第17話 魔法少女 べジキャロット②

ためらいなくそれは振り下ろされる。



「ぬわあああ!」



間一髪転がりながらかわすと、少女は追撃するように刃物を振り回しつづける。



「待て待て、落ち着け!!!」



暴れ続ける少女の両手首を掴み、立ち会ったまま硬直状態になった。



「フーッフーッ.......見たな........」



鬼気迫る表情で殺意を向けられているのが分かる。



プルプルとお互いに手を震わせながら、少女の左手に握られた刃物はゆっくりと俺の喉に向かって回転し始める。



っっ.......!!なんて力だ.......



くっそ、1年間ただ料理をしていただけの魔法少女じゃなかったのかよ!!


話が違うぞ!!




『明人君!どうしたの??』



「敵に見つかったんだよ!!襲われているんだ!助けてくれ!!」



『分かったわ。少し待ってて.....』



待てって!?


冗談じゃねえ....こんな状態でどれくらい待つっていうんだ.....今すぐ来い!!




必死で抑え込んでいるのに、じわじわと刃が進んできている!


マズイ...押されている....


このままだと......切られる.......!



首を左に大きくひねりながら、左手首を掴む力をあえて緩めた。


少女の体は大きく前に流れ、バランスを崩したところで背後に回る。




チャンスだ!決めるなら今しかない!!



べジキャロットの左足に俺の右足を巻き付ける。


前方に屈むように倒れようとした少女の頭に左足を乗せ、行き場のない右手は左手でロックする。


卍固めの態勢が決まった。



「どうだぁ!痛てぇだろ!!」



物凄いパワーで外そうとしているが、完全に決まった関節技はそう簡単には外れない。


強引に外そうとすると関節や靭帯がまず壊れる。


外したくても外せない。まさにがんじがらめだ。



魔法少女は力は確かに強いが体重の軽さや体幹、重心は普通の人間と変わらないというのは前の戦闘で学んだから関節技も簡単に決めることができた。



「ぐうっ.....なんだお前.......離せよ!」



「お前みたいな危険人物誰が離すかバーカ!!お前なぁ!自分が包丁で人を刺すってことはよぉ....自分の骨一本くらい折る覚悟くらいあるってことだよなぁ!!」



右腕でガッツポーズを作りながらさらに肩関節を締めあげる。



『どう?明人君。まだ生きてる??』



「なんとかな。今サイコパスな魔法少女を制圧したところだ!!」



『制圧??』



「ああそうだ。魔法少女なんて結局のところ、ただ力が強い女ってだけよ!俺が今まで喧嘩してきた相手で俺より力が強い相手なんて何人も相手にしてきたぜ!!そう言う奴はこうやってテクニックを使って関節技をかけるだけで泣いて謝るんだよなぁ!!!」



『ちょっと待って....もしかしてキャロット、まだ生きてる?』



「ああ、俺の卍固めに悶絶しているぜ!!俺の勝ちだ!!早く来いよ!」





『今すぐ骨を折って!!早く!!!』



突然取り乱したように大声を出して、ピーチは叫んだ。

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