<検閲済み>
検閲――再開
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「
”! ノワールたちがそうなんだ!?”
意外――ってわけでもないな。
ノワールたちの得意技であるジェット噴射でなら、宇宙空間にある『ラグナ・ジン・バラン』中枢へと突入することが確かに可能だろう。
「彼女たちは元々は人間だったの。彼女――というものの、実際の性別はバラバラだったけどね」
”元人間!?”
それは意外な事実だった。
けど、どこかですんなりと受け止める自分がいるのも事実……おそらくそれはこの三日間一緒に過ごしていて感じた、ノワールの『人間くささ』が原因なんじゃないかなって思う。
……果たして彼女たちが人間だった頃の記憶を持っているのかどうか……いや、持っていようがいまいが関係ないか。今は今、一緒にすごしたノワールが私にとってのノワールだ。
「『ラグナ・ジン・バラン』の侵攻が始まった当初、各国で激しい戦闘が繰り広げられたわ……。
その中でも特に勇猛で、死して尚侵略者を許さぬ護国の鬼たち――それがノワールたちインペラトール……。
D■■の人間が死ぬ時に結晶化することは話したわよね?」
”う、うん……え、まさか……?”
「そう――護国の鬼たちは結晶と化しても戦うのを止めなかった。そして、その姿は次第にドラゴン――この世界における創造神の遣いへと変貌していった」
……どうやらD■■における御使い――私たちの世界なら『天使』に当たるであろう存在が『ドラゴン』らしい。
そういえば『神の似姿として人間を創った』って神話にあったけど、この世界の人間は半竜半人の姿をしている。ってことは、創造神アストラエアもそういう姿で伝わっているんだろう。
だから私たちの世界では邪悪、悪魔の化身とされるドラゴンこそが、神の御使い――この世界における正義と善の象徴になっているのだろう。
「人の姿を捨て、ドラゴンとなったインペラトールたちの活躍によって『バランの鍵』による封印は成功し、この世界は一時の平和を得ることができたの。
そして生き残ったインペラトールたちは『バランの鍵』を守るため、神樹を使って『天空遺跡』――あなたたちも行ったあの『封印神殿』を作ったわ」
”ん? 神樹を使って……?”
「そう――200年前、
――そういえば、と思い出す。
最初に『封印神殿』へと赴いた時にアリスが山を見て『樹っぽい』って感想を言ってたっけ。
それに『
――普通ならば出来ぬが、神樹の力と魔法の力を使えば可能じゃ。それは
神樹を魔法を使って持っていくのが出来るのか? という問いに対しての答えだった。
……なるほど、『過去の実験』の産物があの『天空遺跡』というわけか……。
「突然変異としか言いようのないインペラトールたちを、私の■■を使って……その、改造したのが今のインペラトールね」
”……”
是非は問うまい。そうしなければならないくらい、この世界は追い詰められていたのだから。
「インペラトールの構成を利用して簡易的なものを人工的に創ることにも成功したわ。もしかしてあなたたちも見たかしら? ドロドロの粘液みたいなもので、岩や土を自分の身体として操るものなんだけど……」
”あー……戦ったことあるわ、それ”
私たちが初めて『天空遺跡』に挑んできた時にブランと共に立ちはだかってきた正体不明の『ゴーレム』のことだろう。
そうか、あれもインペラトールの一種なのか……結晶の肉体を持たずに、周囲のものを肉体と化すようになった、いわばインペラトールの中身だけの存在なんだろう。
“それで思い出した。ついでに聞いておきたいんだけど、私たちって半年くらい前に一度『天空遺跡』に挑んでいるんだよね。タイミング的にはピッピたちが行った後だと思うんだけど……あれってピッピがクエストを開いたの?”
「え……!?」
何の気なしに聞いてみたが、思った以上の反応をピッピは見せる。
え、ちょっと何その反応?
「半年前……って、向こうだと9月くらい?」
”えっと、そうだね。9月の終わりだったかな?”
確か10月にはなっていなかった気がする。マスカレイダー
それはともかく、私の言葉を聞いてピッピは本当に驚いているようだ。
「そんなバカなこと……私、撫子と一緒に行った時以外だと、今回あなたたちを導くため以外では『ゲート』を開いていないわよ……!?」
そう言われても……実際に私たちは『天空遺跡』に行って、ノワールたちと会ってたし……。
そこでノワールから『黒い石』を貰っていたからこそ、『封印神殿』最奥で『顔のない女』の協力を得られたんだし……。
その辺りのことを説明すると、ピッピは難しい表情で唸る。
「……わけがわからないわ……万が一にもヘパイストスが『ゲーム』に紛れ込んでいた時のために、厳重に『ゲート』は管理していたはず……」
”うーん……?”
二人して唸るものの答えなど出てこない。
……何か気持ち悪いな……結果として助かってはいるんだけど、まるでそれを見越したかのようにピッピたちの思惑を超えた何かに導かれているようで……。
結局、この件については『何らかの不具合でクエストとして出て来てしまった』と結論付けるしかなかった。
ピッピにわからないのであれば猶更私にはわからないし……。
もしもあの時私たちがクエストを選ばなければ――あるいは、私たち以外の、特にクラウザーやマサクルがクエストを選んでしまっていたとしたら……果たしてどうなったであろうか。
今回にしてもオルゴールというピッピの想定外のユニットが紛れ込んでしまったのだ。
彼女としては危険は可能な限り避けるために理由もなくクエストを開くとは思えないし……。
でもこんなピンポイントの不具合ってのも……ちょっと信じがたいんだよな……。
”もう一つ、これはヘパイストスには直接関係ないことなんだけどさ”
「ええ、折角の機会だもの。答えられることなら答えるわよ」
……ついでにと思って色々気になっていたあれやこれを聞こうと思ったけど、声を掛けてからピッピが答えられるかどうか微妙な問題だと言うことに思い至ってしまった。
……まぁいいや、聞くだけ聞いてみよう。
”
「……――」
おろ? ありすの名前を出した瞬間、ピッピが真顔になったぞ……?
いや、いい。とにかく聞いてみよう。
”どうもありすだけっぽいんだけど、A■■なのにも関わらず『ゲーム』のモンスターが見える時があるみたいなんだよね……実際、ありすと一緒に私や桃香も見たことあるし……。
これって何かわかる?”
ダメ元で聞いてみたんだけど、意外にもピッピは真剣な表情で逆に私に尋ねて来る。
「……それは、あーちゃんがいる時に見えているもの?
”え、うーん……ありすがいる時、かな?”
どちらとも言えない、とも思ったけど『幽霊団地』の一件を考えればどちらかと言えば『ありすが見えている』だと思う。この辺りは前に考察した通りだ。
「…………そう……」
”何かわかるの?”
ダメ元だったけどこれは――思った以上の成果が期待できる?
……と思ったけど、ピッピは首を横に振る。
「……可能性としては幾つか挙げられるけど、全く確証がない――憶測にもならない想像でしかないわね……」
ふむ……ピッピは、だから迂闊には語れないと言外に含んでそう言っているのだろう。
気持ちは物凄くわかる。というか、下手に断言しないのはむしろ好感が持てる。
千夏君や楓たちもそうだけど、確証が得られない限りは断定しないという姿勢は私は物凄く共感できる。ていうか、私のそのタイプだと思うし。
……反対にありすや桃香は感覚的に『合っている』と思ったらそれを前提に突き進む傾向があるんだよなぁ。まぁ大体においてそういう感覚は信じてもいいとは思うんだけど――失敗した時のことを考えると、やはりもう少し慎重になって欲しいもんだと私は思う。ま、この辺りはあの子たちがもうちょっと大きくなったら落ち着くんじゃないかと思っているけど。
……話が逸れた。
”いや、その想像でもいいよ。何も思い当たらないより、ある程度の知見のある人の想像でもいいから聞きたい”
でも、今は確証のない想像レベルでも情報が欲しい。
――これでピッピが『全くわからない』と答えたのなら私も突っ込まなかったんだろうけど……うーん、そういう意味ではピッピって胡散臭い黒幕ムーブする割にはものすごく素直な動きをしているんだよね……。
「……本当に確証はないわ。でも、そうね――感覚的には私としては『正解』に近いんじゃないかとは思っているわ。いずれにしろ、本当のところは――きっとプロメテウス様にしかわからないでしょうね、A■■の話になるし」
”ふむ? ということは――もしかしてプロメテウス絡みってこと?”
「想像ではね。
…………あーちゃんは、おそらく――
”……!!”
「もちろん、あーちゃんがD■■の巫女と同じく中身が私――■■■■■■のようにプロメテウス様であると言っているわけではないわよ? アバターにも幾つか種類があるからね……私のように一つのアバターしか使えないこともあれば、いざという時に備えてアバターの『バックアップ』を複数用意していることもある……アバターも人間に限った話ではないし、複雑な生き物であればあるほど、アバター製作のコストと世界との辻褄合わせに手間がかかるわ。
プロメテウス様がA■■に対して基本的に不干渉なのは事実だけど、だからと言ってアバターを全く用意していないとも思えない。
……私の想像では、おそらくプロメテウス様が使っているアバターは、私のような『専用の肉体を用意する』ではなく必要な時にだけ『相性のいい人間に憑依する』タイプだと思う。だから、その『相性のいい人間』が■■■■■なんじゃないかって想像なの」
”ん、んー……仮に『■■タイプ』の■■■■だとして、『ゲーム』のモンスターが見えるとかそういう特殊能力がつく可能性はあるかな?”
「むぅ……どうかしらね……意図的に付与するのであれば当然あるでしょうけど……。それだと、あーちゃんが産まれる前にプロメテウス様が『M.M.』の登場を知っていたってことになっちゃうけど……」
”その上、仮に『M.M.』の存在を知っていたとしても、A■■が選ばれるだけじゃなく桃園台が舞台になるってことまで知ってなきゃいけないことになっちゃうかー……”
ちょっと偶然が重なりすぎて厳しい推測だ。
「…………まさか『星の意志』……? いえ、これはでも既に否定されているし……」
”? それは?”
「えっと、S世界では完全に否定されている理論よ。そうね、A■■でも以前流行った『ガイア理論』というやつみたいなものね」
あー、なんか前世でもそんなのあった気がするなー。
環境問題なんかに絡めて考える分にはまぁそれなりに説得力はあったけど、実際どうなの? って言われると……個人的にはファンタジーの領域は出てないかなって感想だ。
「――あれ? いや、そんな……」
話していて何かに気付いたみたいで、怪訝そうな顔をしてまた考え込んでしまう。
”ピッピったら、全くもう……”
「あ、ごめんなさい。悪い癖ね。
えっとね、ちょっと嫌な感じに話が繋がっちゃったような気がして……」
う、嫌な感じなのか……でもだからと言って聞かないわけにもいくまい。
「『星の意志』、っていう概念は元々囁かれていたものなんだけど……それを理論として提唱したのが――ゼウスなのよ」
”! ここでもゼウスか……!”
確かに嫌な感じだ。
「そして、『C.C.』■■を用いて『星の意志』を否定したのがプロメテウス様……ゼウスが嫌う理由の一つでもあるわ」
”……むぅ、これはA■■が『ゲーム』の舞台に選ばれたのは、ますますゼウスの作為が感じられるね……”
というかほぼ決まりな感じはしている。もちろん証拠はないけど、心証としては『黒』だと思う。
「それで――私自身も『星の意志』については否定的なんだけど、もしかしたらあーちゃんは『M.M.』に対抗するためにA■■そのもの――つまり『A■■の星の意志』が何かしらの影響を与えているんじゃないか、って……そんなことを考えたのよ」
そうか……順番が
元々特殊な能力を持っているんじゃなくて、『ゲーム』が出来たからそのカウンターとして特殊能力を与えられた、その可能性があるのか。
まぁこれならプロメテウスが生きていたとしたら『星の意志』なんてものを持ち出さなくても、プロメテウスの仕業であると考えることも出来るけど……。
「いずれにしても――ごめんなさい、あーちゃんのことについては私もよくわからないわ。
……ヘパイストスの件が完全に片付いてD■■をしばらく放置しても大丈夫になったら、一度S■■で私も調査してみるけど……」
”……そうだね、できればピッピに調べてもらいたいかな?”
ゼウスのことも含め気になる。
私から調べられることなんてほぼないので、ここはピッピを頼りにしたいところだ。
もっとも、そのためにはまずD■■の問題――ヘパイストス問題をどうにかしないといけないという前提があるけど。
”ありすのことについては、A■■側からではほとんどわからないだろうしピッピにお願いするよ。もちろん私も今後も注意して見るけど……。
でさ、ありすがモンスターが見えるのにちょっと関連するんだけど、幾つか気になるモンスターがいたんだよね”
全部が全部そうとは限らないけど、少なくとも――
”ピッピは覚えているかな? 去年の……10月の終わりくらいだったかな? 桃園台に何の前触れもなく台風みたいな嵐が突然起こった時のこと”
「…………ええ、覚えているわ……」
……この反応は――ああ、やっぱり『黒』か……。
”もう一つは、私が自分の目で確認していないんだけど、お正月に地震が起きたでしょ? その時に出てきたクエストのこと”
「…………そっちも覚えているわ。
――ああ、ラビ……
”うん……ピッピがそういう反応するってことは――”
「そうね、きっとあなたの考えで合っているわ……」
……そうか……合っていてほしくはなかったけど……。
”あの二つのクエストで出てきたモンスターは、
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