第13話 転入生
『.........ざわざわ......』
俺がベンチに座ると人が離れる。
俺が廊下を歩くとすれ違う生徒が目を逸らす。
そして俺が教室に入ると......
『.................』
このように一瞬で静まり返る。
しばらくするとまた、
『..........ざわざわ....』
とまた何かを話し始める。
もう少しバレないように話せよ....
あからさま過ぎて怒る気にもならん。
どうせ、
『アイツ学校に来たんだ。あんなことがあってよく来れるよな...』
とか、
『学校こないから退学したのかと思った...』
とか、シンプルに
『死ね!!』
とか、そのあたりの会話をしているんだろう。
1ヶ月前にこの学校の風紀委員に喧嘩で負けたことは大勢の生徒が見ていたし、俺の噂は全校生徒が知っているんだろうな...
今日は朝から学校に来た。
いつもなら10時くらいに登校するのが当たり前になっていたが、周囲の反応はその珍しさもあるのだろう。
もちろん心を入れ替えただとか、風紀委員の制裁を受けて校正しただとかそんなことは全くない。
昨日のアレがあった後、全然眠れなかった。
朝も早く目が覚めてしまって、何というか、とにかくじっとしていられなかったのだ。
特に行く場所も無かった俺は知らず知らずに現実逃避をしていたのか、いつの間にか足は学校に向かっていた。
俺の席は窓際の一番後ろ。
入学当初にそこの席にいたやつからぶんどった場所だ。
ここが一番日当たりが良くて落ち着く。
ちなみに隣の席はいない。
というか誰も座りたがらない。
席に座り、朝日を浴びてきたら睡魔が襲ってくる。
(寝るか.....)
しばらくすると担任教師が入り、何ヶ月ぶりかのホームルームが始まる。
全員が起立する。
俺は立たない。
なぜなら寝ているから。
そんな俺に誰も注意することはなく、ホームルームは進行される。
「よーし、全員席に着いたな。早速だが今日はこのクラスに転入生を紹介する!!」
担任がそう言うとクラス内がざわつきはじめる。
うるさい。
黒板に何かを書く音がし、足音が聞こえる。
「では、自己紹介を」
「はい。
皆さんおはようございます。"小夜見 桜"と言います。親の仕事の都合で隣町から引っ越して来ました。どうぞ仲良くしてください」
女の声で話し始める。
クラスの連中の中から『可愛い!』という声が聞こえた。
転入生...可愛い女の子か.....
興味本位で顔を上げるとそこに彼女はいた。
まあ、うん。可愛いな。確かに....
でも今、俺は《可愛い女の子》というものにどうも運を感じない。
ひどい目に会ってばかりでむしろ恐怖すら感じる。
完全にトラウマになっているなこれは.....
まあこんなお嬢様みたいな生徒、どうせ俺みたいな不良には縁のない人間だろう。
無視無視。
「それじゃあ小夜見の席は.....」
ガヤガヤしていた教室が急に静まりかえった。
(.........??......なんだ..?......どうした??)
「あー....そこの空いている.....席で.....」
空いている席って、まさか....
何も知らない女の子は元気よく返事をし、俺の隣の席へ向かって歩いてきた。
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