第9章13話 どいつが負けてくたばった?

◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 は誰よりも優れた『肉体』を持っていた。

 しかし、それと反比例するかのように、誰よりも優しく、臆病な『心』を持っていた。


 『天は二物を与えず』――その言葉通り、誰よりも戦闘において適した肉体を持ちながらも、戦闘に適さない心の持ち主であった。


 それでも己の『相棒』と共にゆっくりと、やれるだけのことをやるというスタンスで『ゲーム』を進めていっていた。




 転機が訪れたのは昨年の10月――ギフトスキルの実装からだった。

 に与えられたギフトは――




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




「あとは、エクレールを倒すだけ……くっ!?」


 ヒルダは完全に消滅した。

 本人が消えているのだ。さすがにここから招聘命令魔法レジデンス・オーダーを使うことはできないだろう。

 残っているのはオルゴールが動きを完全に封じ込めているエクレールだけだ。

 動けない相手に一方的にとどめを刺すというのは少し気が引けるが、ジュリエッタの予想が正しければエクレールは単独では動けないはずだ。

 だからどのみち無抵抗な相手を倒すということになる。

 ……ここで同情してエクレールを倒さないということだけはない。もしも動いたとしたら、誰にも止められない圧倒的な暴力を解き放つことになってしまうのだから。

 エクレールの元へと向かおうとするジュリエッタだったが、ヒルダ戦でのダメージはやはり大きい。

 特に《アクセラレーション・クアドラプル》と《ジリオンストレングス》という、極限すらも超えた超越魔法を二つも同時に使ったのだ。肉体的にも反動が大きい。


 ――ライズはやっぱり使えないか……でも、ちょっと嫌な絵面になるけど《クラウソラス》で削っていけるか……。


 《ジリオンストレングス》の反動で、やはりライズが使えなくなってしまっている。

 ライズが使えないのはおよそ五分程度――動き回る敵との戦いでは致命的な時間ではあるが、今の状況ならばどうとでもなる時間だ。

 もっとも、この五分を有効に使えればヴィヴィアンたちの戦いにも参加できる……ということも確かなのだが。


「メタモルも、もうあまり使えないか……」


 ヒルダの最後の攻撃でつぶされた左目は戻したものの、《バロール》は消費が大きすぎて使えなかった。

 大技二語魔法はもはや使えないだろう。使えても1回が限度か。

 竜巻触手や電撃も数回が限度、損傷した肉体の修復をすることも考えるとメタモルをまともに戦闘に使うことは難しい。

 この調子では、ライズが使えるようになってもほかのメンバーの助けにはなれないかもしれない。


 ――……それならそれで、『壁』にでもなってやる……。


 自暴自棄なようで冷静にジュリエッタは自分にできることをそう考える。

 実際にヒルダ戦で初めて『剣』を使ってみたが、とりあえずライズさえ使えるようになれば相手の攻撃を受け流したりはできることはわかった。

 『壁』としても十分機能することはできるだろう。


「オルゴール……今、そっちに戻る。エクレールを倒さないと……」

「ハイ。とは言ってモ、ヒルダがいなくなったら動きが完全に止まりまシタが」


 やっぱりか、とジュリエッタは自分の推測が正しかったことを確信する。




 エクレールはピースなのは確かだが、ヒルダたちのような自分の意思をもって行動するメジャーピースではない。

 

 アビサル・レギオンの中でどのようなやり取りがあったのかまでは推測の域を出ないが、おそらくエクレールの強すぎる身体能力を使わずに『人間電池』へと換えるのはもったいないと判断したのだろう。

 ヒルダの能力を使えばマイナーピースであっても自在に動かすことができる。

 仲間にオーダーをかけ、仲間が倒れた後にステータスを上げるという能力は確かに強力だが、いつでもすぐに使えるというわけではない。

 その隙間を埋めるための強大な戦力を持つ『護衛』として、マイナーピースであるエクレールを自身の傍に置いた――そういうことなのだろう。

 だから、ヒルダがいなくなった今、エクレールは抜け殻となり自分の意思で動くことができなくなった、そうジュリエッタは確信していた。


「……他の皆のこともある、のんびりとはしていられない……」


 全身が痛むが休んでいる余裕はない。休んだところで痛みが消えるわけでもないのだ。

 ジュリエッタは何とか立ち上がり、エクレールへととどめを刺そうと向かう。

 何にしろ、これで『ゴエティア』正面の戦いは終わる――ほんの少しだけではあるが、ナイアとの戦いで勝利に向かいつつあることをジュリエッタもオルゴールも感じていた。




 ――だが、


「!? ジュリエッタ、気を付けてくだサイ!」

「そんな……エクレールが動く!?」


 抜け殻となり横たわっていたエクレールが再び動き出したのだ。

 だが、油断せずに拘束を解かなかったために自由に身動きが取れるわけではない。

 糸と刺繍に雁字搦めにされ、まるで痙攣するかのようにその場で蠢くだけにとどまる。


「ライズが使えるまでまだまだかかる……でも、今やらないとマズい……!」


 自分の推測が間違っていたのか、とも思うが何が正しいのかを考える余裕はない。


「オルゴール、そのまま絶対にエクレールを離さないで!」

「わかっておりマス!」


 いかにエクレールが怪力であろうとも、今のオルゴールの拘束から抜け出すことはできないはずだ。

 反撃される恐れは少ないが、それでも油断せず、確実に《クラウソラス》を突き立てて倒すしかない――やることになんの変わりもない。

 痛みをこらえながら走ってエクレールの元へと向かうジュリエッタだったが、それよりも早くエクレールに異変が起こった。


「こ、コレは……!?」


 急に押さえつけていたエクレールの手応えが消えたことにオルゴールが戸惑う。

 エクレールの動きが止まったから、ではない。

 耐爆スーツに縫い付けた糸で動きを封じてはいたが、その『中身』の存在は感じていた。

 ――それが急に消えたとしか思えない動きだった。


「! オルゴール、マズい! 離れて!!」


 少し離れていた位置にいたジュリエッタには見えていた。

 オルゴールのすぐ横に立つ『黒い影』が現れたのを……。


「ステッチ《ア・ラ・スゴンド》!」


 ジュリエッタの言葉を疑うこともなく、すぐさまオルゴールが横へと強制的に跳び、その場から離れる。

 それとほぼ同時に、先ほどまでオルゴールが立っていた位置に『黒い影』が拳を振り下ろし……。


「嘘でしょ……!?」


 霊装同等の硬度を持つはずの空中要塞の床に大きくヒビが入り、砕け散った破片が消え去ったのだ。

 同じことをジュリエッタがやろうとしても不可能だ。《ジリオンストレングス》を使ったとして、やれても一撃入れることしかできない。

 だというのに、『黒い影』はそれをいとも簡単に行っている。

 もしもオルゴールが避けなければ、たった一撃で倒されてしまっていたのは容易に想像できた。


「こいつは……」

「マサカ、エクレール……のですカ!?」




 はユニット・ピースとしては『異形』としか言いようのない存在だった。

 全体としては細身の人型であることは間違いない。ユニットとしてはかなりの高身長なのは耐爆スーツを着ていた時のエクレールと一致している。

 だが、肉体は全く人間のものではない。

 全身は黒く、まるで炎のように揺らめいている。

 ――否、それは『炎』ではなく『渦』だ。

 形のない黒い煙のようなものが、絶えず渦巻いているのだ。

 無数の渦が人型となっているもの――それこそが耐爆スーツの中に隠されていたエクレールの真の姿だった。


「! そうか……『魔眼』か……!」


 エクレールの胸元にわずかに見えていた赤い光。

 それにジュリエッタは見覚えがあった。

 直接目にしたことはなかったが、天空遺跡でアリスが目撃している。クリアドーラが魔眼を体に取り込み、異常なパワーを発揮していたことを。

 おそらくそれと同じようなことが起きているのだろう。

 自分では動けなかったはずのエクレールは、今魔眼の力によってのだ。


 ――……ヒルダか……!


 最後の瞬間、ヒルダが何事かつぶやこうとしていたのはオーダーを使おうとしていたのではない。

 エクレールに埋め込まれた魔眼の起動を行っていたのだろう。

 その結果、エクレールはヒルダの力を借りずとも魔眼によって動く――ある意味『暴走状態』になったのだと考えられる。


「スレッドアーツ《キャプチャーネット》!」


 異様な見た目ではあるが、だからと言って放置するわけにもいかない。

 ジュリエッタは変わらず走り、その間に再度動きを止めるためにオルゴールが糸で拘束しようとする。

 しかし、糸はエクレールに触れた瞬間に千切れてしまう。


「な、ナゼ……!?」

「オルゴール、そいつに近寄らないで!」


 魔法も何も使っていない、だというのに空中要塞を破壊したことからもエクレールの肉体は何かがおかしい。

 正体はわからずとも、それがジュリエッタたちにとって危険なこと、そしてということだけはわかる。

 現に今も、注視しなければわからないが、エクレールの立っている床が少しずつ削り取られていってるのだ。


「触ることもできない……!? そんなの、どうやって倒せばいいの……!?」


 ほとんど全てを出し切ってようやくヒルダに勝利したジュリエッタたちの前に、最後の、そして最大の敵が立ちふさがる――




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 『天は二物を与えず』――とは言ったものの、この『ゲーム』におけるシステムへと二物を与えたのだった。

 ギフト――それは『贈り物』という意味に違わず、ユニットへとシステムが与える贈り物と呼べる存在だ。

 それを存在……それが彼女、エクレールなのだ。

 正しく二物を与えられたと言える。

 ただし、その反面『負の贈り物』をもエクレールは受け取っていた。

 彼女は類稀なる戦闘能力を持つ反面、ギフト以外の一切の特殊能力、すなわち魔法を与えられなかったのだ。


 エクレールがもらったギフト、一つは【擬態者シミュレーター】――周囲の景色に自動で溶け込み、迷彩をかける能力だ。

 魔法が使えないエクレールの戦法は、恵まれたステータスによる『ごり押し』かあるいはジュリエッタのようにテクニックを駆使して戦うことしかなかった。ある意味、エクレールは『ゲーム』の基本要素である『ハンティングゲーム』の仕様に一番沿ったユニットであったといえる。

 ギフト実装後は、今まで通りのごり押しに加え、【擬態者】によって姿を巧みに隠しながら戦うというやり方もとれるようになっていた。もっとも、モンスターの超感覚の前に【擬態者】は容易に見破られることが多かったのだが……。


 もう一つのギフト、これが問題だった。

 エクレールの本体だった少女は、およそ戦いに向かない性格であった。

 モンスターといえども傷つけるのは躊躇し、ましてや他のユニットとも争うことを嫌っていた。

 もちろん必要に迫られれば戦うし、いざ戦いになれば魔法を使わずとも相手を打ち砕くことができるほどの性能を持っていた。

 そんなエクレールが『ゲーム』に敗北した理由こそが、もう一つのギフトなのである。


 ギフトの名は【抉潰者スクィーザー】――服型霊装を脱ぐことによって発動する能力だ。

 効果は単純。エクレールの肉体に触れたありとあらゆるものを渦が巻き込み、すり潰して消滅させるというものである。




 とあるモンスターに追い詰められたエクレールが【抉潰者】を使用したことがある。

 ……その結果は凄惨なものであった。

 血しぶきすら【抉潰者】は巻き込み、肉も骨もすり潰してゆく。

 徐々に弱まっていく苦痛の悲鳴を聞き、エクレールだった少女の精神は耐え切れずついに決壊した。




 結局、これ以上は無理だと少女はあきらめ、相棒たる使い魔もそれを認め、エクレールというユニットはゲームオーバーとなった。

 誰よりも強大な力を持ちながらも、それを揮うに足る精神を持っていなかったがための終わりを迎えたのだ。

 本来ならばそれで終わり――エクレールの存在は『ゲーム』からは消え、忘れ去られるのを待つだけになるはずだった……。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




「……ダメだ、近づけない!」


 暴走するエクレールは本能のままに暴れ続ける。

 彼女が動くたびに空中要塞の床が抉れ、徐々に崩壊していっているようにジュリエッタには思えた。


 ――……流石にルールームゥを落とすとは思わないけど、全然安心できない……!

 ――というより、このままじゃジュリエッタたちがやられる……!


 とにかく今のエクレールはヒルダ以上に手に負えない状態だ。

 オルゴールの糸も触れただけで消滅してしまうし、下手に糸を出し続けるとオルゴールを巻き込むように引っ張られてしまう恐れがある。

 ジュリエッタも攻撃の手段がない。仮にライズが使えたとしても、触れただけで肉体を削り取られてしまうだけだろう。

 ヒルダ以上にありえない能力、としか思えない。

 弱点……というか動きを止めるために魔眼を狙うというのもあったが、既に魔眼はエクレールの渦の中へと埋もれて見えなくなってしまっていた。


「ジュリエッタ、どうすレバ!?」

「わかんない! でも、こんな能力……絶対に長続きしないはず!」


 唯一の希望……とも呼べない希望的観測は、『絶対無敵の能力は存在しえない』という点だ。

 ベララベラムの最終形態『ゴースト』も、あらゆる攻撃を受け付けず一方的に攻撃することができるというとてつもないものであったが、あれも後にガブリエラたちが語ったところによれば『時間制限』があっただろうということだった。

 同じようにエクレールの【抉潰者】も時間制限がある……と推測はしている。

 ただ、それが一体どれくらい時間なのかがジュリエッタにはわからない。

 一分か、五分か、それとも十分はかかるのか……いずれにしても、時間が来るまでは逃げ回ることくらいしかやれることがない。

 そして、その逃げ回るということ自体すらも難しいということを、ジュリエッタたちはすぐに思い知ることとなる。




 ジュリエッタたちを狙うものの、ふらふらとした動きだったエクレールが変わる。


「……?」

「何か、来る……!?」


 その場で動きを止め、ジュリエッタたちの方へと視線――すでに『顔』がないため本当に目があるのかはわからないが――を向けたエクレールが、深く体を沈み込ませ、


「ヤバい、逃げて!」


 空中へと高く飛び上がり、上からジュリエッタたちのいた位置へと強襲を仕掛ける。

 その一撃は何とか回避できたものの、あまりの威力に足場となっていた空中要塞に大きく亀裂が走り……。


「!? う、うわっ!?」

「ジュリエッタ!」


 空中要塞の『首』に当たる部分が一撃で崩壊していった……。

 ちょうど首の先の方へと避けたジュリエッタがその崩落に巻き込まれ、地上へと落下しそうになるも、ギリギリで糸を伸ばしたオルゴールによって助けられる。

 しかし危機は去っていない。

 エクレールも崩落を避け、オルゴールのすぐ傍へと移動していたのだ。


「こ、このままでハ……」


 エクレールはすでにオルゴールの方へと視線を向けている。

 しかしジュリエッタはまだ引き上げられておらず、オルゴールもこの場で動くことができない――ここでジュリエッタを見捨てるという選択肢は彼女にとってはありえない。

 ジュリエッタも自力では空中要塞に戻ることは無理だ。メタモルで空を飛ぶには『肉』が足りないし、ライズはまだ使えないので宙を駆けることもできない。

 かといってここでオルゴールがやられれば、結局ジュリエッタと共倒れするだけである。


「ウィーヴィング《修羅戦甲ヘクトブレイサー》!」


 ジュリエッタは見捨てない、それは論外。

 だからせめてもの抵抗にと六本の腕を作り出し、エクレールへと振るう。


「……無敵、ですカ!?」


 糸で作ったとは言え、糸の塊であるため硬度はそれなり――どころか霊装に近いくらいに硬い。特別な効果はなくとも、単純な『鈍器』としては十分な威力を持っている。

 ……はずなのに、六本の腕はエクレールに何のダメージも与えられていないように見えた。

 触れた瞬間に糸の拳が巻き込まれ、削られていってしまっている。

 『無敵』――確かにそうとも見える能力だ。


「――デモ、これでひとまず良しデス」


 オルゴールの狙いはエクレールへのダメージではなかった。

 エクレールに巻き込まれる糸に、ジュリエッタを掴まえた糸を混ぜ込んでいたのだ。


「……危ないところだった……!」


 高速で巻き上げられる糸のおかげで、ジュリエッタは素早く空中要塞へと戻ることができた。

 タイミングがもう少し遅ければ、完全に糸が巻き込まれ切れて落下してしまっていただろう――そうならないように、《修羅戦甲》を作ってその中に糸を含めていたのだが。


「オルゴール、とにかく走って!」

「ハイ!」


 無事を喜び合う余裕も、エクレールと向き合っている暇もない。

 二人はすぐさま『ゴエティア』の方へと向かって走り始める。

 それをエクレールが追いかけてくる。

 もちろん、エクレールを無視してアリスたちの手助けに向かおうとしているのではない。

 彼女たちが戦っていたのは空中要塞の前方――『鳥』の首に当たる部分であり、足場がほかに比べて細くなっていた。

 今やルールームゥの肉体すら触れるだけで破壊できるエクレールと戦うには、あまりに頼りない足場である。

 少しでも広い場所でなければ、先ほどのように足場を崩されて地上に落下してしまう恐れがあった。


「くそっ、早い!?」


 広い場所へと移動したいが、後ろからエクレールが猛スピードで追いかけてくる。

 耐爆スーツを纏っていた時から見た目にそぐわぬ素早さではあったが、今はそれ以上……細身の見た目通りの速さだ。

 さすがにクロエラやライズを使ったジュリエッタほどではないが、それでも全力で走らなければ追いつかれてしまうくらいには速い。


「攻撃モ通じまセンし、どうすれば……」


 エクレールの能力に『時間制限』があることを信じ、逃げ続ける以外にやれることがない。

 しかも『時間制限』が本当にあるのかどうかもわからない……仮にあったとして、逃げ続けられるかどうかはかなり怪しい。

 最悪なのは、ここでジュリエッタたちがやられ、エクレールが自由に動き回れるようになることだ。

 ヴィヴィアンたちの方に向かわれたら一気に戦局は傾くだろうし、アリスの元に向かわれるのだけは絶対に避けなければならない。


「……ここで倒すしかない、か……」

「倒ス……でもどうやッテ……?」


 最善はエクレールを倒すことだが、今のエクレールは触れるだけで相手を削り殺すことができる状態だ。

 遠距離攻撃も果たして通じるかどうかは怪しいし、二人はともに遠距離攻撃の手段を持ち合わせていない。

 何よりもジュリエッタはライズがまだ使えない状態だ。今のエクレールのスピードを上回ることができない以上、たとえメタモルを使っても対抗することは難しいだろう。


 ――……どっちにしても、ヒルダは『必勝』の布陣を敷いていたのか……。


 ジュリエッタはヒルダの考えの全貌をようやく悟る。

 仮にエクレールを先に倒そうとするならば、危なくなったところで【抉潰者】を発動させて相手を倒せばよい。

 ヒルダを先に狙うのであれば、ピースたちを犠牲にパワーアップして戦う――それでも負けるようなら、残ったエクレールが【抉潰者】で後始末をすればよい。

 どちらか一方を先に倒す、ではダメだったのだ。

 やるならば両方を同時に倒す――それ以外は全てヒルダの術中だったのだ。

 もっとも、ヒルダとエクレールを同時に倒すというのはほぼ不可能なことではあったが……。


「とにかく、逃げ回りながら試すしかない! メタモル!」


 空中要塞を破壊した一撃はパワーだけでなくスピードも完全に上回っていた。

 その名の通り、正しく『雷光エクレール』の如き一撃だ。

 恐ろしいのは特に魔法も使った形跡がないことだ――実際、エクレールは一切の魔法を持っていないのだが、それはジュリエッタたちの知るところではない――無制限に、肉体の限界が来ない限りは何度でも使えると思った方がいいだろう。

 そんな相手に、いつまでも逃げ続けられるとは思えなかった。

 『時間制限』を期待しつつも、それでも戦えるうちは戦う。そうジュリエッタは決断した。

 背後から追いかけてくるエクレールへと向けて、残り僅かな『肉』を使い火龍を作り炎弾を浴びせかける。


「……そうデスね、試すだけ試さないトわかりまセンね!」


 続けてオルゴールも《修羅戦甲》を再度作り出し、後ろへと放つ。


「■■■――ッ!!」


 しかし、そのいずれもエクレールは避けることも受け止めることもせず、ひたすらに前へと出て潰していく。


 ――ダメか!? 全然効いてない……!?


 形のない『炎』ならば、と少し期待していたのだが、それすらも通じていないように思えた。

 この調子では電撃触手も竜巻触手も通用しないだろう。《クラウソラス》ですら触れただけで削り取られてしまいかねない。それどころか、下手に近づけばジュリエッタの肉体ごと削られてしまうだろう。


「広場までもう少しデス……!」


 いずれにせよ、落下の心配の少ない場所でなければまともに戦うことも逃げることもできない。

 二人は背後へと攻撃を仕掛けて試しつつ、必死に走る。


「……!?」


 と、その時ジュリエッタはあることに気づいた。

 ほんの一瞬、エクレールの動きが止まった。

 また飛び上がっての強烈な一撃をする予兆か、と思ったが違う。一瞬足を止めたエクレールだったが、そのまままた追いかけ始めてきた。


 ――……今のは、もしかしたら……!?


 火龍の炎を浴びせかけた位置に、たまたま糸の拳が当たった。

 エクレールが動きを止めたのはその瞬間だったのだ。


 ――そうか……わかった! でも……これじゃ……!


 二つのことをジュリエッタは理解した。

 一つは、エクレールは確かに触れたもの全てを削り取って無効化はしているが、だからといって『無敵』ではないということ。

 何かを削り取っている最中であれば、その箇所に追撃を仕掛けることは可能なのだ。そして、追撃でダメージを与えることは可能だということに。

 ただ、もう一つは絶望的な事実だった。

 それは、体力が削れる状態ということは時間制限で自滅する可能性が低いということである。

 ベララベラム・ゴーストの場合だと、クロエラの《ゴーストハント》という例外のおかげで時間制限よりも早く倒すことができたが、これは文字通りの『例外』だったろう。

 エクレールの場合はやろうと思えば特殊な魔法を使わずとも体力を削ることは可能だ。

 ということは、『ゲーム』のシステム上ペナルティとなる時間制限を設ける理由は何もない。


「拙い、かも……どうしてもエクレールを倒さないと……!」


 延々とエクレールが動き続けるのであれば、想像した最悪の事態には容易になってしまう。

 ここで倒さなければ、そう遠くないうちに全滅してしまうことになるだろう――それよりも早く空中要塞が墜落してしまうかもしれないが、どちらにしてもジュリエッタたちにとって『敗北』が確定してしまうことになる。

 ダメージ覚悟でいけば攻撃することは可能だろう。

 ただ、相手に与えるダメージよりも受けるダメージの方が圧倒的に多く、エクレールを倒しきる前に自分たちの体力が尽きる方が速いと思われる。

 どうにかしてエクレールを倒す方法はないか、走りながら必死に考え――この局面でとれる方法は一つしかないと結論を出す。

 ライズが使用可能になるまでまだ少しかかる。それを待っていられない。


「オルゴール、さっきの『ステッチ』ってジュリエッタにも使える!?」

「使えマス!」

「おっけー! それじゃ、ジュリエッタにステッチして!」

「……? わ、わかりまシタ!」


 ジュリエッタの考えはわからないが、オルゴールもノーアイデアだ。

 ならば、最後までジュリエッタに従おう――そう思い、言われた通りの刺繡を走りながら施す。


「よし、後はジュリエッタの合図に合わせてステッチを発動させて!」

「そ、それは構いまセンが……」


 指定された刺繍の内容から、徐々にオルゴールはジュリエッタのやろうとしていることを理解し始めていた。

 ……確かに『無敵』にしか思えないエクレールを倒すには『それ』しかないとは思える。

 だが――


「……お願い、オルゴール。あいつを倒すには、もうこれしかない」

「…………」


 戦局と、ラビたちの作戦と、己の『役割』と……諸々の事情を考え、オルゴールはうなずくしかなかった。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 触れるもの全てを破壊するエクレール――その能力【抉潰者】は、ジュリエッタが想像した通り

 それはやはり推測通りに、『攻撃自体は通じるから』が理由である。

 だから【抉潰者】を発動させたエクレールを倒すには、ダメージ覚悟で攻撃を続けるか、あるいは遠距離から魔法を叩き込み続ける必要がある。

 理想は、かつてジュリエッタが『冥界』で出会ったアビゲイルのような能力での攻撃だろう。逆にジュリエッタやオルゴールのようなあまり遠距離攻撃が得意ではないユニットだと、手も足も出ないで一方的に蹂躙されることになる。


「■■■――ッ!!」


 今、エクレールは『魔眼』の力によって暴走している状態だ。

 マイナーピース故に己の意思や思考能力を持っていないが、存在するだけで敵を倒せる能力であればそれらは必要ない。

 敵も味方も関係ない。

 目に映るもの全てに機械的に襲い掛かる破壊の権化と化したエクレールは、自分の目の前にいる二人へと襲い掛かろうとする。

 ……それを始末したら、次はどうするのだろうか? 『魔眼』に操られるがまま、空中要塞にいるすべての存在を抉り潰すまで動きを止めないのだろう。あるいは、仲間であるルールームゥそのものを破壊するまでか……。


「行くぞ、エクレール!」


 背を向けて逃げていた『敵』のうち、片方が振り返り自らエクレールへと突っ込んできた。

 エクレールは何も考えない。

 ただひたすらに、自分に向かってきた――つまり自分に距離が近い相手を優先的に始末しようとするのみだ。


「これが、ジュリエッタの最後の攻撃!」


 クラウソラスを突き立てようとしても、それすらも【抉潰者】は無効化する。

 たとえ霊装での攻撃であっても同様の結果になっただろう。ましてやジュリエッタの魔法で作り出した剣であれば、エクレールの能力を突破できる道理はない。

 仮にライズが使えたとしても結果は変わりない。

 メタモルで再生しながら打撃を繰り返す……という戦い方こそが唯一ジュリエッタにできる有効な戦い方であったろうが、それをするだけの『肉』はもはやない。

 だから、《クラウソラス》すらも通じないとわかり逃げようとするジュリエッタを掴まえ、そのまま肉体を削り殺せばエクレールの勝利……となる。

 それは間違いではない。


「こ、のぉぉぉぉぉっ!!」

「■■■――ッ!!!」


 ここでジュリエッタが予想外の動きをした。

 突き刺そうとした《クラウソラス》は【抉潰者】によって切っ先からどんどんと削られていっている。

 だというのにジュリエッタはのだ。

 もちろんライズを使っていないジュリエッタのパワーではエクレールの突進を押し返すどころか止めることすらできない。

 それでもあきらめずに、ジュリエッタはひたすらに前へと出ようとする。

 ……もしもエクレールがマイナーではなくメジャーピースであったとしたら、ここに何らかの『意図』を感じ警戒したかもしれない。あるいは、己の絶対の力を信じてそのまま押し切ろうとしたかもしれない。

 いずれにせよ、ジュリエッタの無駄な行動に戸惑いを見せることなく、両腕を伸ばして直接ジュリエッタを掴もうとするエクレール。


「オルゴール、お願い!!」


 そこでジュリエッタが叫ぶ。

 と同時に、


「……ステッチ《グラン・ジュテ》!!」


 ジュリエッタの肉体に施した刺繍魔法ステッチが発動。


「■■■――ッ!?」


 突然ジュリエッタの動きが加速――エクレールをありえない力で押し出す。

 前へ大きく跳べグラン・ジュテによって強制的に前方へとジュリエッタによって、エクレールまでもが後方へとそのまま押し出されてゆく。

 確かにエクレールに触れたらそのまま削られてしまう。

 が、先にジュリエッタが推測した通り、削るのは一瞬で行われているのではない。速いことは速いが、触れたものを一瞬ですべて削ることはできていない。

 例えるならば電動の鉛筆削りだろうか。削るスピードよりも鉛筆を押し込む力とスピードが上回れば、電動鉛筆削りは後ろへと押されることになるのと同じである。

 《クラウソラス》が削られるのは仕方がない。

 だが、《クラウソラス》全体が削られるよりも早く、ステッチによってジュリエッタごとエクレールを押し出すことはできる。


「落ちろぉぉぉぉぉぉっ!!」


 その狙いは、だった。

 もはや打撃で倒すことは不可能。

 しかし体力自体は削ることは可能。

 故に、高空を飛行しているこの要塞から突き落とし、その落下ダメージで倒そうとしているのだ。

 ステッチでの移動は魔法による疑似強制移動だ。パワーもなにも関係ない。

 エクレールの巨体が押され、空中要塞の淵まで追いやられる……が、そこで踏ん張り今度こそジュリエッタを掴もうとする。


「メタモル!」


 ――こうなることは予測済みだった。

 残った最後のメタモルを使い、ジュリエッタは自分の体をした。

 大部分の肉を《クラウソラス》ごと分離、エクレールへと押し付け、自分自身はそのまま後ろへ。


「オルゴール、もう一回!」

「ステッチ《グラン・ジュテ》!」


 そして、分離した肉を『膜』として、その膜へと向けて再度ジュリエッタが前へと大きく跳ぶ。


「■■■……!!」


 二度目の衝撃にはエクレールも耐え切れず、ついにその巨体が空中要塞から外へと押し出される――




 どのようなステータスを持っていたとしても、上空から地面へと落下して叩きつけられたとしたら無事には済まない。

 飛行能力、あるいは飛行魔法があれば話は別だが、そうでない場合は普通の人間同様墜落死することは避けられないだろう――もちろん落下する高さにもよるであろうが。

 雲の上を飛ぶ《バエル-1》の高さから落ちればいかなる生物も耐えることは不可能だ。

 加えてエクレールは2種類のギフト以外に特殊能力はもっていない――当然飛行能力も持っていない。

 よって、ジュリエッタの狙い通りこのまま落下すればエクレールは倒れることとなるだろう。こうする以外に倒す方法は存在しない……と思われる


「■■■!!」


 

 押し出されたエクレールだったが、腕を伸ばし《バエル-1》を掴もうとする。

 もちろん掴んだ瞬間に削れてしまうのだが、ほんの一瞬でも掴めれば十分戻ることは可能だ。

 そして《バエル-1》に戻りさえすればもはやジュリエッタたちに為す術はなくなる。

 もはやメタモルで切り離しすることもできないだろう――仮にできたとしても、エクレールを戻ってこれないくらいに弾き飛ばすのはどちらにしても無理だ。




 そして、エクレールの腕が《バエル-1》の淵へと届こうとした時だった。


「ライズ《ジリオンストレングス》!!」


 躊躇うことなくジュリエッタは復活したばかりのライズを使い自己を最大強化。

 《バエル-1》へとぶら下がろうとしたエクレールへと飛び掛かる。

 触れた瞬間にジュリエッタの拳が削られるが、それでも構うことなく拳を叩きつける。


「■■■……!」

「落ちろ、エクレール!」


 ――馬鹿な!?


 もしエクレールが言葉を話せたら、そう発していたかもしれない。

 ジュリエッタは、自らも《バエル-1》から飛び降り、空中のエクレールに殴りかかってきたのだから……!

 一度の体当たりでエクレールを落とせるとは考えていなかった。

 だから、《バエル-1》に戻ってこようとする動きを見逃さず、ジュリエッタは自らの体を使ってそれを阻もうとしていたのだ。そこまでがジュリエッタの考えだったのだ。




 エクレールの伸ばそうとした手は虚しく宙を掴み――


「……今度こそ、終わりだ、エクレール」


 ジュリエッタともどもエクレールは真っ逆さまに地上へと向かって落下していった……。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




「ジュリエッタ……そんな……」


 こうなることは《グラン・ジュテ》をジュリエッタに施してほしいと言われた時に何となく予想はしていた。

 しかし、そうならないように糸を伸ばして助けることはできたはずだった。

 ……なのにオルゴールはジュリエッタを助けられなかった。

 だ。


「ワタクシの判断は間違ってイタのでショウか……」


 ヒルダとの戦いの最中、オルゴールはジュリエッタが勝てないのではないかと諦めかけた時があった。

 その直後、《バロール》と己の技を以てヒルダの動きを見切りジュリエッタは勝利することができたが……。

 ジュリエッタを信じ切れなかったことをオルゴールは恥じた。

 だから躊躇ってしまった。

 エクレールを完全に落とすために、あえてジュリエッタは自分も飛び降りて攻撃をしたのだから下手に手を出さない方がよいのではないかと躊躇い、その結果ジュリエッタも落下してしまった。

 もはやオルゴールの糸を伸ばしたところで届かないし、助け出すことは不可能になってしまっている。


 


 自分の判断でそうしてしまった、その思いが拭えない。

 実際のところジュリエッタがオルゴールの救助を待っていたかはわからない――確実にエクレールを倒すために、覚悟の行動だったのかもしれない。


「ワタクシはこれからどうすれば……」


 彼女は『役割』のためにこの世界へとやってきた。

 けれども、ナイアと戦っているのは彼女自身の意思によるものだ。

 ……その意思の大部分にジュリエッタが関わっていることについては、果たして本人が自覚しているかどうかは怪しい。

 そんな状態であったことに加え、自分がジュリエッタを見殺しにしてしまったという思いから呆然としてしまっていた。




 だが、状況はオルゴールに考える時間を与えなかった。


「!? 今のハ……!?」


 空中要塞全体が大きく震える。

 ルールームゥが自ら動いた感じではない。

 何か強い衝撃で揺さぶられたような……激しい『揺れ』だった。

 振り落とされるほどではないが、連続での揺れは確実に続いている。


 ――どこかの戦闘の影響……?


 そうとしか考えられない。

 一人のユニットピースが持つにはあまりに強大な力であるこの空中要塞をも揺るがす戦いがどこかで行われているのだ。


「…………行かないト……!」


 どこが揺れの原因かはわからない。

 しかし、ここで呆けて時間を浪費することだけは許されないことだ、とオルゴールは冷静さを取り戻す。

 エクレールを倒すためにはアレしかなかった――時間をかければもっと良い倒し方はあったかもしれないが、疲弊しきったジュリエッタたちにはあれが精一杯だったろう。下手に時間をかければ、エクレールに倒されていた可能性が高い。

 戦いはまだ終わっていないのだ。

 理由や思惑はどうあれ、自分から望んで参加した戦いなのだ。ならば、動けるうちはラビたちのために動くべきだろう――そうオルゴールは考え、中央塔『ゴエティア』へと向かう……。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 ――……これでエクレールも倒せる……。


 オルゴールがジュリエッタを引き上げようとしないのを確認し、ジュリエッタは自分の意図が伝わっていたことを確信する。

 ……オルゴールが実際にどう考えていたのかはジュリエッタの知るところではない。

 《ジリオンストレングス》で強化し、自分の体を犠牲にしてエクレールを空中要塞から完全に落とそうとはしたものの、思った以上にエクレールはしぶとかった。

 結局、両腕と右足を失うまで攻撃を続けなければ完全に落とすことはできなかったのだ。

 自分よりも先に地上へと落下してゆくエクレールを見て、今度こそ完全に戦いが終わるであろうことを確信した。


 ――……やれやれ、結局こうなったか……。


 いつの間にか《ジリオンストレングス》の効果も切れ、魔力が尽きたのだろう。千夏の姿に戻ったことに本人も気づかないまま、彼もエクレールを追うように落下してゆく。

 失った手足も元には戻っているが、もはや魔力を回復させたところでどうにもならない。

 ライズが再び使えるようになるより早く、地上へと到達してしまうことは明らかだ。


『……アニキに俺のリスポーンはしないでいいって伝えておいてくれ』


 少しだけ迷った後、千夏はウリエラとサリエラの二人にだけ遠隔通話で一方的に言い放つ。

 ラビ本人に直接言いたかったが、おそらく『ゴエティア』内部と外部では別マップ扱いなのか遠隔通話が通じないのだ。

 ヴィヴィアンとクロエラはそれぞれの敵とまだ戦っているかもしれない――事前に三人は互いに連絡はしないと決めていた。集中を乱すことになるかもしれないからだ。

 地上で戦うガブリエラたちも同じ条件ではあるが、メインとなるのは間違いなくガブリエラだ。ウリエラたちなら遠隔通話を聞く余裕もあるだろう。

 ……もっとも、ラビに連絡が取れないのはウリエラたちもきっと同じなので、伝わるかどうかは微妙なところだが。

 何か反論を言いそうな気配を察し、千夏は遠隔通話を打ち切る。


「……悪ぃな、。負けないって言ったのにな……ま、これで勘弁してくれや」


 この結果は勝ち負けでいうならば、『引き分け』……といったところだろう。

 大局的に見てラビたちの勝ちにつながるのか負けにつながるのかどうかまでは千夏にはわからない。

 ただ、ナイアとの戦いに最も加わってほしくない最大の障害ともいえるヒルダとエクレールを仕留めたのだ。戦果としては誇れるものであるといえるだろう。

 臨んだケジメをつけられたかどうかさえもわからない結末ではあったが、少なくとも最後に自分の『見栄』を外して本当の全力で戦うことができた。そしてその相手がヒルダであったことには満足している。


「あとは、任せた……」


 その言葉を最後に、千夏の意識は闇に閉ざされる――

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