをやっているの.....?」



「俺の思い描いていた予定は少々狂ってしまった。だが、お前が弾を再装填するこの瞬間に攻めるというプランは、まだ終わっちゃいねえ!!」



肩から抜けようとするそれを必死に右手で掴む。



これが最後の生命線だ。


死んでも離さねえ!!




宙に体が浮いた。



「なっ!!」



気が付いたか!だがもう遅い!!




「お前が食材と認識した鰹節は、そのニンジンに吸い込まれる。ということはだ....それを掴んでいる俺の体は、自動的に目標地点であるお前のところまで連れて行ってくれるんじゃねえか?そのバズーカには吸い込みと射出の二つを兼ね備えた機能はさすがについてねえだろ!!


くらえ!!」



蹴りの体勢を作る。


一瞬上空で止まった俺の体はすごい勢いでそれに引き寄せられた。



急接近する俺を反応しきれないキャロットは目をつぶる。


そして当たる直前に俺は鰹節から手を離し、靴をべジキャロットの顔面にめり込ませ、床に叩きつけた。



全ての体重が一点にかかり、床を突き抜け下の階まで魔法少女の体はぶっ飛んでいっく。




「はあっ....はあっ......」



その蹴りの威力はすさまじく、床に倒れた魔法少女は完全に気を失っていた。


足裏を魔法少女から引きはがす。


今度は演技ではなく、確実に戦闘不能になっているのが分かった。



その場に座り込むと右足に激痛が走る。


あの衝撃で俺の大腿と足首の骨も折れているみたいだった.....




「勝ったぞ........さすがにもう、立ってはこれねえだろ.....」



強敵だった。



これで戦闘向きじゃないというならこの先の戦いを考えると背筋が凍る。


しかもこれだけの攻撃を与えてただ気絶しているだけって......


本当に狂ってやがる.....




「聞こえるか.....ピーチ......」



『明人!大丈夫....?まだ息があるのね......』



「勝ったぞ.....でもギアの回収は無理っぽい....


体が動かないんだ...それくらいは自分で....しろ...」



『明人?おーい、明人??』



俺はそこで気を失った。


もうこれ以上戦うのはこりごりだと、そう思いながら.....

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