第20話 不意打ち


マジカルギア。



そういえば今まで出会った魔法少女の全員が左手に輝く装飾品を身に着けていたのは知っている。


魔法少女によって形状は違うが、常に光ってるので印象には残りやすいものだった。


ピーチがこれを持って来いということは.......


まさかこれが魔法少女の超人じみた強さの秘密だったりするのか。



気絶しているべジキャロットに近づく。



こちらにも事情というものがあるんだ。


悪く思うなよ....



マジカルギアを外そうと手を伸ばす。



その時だった。


壁にキャロットが激突した時に、頭から落ちた人参の形をした油入れが目に入る。



(あれ......?これのふたって最初から開いていたっけ??)



その空け口は計算されたように俺の方を向いてあり、そこには気持ち悪いくらい嫌な殺気を放っているのを直感で感じ取ってしまった。


それが動く0コンマ5秒前に後方へ体をのけぞらせる。



その入れ物の中から何かが勢いよく飛び出し、俺の頭があったであろう軌道を通りながら天井へ激突した。



赤い汁が滴り、緑色の破片が散らばり甘い夏のにおいが教室に広がる。



「あれ?絶対に油断したと思っていたんだけどなぁ.......」



オレンジ色の魔法少女は口元に血を付けたままゆっくり立ち上がった。


この女、気絶したふりをしていたのか!!



「あっぶねえな....だまし討ちなんてやることが卑怯なんじゃねえか?」



「卑怯なのはそっちでしょ.....」



少女は俺に指をさし、根暗な声で続ける。



「花見明人、あなた一人じゃないわね。仲間がどこかにいて援護している。さっきから独り言のように誰かと話をしているし、ついさっきまではただの人間レベルの強さだったのに、急にプリティスーツを纏った魔法少女並みのフィジカルになった。あなたはただの男の人間みたいだけど、その後ろについて指示を出している魔法少女は一体誰なのかしらね.......」



「...........」



「あなたは今、私のマジカルギアを奪おうとした。そういえば最近ベジオニオンから魔法少女を殺してギアを回収している魔法少女がいるって聞いたわ。あなたたちはそれと何か関係があるということでいいのかしら.......?」



なんだそれは!?


俺の知らない情報が出てきた。



マジカルギアを回収している魔法少女だと?



ピーチのこと.........ではないよな?


仮にそれがピーチの目的だったとしても今回が初めての魔法少女との戦闘だったわけで......


ということは他にもピーチ以外にアレを集めている魔法少女がいるってことなのか??





「黙秘.....?答えてくれないの.......?」



「別に話す理由がないから黙っているだけだ。まあ、あんたがここで何をしていたか教えてくれたら話してやってもいいぜ!(本当は俺は何も知らないんだけどな!)」



するとべジキャロットは少し驚いた表情で



「見ていたんじゃ.......ないの....?」



「いやだから見てねえって!!」



「............本当に.......??」



「本当だよ」



「わかった 。じゃあ教えてあげる.........」

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