第8話 治癒魔法の対価

しっぽを掴まれながら暴れ狂う狸の横腹には毛皮の上からでも分かるほど大きく、深い傷があった。



「そいつをどうするつもりだ?」



「よく聞いてくれたわね。今からこの子の傷を治すのよ。私の魔法でね」



そう言うと少女は光る右手を狸の傷口へ近づけた。


すると光の当たった部分から傷がどんどん小さくなっていく。



「なっ....」



ものの数秒で傷は全て治り、狸は地面に下ろし解放した。


黒茶色の獣は急いで逃げるように遠くへと駆けて行く。



「今のが......魔法なのか?」



「そうよ。やっと信じてくれたわね!」



「........まあまだ完全に信じ切ったわけではないが.....魔法と言わないと今起きたことの説明がつかないからな」



俺は別に頭が良いわけではないが、この世にある現代科学でもこんな技術はまだないだろう。


本当に魔法?......なのだ。



「あら、まだ半信半疑?意外と君って勘ぐり深いんだね」



「ほっとけ!!まあ、あんたが魔法少女ということは一応理解したよ」



「よろしい!!」



「じゃあ、俺はこれで.....」




俺は魔法少女に背を向けて歩き出した。




「へっ?ちょっと、どこに行くの??」



「どこって........帰るんだよ。自分の家に。今日はもういろいろとあって疲れた。一度帰って寝て、頭を整理しないと理解が追い付かん.......」



「まだ私の話は終わっていないんだけど?」




話??


なんだよ?まだ何かあるのか?




「あなた、名前はなんて言うの?」



「...........花見 明人..」



「そう、明人ね。私は明人君の怪我をを治して危機的状況を救いました。言わば命の恩人ってところかしらね」



「.....それがどうした?」



「そんな明人君は命の恩人である私に何かお礼をする義務があります!!」



「お礼か.......なんだ、ジュースでも奢って欲しいのか?いいぞ!!あ、でも悪い、俺財布無いんだった....」



「何言ってるのよ!安すぎるわ!!治癒の代償がジュース一本だなんてそんなわけないでしょ!!魔法を舐めるんじゃないわよ!!」



なぜか急に怒り出した。


なんて恩着せがましい女なんだ。


この俺が飲み物を恵んでやるというのに、俺にそこまでさせる奴なんてこの世のどこにもいないんだぞ!!



「......そんなこと言われたって、じゃあ俺にどうしろって言うんだよ!!」



「ふふん、あなたが私にするお礼。それはすでに考えてあるわ!!」




なんだ?なにか嫌な予感がする......




その桃色金髪の魔法少女は俺を指さし、高らかにこう言った。



「花見明人!!私と一緒に魔法少女を潰しに行くわよ!!」




「......はあ????」

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