第11章20話 天と地を覆すは集いし極星

 最後の一週間は瞬く間に過ぎていった。

 クエストにいってモンスター図鑑埋めとジェム稼ぎ。

 稼いだジェムでアリスの強化を行い、アイテム補充。

 都合が合えば、チーム内対戦をしたりトンコツの集めてくれたチームと対戦したり……。

 『ゲーム』外でも、春休みだしってことで色々と忙しかった。

 ……ま、主に遊びに行ったりとかがほとんどだったけど。

 春休みってことで宿題もないし、ありすたちも何の憂いもなく春休みを謳歌できていたみたいだ。


 後は家族で出かけたり、出かけたついでに外食したり。

 不意打ちで美奈子さんの実家から突然おばあちゃん――正確にはひいおばあちゃん――がやってきて、美奈子さんがパニックになって逃げ回ったり。

 お仕事見学してもいいよ、と言われたのでありすと二人で弥雲さんのこの国のオフィスへと行ってお茶したり。


 他にはなっちゃんと遊んだり、美鈴にいつも通り恋の相談で泣きつかれたり――私のことを妹と言うならそんなことで頼ってほしくないんだけど――同時に楓と椛からも泣きつかれて美鈴との間に戦争が起きたり。

 それを見た千夏君はあきれ顔でため息を吐いた後に華麗にスルーして雪彦君とイチャイチャしてたり。

 雪彦君にお願いされたお料理教室のついでにあやめにも特訓をしたり。




 ……たった一週間だったけど、とても色々なことがあった。語り尽くせないくらいに。

 この世界へとやってきてから半年と少し……その中で最も充実した一週間だったと思う。

 全てが終わった後にこの世界にいられないとしたら――そう考えると泣きたくなってしまうくらい。




 泣いても笑っても、今日の戦いで全てが終わる。

 ゼウスが前言を覆して期間を延長する、という可能性はありえなくはないがかなり低いとは思っている。

 期間が延びれば延びるほど、『ゲーム』に挑める人数が多い私たちにとって有利になるからだ。

 ……まぁ今日の対戦で決する、と言っている以上延長戦はきっとないとは思うけど。

 それに、強制的に私を排除するということもおそらくはもうないだろう。でなければ、勝者を決めるための対戦なんてイベントをするまでもなく終わらせてきたはずだしね。

 安心はできない。でも必要以上に警戒して萎縮してもいけない……そんな風に割り切ることとした。どうせ対策なんて出来っこないし。




 気がかりなのは、今日にいたるまでプロメテウスとの連絡がつかないままだということだ。

 私が心配したところでっていう気持ちはあるんだけど……気がかりなのには違いない。

 ピッピとも相談してみたんだけど、彼女にもプロメテウスの足取りはわからないそうだ――そもそも生きていること自体知らなかったわけだしね……。

 後は、ドクター・フーによく似た女性の件か……。

 あれから私たちの目の前に現れることはなかったし、やっぱり見間違いだったんじゃないかって気もするんだけど――っていうのが引っかかる。

 ……ある意味でゼウス以上に気を付けなければならない相手かもしれない。

 これまたこちらから積極的に動けることではないから、どうしても受け身にならざるをえないんだけど……。




 ――暗いことを考えるのはもうやめよう。

 最後の戦い……このことだけについて集中すべきだ。

 そして、最後の戦いに向けてやれるだけのことはやってきた。

 後は――アリスを信じるだけだ。

 それしか私に出来ることはないのだから……。




*  *  *  *  *




 3月31日、土曜日――11時50分を過ぎた頃。

 私たちはマイルームに集合していた。

 ……それどころか、現実世界でも集合完了している。

 時間帯が微妙だし、春休み中とはいえどうしようと悩んでいたのだけど、年長者組がいいアイデアを出してくれた。


『お疲れ様会を行うのであれば、「お花見」をするということで早めに集まる、というのはどうでしょう?』

『なるほど、鷹月さんの案でいける……うん、私たちはそれで都合つけられる』

『お弁当の準備は必要だけどにゃー。そこで引っかかるのはあーちゃんたちかにゃ?』

『星見座ーズはおめーらがいい感じに出来るだろうし、お嬢とあやめさんは問題ないだろう。俺も遊びに行くって言っておけば大丈夫だな』


 というわけで、『友達で集まってお花見をする』という言い訳でいくことにした。

 心配されていた私たちも、簡単なお弁当を作って持っていくということで美奈子さんを説得した――私と美奈子さんできゃっきゃしながら二人分のお弁当を作って持ってきている。ありすは手伝わなかったけど……。

 他もそれぞれ都合をつけて集合だ。

 今回集まったのは演習場の別荘ではなく、桃香の家の方である。

 以前、桃園演習場にはいっぱい桜が植えられているという話をしたことがあったと思うけど、お花見シーズンにはそのエリアが解放されているのだ。

 そして桃香の家は『桜』の名が示すように家の敷地内にも桜が植えられている。

 つまり、桃香の家で他の誰にも邪魔されることなくお花見ができるというわけだ。


 もちろんだからと言って外でマイルームに入るわけにはいかない。

 皆して桃香の部屋に……というわけにもいかないので、今回はあやめの家の方に集まってマイルームへと行くことにしてある。

 桃香たちは自室で――とも考えたけど、ガイア戦後の『ラヴィニア登場』みたいに変なことが起こる可能性もあるからね……全員揃って鷹月家から向かうこととした。部屋の広さだけはどうにもならなかったので、2部屋に分けることとなったけど。


 お花見は本当にやるつもりだ。お疲れ様会兼ねているしね。

 最終対戦がどのくらいの時間がかかるかわからないけど、おそらくそう長い時間はかからないだろうと私たちは踏んでいる。

 モンスターによる妨害もないし、ジュウベェみたいな不死身チートがあったりするわけでもない。

 性格的にも能力的にもありすも美鈴も長々と戦って消耗を望まないだろう――もう一人の参加者となるであろうゼラだけはよくわからないけど……。

 どんなに長くても1時間はかからないと思っている。ちょっと遅くなっちゃうけど、お弁当を食べるのは決着がついた後だ。


 最後の戦いは皆は参加できない――が、きっといつもの対戦と同じならばマイルームから見守ることはできるはずだ。

 ありすも皆に見られて緊張とかは全くないようで、『ん、がんばるから見てて』とふんすと気合を入れていたくらいだ。

 何というか、こう度胸があるというか物おじしないというか……こういう時、本当に年齢に見合わない頼もしさがあるね。そういうとこだけは『お姉ちゃん』っぽいと言えなくもないんだけど……。




「ありす、対戦条件を念のため最終確認しておこう」


 勝者決定戦がどんな形でスタートするのか直前までわからなかったけど、今になってようやくわかった。

 どうやら『特殊なクエスト』として受注し、その中で対戦が行われる形式のようだ。




 特殊クエスト:最終勝者決定戦

 参加条件:称号『全てを超えしもの』所持のユニット、および使い魔 ※使い魔は任意参加

 特記事項:

  ・本クエストは通常の対戦と同じルールとなる


 対戦条件:

  ・制限時間:無限 ※降参リザイン不可

  ・使い魔へのダイレクトアタック:なし

  ・アイテム使用数:アイテムの種類を問わず、計10個まで

  ・遠隔通話不可




「デスマッチっすか」

「だね……まぁそれはいいんだけど」


 制限時間無限かつ降参不可ってことは、誰か一人が生き残るまで戦いは終わらないということだ。

 うーん、何かデスゲームじみてて嫌な感じではあるけど、そうでなければ決着がつかないのも確かか。

 その他のルールは特におかしな点はないかな?

 一個だけ気になるのは『遠隔通話不可』だけど、これはおそらく使い魔がスカウターで相手の能力を見てこっそり伝えるとか、死角からの攻撃を教えるとかそういうのを防ぐためだと思われる。

 想定される対戦相手はケイオス・ロアとゼラ。

 ゼラだけはちょっと能力の全貌が掴めてはおらず、雪彦君クロエラがある程度共に行動していてわかったことしか知らないんだけど……話を聞く限りそこまで戦闘向きな能力や性格ではなさそうだ。

 もちろん油断などするわけはないのだが、どうしたって『本命』はケイオス・ロアとなるだろう。

 そのケイオス・ロアの能力も、全ての魔法を見たわけではないけどホーリー・ベルの時と同じだということもわかっている。

 正直、スカウターの出番はないかなと思う。


「……大丈夫そうだね。流石にこの期に及んでいざクエストに入ったらルールが変わってる、とかはないと思うけど……」

「そこはもう信じるしかないと思う」

「そうだにゃ。まー、最低三組入れば……運営側がズルしてくる可能性は低いと思うにゃー」


 ……それでもまさかのことをしでかすんじゃないかという疑念があるんだよね。

 何せ運営=ゼウス……この世界の管理者であるプロメテウスの『敵』であり、この世界を乗っ取ったと言っても過言ではないことをしている。

 そんなやつが、この最終局面で何か仕掛けてくるんじゃないか……という疑念を持つのは自然のことだと思う。

 とはいえ、恐れ過ぎても仕方ない。どっちにしたってゼウスの仕掛けを事前に見破ることなんてできやしないし、後手に回らざるを得ないのが現実だ。


「ラヴィニア」

「ありす」


 クエストの開始まで残り1分を切った。

 そこでありすが真っすぐに私を見つめ――右手を差し出してくる。

 ――その意味を私はよくわかっている。

 迷うことなく一つ頷き、彼女の手を取る。


「こっちにいた方が安全だとは思うけど――いっしょにきてほしい」

「うん、もちろん」


 皆には悪いけど、この『特等席』を逃すつもりは元よりなかった。

 私がありすをこの『ゲーム』に巻き込んだ――様々な謎は残っているけど、その事実だけは変わりはない。

 そして、私とありすで『ゲームクリア』目指して戦いを始めたのだ。

 ……その戦いの終わりを一番近くで見届ける義務が私にはあると思う。


「もし何かあっても、わたしがラヴィニアを守る。だって、お姉ちゃんだもん」

「はいはい。頼りにしてるよ」


 ただ一つ残念なのは、この最終局面において私は何一つとしてありすの手助けができないということだろう。

 アドバイス……はありすには不要かもしれないけど、せめて回復くらいは私がしてあげたかったな……。


「ありすさん、ラビ様。そろそろ時間ですわ!」

「! うん。それじゃ、行こうありす!」

「ん! じゃ、いってきます」


 励ましや応援、アドバイス――皆も色々とありすに伝えたいことはあったろうけど、今回は誰も何も言わずに見送ってきた。

 私たちが互いに交わすべきは、『ゲームの勝者』となったことへの喜びの言葉だけだ。




 最後にありすと私は互いに目配せし、互いに頷きあい……。

 手をつないだままクエスト――美鈴たちとの雌雄を決する場へと向かって行った。




*  *  *  *  *




「ここが戦いの舞台か。ふん、味気ないが――まぁ悪くはない」


 クエストに入った瞬間からありすの姿がアリスへと変わる。

 その手には既に『ザ・ロッド』が握られており、いつでも戦闘ができる状態だ。


「……地形も利用できない。純粋な力勝負の場って感じだね」


 アリスの感想……『味気ない』には同意だ。

 最後の戦いの舞台は、今までの対戦フィールドとは全く異なる様相だった。

 いつもならば『コロシアム』やら『荒野』やら……人為的かどうかはともかくとして、風景として成立している場所だった。

 しかし、今回は全く違う。

 ただひたすらに広がる――なんていえばいいのか、薄い青の床が広がっているだけだ。

 その床には等間隔で白い線が引かれており、またほんのわずかではあるが明滅してグラデーションとなっている。

 床の上には一切の障害物はなく、壁も天井もない。果てがあるのかどうかすらわからない。

 『電脳空間』――ぱっと思い浮かんだのがその言葉だった。


「お、来たようだぞ」

「……ケイオス・ロア」


 私たちから少し離れた位置にケイオス・ロアの姿が現れる。

 こちらも七支刀のような霊装を手にしており、いつでも戦闘可能と言った感じだ。

 向こうもこちらに気付くと、


「……」


 無言のまま唇を歪めただけの笑みを見せる。

 アリスも同じく笑みを返すだけで言葉はかけない。

 ――言葉は不要、か。

 こうなることはわかっていたし、何よりも二人が望んでいたことだ。

 余計なことは考えず、二人の望み通り『どちらが強いか』をはっきりさせる場だ、あれこれと語り合う必要もないということだろう。


「――最後のヤツが来たか」

「あれがゼラか……」


 ケイオス・ロアに遅れること数秒。同じように離れた位置に黒い泥の塊が現れ、歪な人型へとその身を変じる。

 話には聞いていたけど……ほんと異様な姿のユニットだな……。

 アリス、ケイオス・ロア、ゼラ……この三者が等間隔に『三角形』を描くように配置されている。

 初期の立ち位置で有利不利が出ないようにという配慮、かな? 近距離特化型のユニットだとしたらちょっと遠間かなってくらいだけど、逆に一気に距離を詰めることもできる距離だ。

 ……下手をすると最初の一発で勝負がつきかねない、そんなことを思ってしまう。


「! アリス、カウントダウンだ……」

「ああ。ふん、普段の対戦に比べて至れり尽くせりじゃねぇか」


 三角形の中央に数字が浮かび上がる。

 10から始まるカウント――これが意味するところは誰もがわかるだろう。


「よし、使い魔殿は少し下がっていてくれ。危なくなったらすぐ駆け付ける」

「う、うん……」


 ルール通りならば流れ弾が私にダメージを与えることはないはずだ。

 が、完全に信用できるかは難しい――だから、巻き込まれないように少し離れつつ、それでももしもの場合にすぐ駆け付けられる距離へと私も後退る。

 ……ケイオス・ロアもゼラも使い魔は連れてきていないようだった。

 …………確かに使い魔がいたところでこの場で何の役にも立たないだろうけど、ちょっと『冷たい』と思ってしまうのは私の我儘なのかな。

 まぁクラウザーみたいな例外を除けば使い魔の身体は小さいし、この殺風景でだだっぴろい場所じゃ戦いの流れ次第ではどこにいったかわからなくなっちゃうかもしれないしね。それに、ジュウベェ戦でやったみたいに『使い魔の楯』として使っちゃう場合もあるかもしれない。

 いざとなれば怖いけど『使い魔の楯』作戦をやってもいいんだけど――今回はアリスもそれを望まないだろうし、それを期待して私に付いてきてもらったわけでもない。


「アリス」


 カウントがゼロになる前に、最後の一言を――


「――めいっぱい

「ああ!」


 私の言葉に振り返らず、でも力強くアリスは応えた。

 ……『勝って』とか『負けないで』とか言うべきだったかなとも思ったけど、『私が』『アリスに』かけるべき言葉はきっとこれで良かった。

 負けられない、負けたくない戦いではあるけど……いつだってアリスは楽しむことを忘れていなかったと思う。

 だから、この『ゲーム』最後の戦いに向かうアリスには、この言葉が相応しいのだ。




 そして、カウントがゼロとなり――




<Ready――Fight!!>




 『ゲームの勝者』を決める、最後の戦いは始まる。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 対戦開始の合図とともに、三者が同時に動く。


「ext《神翼鎧甲フレズヴェルグ》!!」

「エクスチェンジ《刻装クロノア》、オペレーション《オーバーラップ:天装アカツキ》!!」

「……!!」


 強化魔法は戦いながら使うしかない。

 しかし、互いに様子見しながら使うということはせず、最初から全開で最大強化魔法を使う。

 そして三者はまるで示し合わせたかのように三角形の中心点へと突撃――


「ext《竜殺大剣バルムンク》!」


 先手を取ったのはアリス。

 突撃と同時に灼熱の大剣を大きく横薙ぎに振るい、ケイオス・ロアとゼラを同時に切り払おうとする。


「オペレーション《クイックタイム》!」


 が、突撃と同時にケイオス・ロアは先読み――をしたわけではないだろうが自分の時間を加速させつつ跳躍、アリスの攻撃を回避しつつ頭上を取る。


「……」


 一方で、黒い泥の津波となって襲い掛かってきていたゼラはアリスの攻撃に対抗することはできなかった。

 ゼラの持つ3種の魔法はどれも攻撃向きではない。

 共感魔法エンパシーは触れなければ効果はないし、この戦いにおいてはさほど意味をなさないだろう。

 唯一直接攻撃に関係する凝結魔法コンクリーションは『電脳空間』を模したこの対戦フィールドでは何も取り込むことができず効果を発揮することはできない。

 故に、ゼラには《バルムンク》に対抗することが出来ず、一刀のもとに切り伏せられる……はずだった。


「!? なにっ!?」


 しかし、ゼラへと命中した《バルムンク》が止まった、否、

 柔らかい泥状の肉体はあっさりと斬り裂かれているのだが、少し進んだところで刃が進まなくなる。

 なぜ、とその場で考えることはせずに、アリスは迷うことなく後ろへと飛ぶ。


「ちぇっ、纏めていけると思ったんだけどなー」


 上へと飛んだケイオス・ロアが『七死星剣』を巨門へと変化させ、強力な一撃を放とうとしていた。

 ゼラが斬り裂かれずアリスがすぐに離れたのを見て『無駄撃ち』はすべきではない、と同じくそのまま距離を取る。


「それにしても――ふーん? 面白いこと考えたわね、

「……ハン、そういうことかよ」


 ケイオス・ロアの言葉に応えるように、ゼラの中から赤毛の少女――フランシーヌが現れる。

 フランシーヌには『全てを超えしもの』の称号がない。

 だから本来はこの場に立つ資格はないはずだ。


「……悪いわね、あたしも負けるわけにはいかないの」


 それでもフランシーヌはこの場に現れた。

 そのカラクリは単純だ――ゼラのギフト【格納者コンテナー】によってゼラの体内へと潜んでおいて、本来は立つことのできなかった決戦の舞台に潜り込んだのだ。


「卑怯と言われても構わない……でも、この戦いの勝利は譲れないわ!」


 なぜフランシーヌがここまで勝利に執着するのか、その理由はアリスたちには知る由はない。

 『卑怯』――確かにその通りだろう。ある意味で『裏技』を使って潜り込み、ゼラと2人で戦うのだから。


「ま、別に構わないわよ。

 ……そういや、あんたとも決着をつける必要があったわね。ちょうどいいわ、アリスと纏めて相手してあげるわよ!」


 ケイオス・ロアはフランシーヌが現れることを知っていたわけではないが、特に驚きはなかった。

 なぜならば、と考えていたからだ。

 もしもBPがこの場に立てるのであったならば、彼女の鎧の内部に入り込んで参加することができるかもしれない、とケイオス・ロアは気付いていた。

 ……ただ気付いてはいたもののBPはそもそも最終決戦の場に立つ資格がない。考えても意味のないことだ、と切り捨てていた。

 『何がなんでも勝つ』……その思いをケイオス・ロアは否定することはできない。

 自分もそうした思いがあることは否定できないからだ――『ゲーム』以外でも、現実世界のあれやこれやでも。


「……ったく、どいつもこいつも」


 一方でアリスは呆れたようにそう呟くと、剣を構えつついつものように獰猛な笑みを浮かべる。


「誰が相手だろうが構わん。の前で無様は晒せないんでな。

 ――この戦い、勝つのはオレだ!!」


 三者三様、戦う目的も意味も異なるものたちが互いに睨みあい――弾かれたように動き出す。




 想定外の4人目が加わり、今度こそ最終的な勝者を決める対戦は始まったのだった。







----------あとがき-----------


ここまでお読みいただきありがとうございます!


第11章3節は再び時間を空けてからの更新とさせていただきます(先行している別サイト版にとうとう追いついてしまうので……)

申し訳ありませんが、2024/8/19から月~金の1日1話更新の予定となります

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