第4話 銀行強盗はコスプレ少女
「よし、割れたわ。急いで蓮ちゃん!」
「分かってるよ鈴。しっかり見張ってろよ」
2人の女の子の声が聞こえる。
近づいていくとそこはこの町の一番大きな地方銀行だった。
俺はすぐに理解した。
こいつら、強盗だ。
銀行強盗が目の前で起きている。
普通の人間ならここでビビって逃げるかスマホで撮影するか、警察に連絡するかなんだろうが、俺は全然別のことを考えていた。
銀行強盗と言ったら銃や刃物なんかの武器を持っているに違いない。
要するに、強いやつがするものだ。
俺は山籠もりの帰り、良い機会だ。
出戻りの運動がてら修行の成果を見せてやる。
この強盗を倒す!!
ドアのガラスが割れて破片が飛び散った場所へ行った。
その瞬間強盗の一人であろう女と目が合う。
それを見て俺は硬直した。
その少女はとんでもない恰好をしていたのだ。
黄色の派手なドレスに腕には眩しい光を放つ謎の装飾品。
髪も真っ黄色に染め、頭には赤い大きな鈴を4つも付けている。
顔はがっつり見えていて普通にかわいい女子高生くらいの女の子だった。
なんだこのコスプレ少女は.......
俺の思っている覆面の屈強な銀行強盗とは明らかに違う。
自分の正体を隠す気あるのだろうかこいつは........
「え?何?男....?」
少女も俺を見て困惑していた。
俺も大概な恰好しているからそりゃそうだろう。
「お前、銀行強盗だな?金を盗もうとしているのか?」
一応確認してみる。
コスプレ少女は眉をひそめて、
「なんで人間の男がこの空間にいるのかしら.......人払いの魔法は掛けてあるはずなんだけど....偶然紛れ込んでしまったのかしら??」
わけのわからないことを言っている。
だがこの落ち着きぶりを見て分かった。
この子が強盗の一員であることは間違いない。
おそらく見張りの役。
そして中に金をとりに行ったのがもう一人いる。
他にもいるかもしれないが関係ない。
全員ぶっ飛ばすだけだ!!
「ま、理由がどうあれ見られてしまったものはしょうがないわ。死になさい」
「死ぬのはテメエだよ!クソ強盗が!!」
素早く体を丸めながら回転し、重たい回し蹴りを少女の腹部に突き刺した。
喧嘩は先手必勝!!
相手に何か動かれる前にいかにこちらの攻撃を通すかが鍵だ。
相手の8割くらいがこれで吹っ飛んで座り込み、戦意喪失してしまう。
そうなればこちらの勝ちだ。
喧嘩の勝利の王道パターン。
それがまずクリーンヒットした。
.........はずだった。
それなのに、その黄色のコスプレ少女は真っすぐ俺を見つめたまま微動だにしなかった。
信じられねえ.....
渾身の蹴りだったのに....
俺はその瞬間嫌な予感がした。
俺の脳裏にあの忌々しい少女、白神 希来里の顔が浮かび、あの時の感覚を察知してしまっていた。
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