<検閲済み>
検閲――再開
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”プロメテウスが行方不明……?”
マジか……それってつまり、A■■は実質フリーになっているってこと……?
「掴みどころのない方で、『C.C.』で■■た様々な■■を渡り歩いていたりで所在不明なことは多かったんだけどね……」
風来坊な■様なのか……。
「だから元々A■■にしろ他の■■にしろ、あの方の■■は『あるがまま』になっていたわ」
”■■者としてはプロメテウスが存在するけど、何も干渉しないってことか……”
君臨すれども統治せず、じゃないけどそんな感じみたいだ。
ふーむ、だとするとA■■はプロメテウスが■■たけど恣意的に変えたりはしていない、ある意味私の前世と変わりない世界ってことになるのかな。
……それはそれでちょっとほっとする情報だ。
まぁ私の前世の世界に、神様みたいな存在がいないって前提の話になるけど。
「『M.M.』の基盤となる■■がA■■だと知って、本当に驚いたわ……。
でも、A■■が関わっているにもかかわらず、プロメテウス様は『M.M.』の開発には関係していないから……」
”プロメテウスが提供したってことじゃないの?”
ずっと放置していたくせに『ゲーム』に提供するとか、そこのところはちょっと納得いかないものはあるけど。
だが私の言葉にピッピは首を横に振って否定する。
「いえ、私も疑問に思ってベータテスト前に調べたんだけど……どうもこのA■■は『■■者不在だから運営が買い取った』、ということになってるらしいのよ」
”■■者不在って……プロメテウスが放棄したってわけでもなく?”
「……可能性はゼロではないけど、ちょっと考えられないわね。A■■はプロメテウス様が最初のころに■■た■■で、かつ何も干渉しないでも奇跡的なバランスで成長した『理想の■■』だと前に伺ったことがあるわ」
”言い方は悪いけど、プロメテウスのお気に入り、ってわけか……”
「まぁ、そうね……」
プロメテウスが自分の所有物――この言い方物凄く気分悪いけど――に執着しない性質だっていうなら話はわかるけど、ピッピ曰くそういうことではないらしいし……。
なのに『ゲーム』の運営がA■■を舞台に選んだ、というのが確かに気にかかる。
「だから……プロメテウス様は亡くなったのではないか、という噂があったの……」
”ピッピ……”
本当に辛そうな、今にも泣きそうな表情でピッピは言った。
……ピッピに限らずS■■の■■には思うところはあるが……こうしてアバターに入っている限りではやはりありすたちと同じ『人間』のように思えて来る。
しかし、一転して表情を引き締めてピッピは続けた。
「でも――今私はそうじゃないと思い始めてきたわ」
”それはもしかして、さっき出た『ゼウス』ってヤツのこと?”
「ええ」
うーむ……ここで新たな登場人物が出て来るとは……。
”念のため確認しておきたいんだけど、そいつってヘパイストスと関係はあるの?”
「『ゲーム』の開発者同士という意味では関係あるし、『ゲーム』内で何かしらの協力関係にはあるかもしれないけど……少なくともD■■に関する点では、ゼウスは関係していないと思うわ」
”そっか”
だったらヘパイストスに関する話とは切り離して考えていいかな?
まぁピッピの言う通り『ゲーム』内で共謀関係にあるかもしれない可能性はあるが……そこは正直わからないし考えても仕方ないところかな。
”それで、ゼウスっていうのは?”
「『M.M.』の開発者――って言うのは話したわよね?」
うん。ていうか、それしか情報がないかな。
「ゼウスは――プロメテウス様を嫌っているのよ……」
意外に人間くさい話が出てきたな……まぁヘパイストスの目的も人間くさいものだったし、S■■の■■は存在そのものはともかく内面はあんまり人間と変わりないってことか。
「彼は自分こそが一番の才能の持ち主だと過信しているのね……だから、今のS■■そのものを■■たと言っても過言ではないプロメテウス様のことが憎くて仕方ないの。
……そんな彼が『C.C.』に対抗して新たに創ったのが『M.M.』……まぁ土台には『C.C.』の技術が使われているんだけど」
何とも微妙な話だ。
例えるなら……パソコンのOSでシェアNo1の製品に対抗して新製品を開発したけど、基盤はそのOSを使っているという感じか。その道の分野の人じゃないとわかりにくい例えだとは思うが。
ともあれ、ゼウスはプロメテウスに嫉妬しているというわけか。
で、対抗して『M.M.』を創ったはいいが、それも結局は『C.C.』が元になっている、と……。
……私の中でゼウスの人間像が『物凄くプライドが高くて扱いにくい人』になってしまったなぁ……。
「彼の歪んだ劣等感がプロメテウス様だけでなく、関係しているもの全てに向けられているとしたら――A■■も狙われているかもしれない。私はそう思うの」
”……それが『ゲーム』の舞台にA■■を選んだ理由……?”
「かもしれないわ。もしそうなら……『■■者不在でA■■を自由に使える』というのも、ゼウスが裏で何かしたせいなのかもしれない……」
裏工作で無理矢理A■■の■■権を奪った、とかか……確かにありえるな、それは……。
でもそれだけだとまだ『弱い』気もする。
「……ラビ、ジュウベェとの決着がついた後のこと――覚えてる?」
”……いや……”
あの時のことはさっぱりと覚えていない。
おぼろげながら覚えていることはあるんだけど、まぁほぼ覚えてないと同義だろう。
「やっぱりそうよね……あの時、私はヘパイストスのことだけじゃなく、ゼウスのことも話そうとしたんだけど……いえ、どちらにしろ時間もなかったしあの時はゼウスについては確証もなかったからね……」
”??”
「はっきりと言うわ。私は、ゼウスがプロメテウス様への嫉妬からA■■を滅茶苦茶にしようとしているのではないかと疑っていたわ。
その証拠に――『M.M.』のテストプレイヤーの勝者に与えられる特典があるわ」
”勝者への特典……? それは?”
そう言えばそんなものがあるという話だった。
『それは話せない』の範疇に含まれているようで、今まで誰からも聞いたことはなかったんだけど……。
「勝者への特典……それは『M.M.の運営権』よ」
”……太っ腹すぎない?”
開発したゲームの運営権をテストプレイヤーに与えるって、相当なもんだと思うけど……。
かかった費用とかのペイが出来ないじゃないかな、それって。
私の懸念にピッピは苦笑しつつ答える。
「まぁそこはA■■のゲーム会社とは仕組みが色々と異なるから、なかなか理解しづらいところね」
うーむ……この辺りはS■■での話になるし、私の感覚では理解できないところか。
……いや、ピッピも確か開発側の人間だと言ってたし、もしかしたら最初から開発外部の人間を勝者としないようにしているからこその特典なのかもしれない。
”『M.M.』って、どうなの? お金になるの?”
「……なるわね、間違いなく」
正直私的には『クソゲー』もいいところなので、売れるとは全く思えないんだけど……これもS■■との感覚の違いがあるのかな?
「『C.C.』の話をしたけど、実際に『C.C.』で■■の■■を■■ことが出来るのってほんの一握りしかいないのよ。その上で、更にアバターを使って介入できるのはもっと少なくなるわ。
……ラビには理解しにくいと思うけど、例えアバターであっても『■■の■■で■■の■■を■■す』っていうのは、S■■の■■にとっては何にも代えがたい魅力的なことなの」
完全に文化の違いだねぇ……。
でもそうか、『M.M.』なら――実際の運用がどうなるかはわからないけど、例えば自分のアカウントを作るだけで参加できるようなゲームであれば、『C.C.』を使えない人でも気軽に参加できて、しかも必ず自分用のアバターを得ることが出来るってわけか。
いまいち私には実感は出来ないし人間で例えるのが難しいけど……。
まぁとにかく『M.M.』はお金になる。これだけはほぼ間違いないみたいだ。
……なら、運営側が出来レースを仕組んだりしてもおかしくはないだろうな。お金目当てに他の世界を侵略するようなヤツもいるんだ、運営権を渡さないために色々と仕込むくらいはしかねない。
「ラビにとって問題なのはそっちじゃないの。
”へ? 副賞?”
おっと、意外な単語が出てきたぞ……?
あー、でも確かに『優勝賞品と副賞』みたいなのはありがちか。
「そう、副賞……」
……自分で話ながら確信を得てきたのか、ピッピの顔にははっきりとわかるくらい、自分の考えに対する自信が見えた。
――それと同時に憂いもまた。
「副賞の内容は――『
”…………何……?”
「最初に聞いた時には耳を疑ったわ。でも、プロメテウス様が私の知らないところで『M.M.』に携わっていて、それでA■■を舞台にしてしかも副賞としたんじゃないか、って無理矢理自分を納得させていたけど……やっぱりおかしいと今は思い始めているわ……」
待て……待て!?
「ああ……どうして今まで気づかなかったのかしら……ゼウスの目的はヘパイストスと似ているのね、
ヘパイストスはあくまで『自分の利益ため』で、ゼウスは『プロメテウス様への嫌がらせ』という差があるけど、どちらも『他人の大切なものを踏みにじる』というのでは共通している……。
……なんてこと……私は■■の■■を守るためとは言え、何てものに協力してしまったの……!?」
…………ああ、もう! この子は……!!
”ピッピ! 後悔は後にして!!”
「っ!?」
文句を言いたいのはこっちの方――いや、きっとありすたちの方なんだろうけど――だ。
悪気があってやったわけじゃないのはわかるし、そうなんだって信じるけど……どうしてこうも悪い方悪い方へと導くんだろうなぁ……この駄■■様……。
はぁ、と大きくため息を吐く。
”もうさ、本当に君には文句も罵倒も幾ら浴びせても足りないくらいだって私は思うよ?”
「う……ご、ごめ――」
”でも、もう今更どうにもならないでしょ。君が君なりに必死になってD■■をヘパイストスから守るために色々やろうとして、それが思わぬ方向でドツボに嵌ったっていう話なのもわかった”
「うっ……ひっく、ごめ……ごめん、なさい……」
……これがなぁ、普通の人間の女相手なら『泣けば済むと思ってんの?』って詰めるところなんだけど……。
私の見る限りピッピは本気で行動して、それが結果として裏目に出まくっているという……こう、言っちゃアレだけど、割と救いようのないミスを繰り返しているのだ。
本人もここに至ってそれをようやく自覚しているみたいだし……今後同じ過ちを繰り返してほしくはないからお説教してもいいんだけど、その時間も惜しい。
べそべそと泣いている
”泣いて後悔するのは――まぁ好きにすればいいよ。正直、だからと言って私は許す気は全くないけどさ……”
「うぅ……」
”まぁ、今言った通り、本当に今更どうにもならないことだってのも私はわかってる。……それに、ピッピの予想が全く間違っている可能性だってまだ残ってる”
ただ、『間違っているという前提』で行動するのは危険だ。
頭の片隅にゼウスのことは覚えておいた方がいいのには違いないだろう。
”……とにかく!”
「……っ」
A■■に迫る危機の可能性は聞いた。
でもそれは今すぐにどうこうなる話ではなさそうだし、間近に迫った危機というわけでもない。
だったら――
”私たちが今すべきことは、D■■を守ること――でしょ?”
「……そ、そうだけど……でも、A■■は……」
”そっちはそっちの話だよ。『ゲーム』はピッピの話が本当だったら、A■■の時間で後一か月半くらいの期間が残されている。
だから――その一か月半で私たちが勝者となる。そして、A■■の■■者権限を他の誰にも渡さない――それで解決だ”
……ことはそう単純ではないだろうけどね……。
『ゲーム』的にはイレギュラー扱いである私が勝者になった時にどうなるのかわからないし、そもそもゼウスが本気でA■■を滅茶苦茶にする気なら勝者に正攻法でなれるかどうかもわからない。
わからないけど――何にしても、それは
私たちがやるべきことは『ヘパイストスからD■■を守ること』。
そしてそれはA■■で今起きている『眠り病』の解決に繋がる可能性が非常に高い。
”しっかりしてよ! 君、この■■の■様なんでしょ?
……この■■をヘパイストスから守ることは、A■■で今起きている問題を解決することにも繋がるし、なによりもマサクルが万が一『ゲーム』の勝者になってしまったらA■■が酷いことになるかもしれないんだ”
恐れているのはそこだ。
ピッピが私に協力を持ちかけてきた時にはD■■の問題はA■■に影響を及ぼさないだろう、と言っていたけど……様々な話を聞いた結果私はそう思えなくなってきた。
仮にマサクルが勝者となった場合、『お金にならない』から放置する、という選択を取ってくれればマシだが……下手をすると『ラグナ・ジン・バラン』のような兵器の実験場として使われる可能性がある。
……それにマサクル、あるいはヘパイストス繋がりで言えば、数多くの使い魔とユニットを苦しめた『冥界』という例がある。
あの『冥界』も、バトーによれば元々は『クエストに選ばれるはずのない、ありえないモンスターに侵略された世界』という話だった。
同じような目にA■■が遭わないとは限らない。それはD■■も同様だ。
”――問題は一つずつ片づけていこう”
頭の中が急速に冷えていくのがわかる。
私の中で、『情け』とかそういうものが押し込められていく。いや、意図的に押し込めていく。
たとえ――
”まず、私たちはヘパイストス、そしてマサクルを
「!? そ、それは……無理よ……」
”ピッピ、さっき君は『アバターが死んでも本体は死なない』って言ったでしょ? それに、前に『ユニットの力ではヘパイストスは殺せない』とも。
だから――そう、『殺す』は比喩だよ、比喩”
――嘘だ。
私は、本気でヘパイストス、あるいはマサクル(とその本体であるS■■■)を殺そうと思っている。
もちろんありすたちの誰にも手を汚させるわけにはいかない。
…………可能であれば、私自身の手で引導を渡したいと思っている。
”ゼウスに関しての懸念はわかった。でも、そっちに関しては後回しでいいよ。ていうか、ピッピの事情的にも、私たちのそもそもの目的としてもやっぱりヘパイストスに対処するのが先だと思うし”
「そ、それは……そうなんだけど……」
どこか怯えたような目でピッピは私を見ている。
……いかんな。
”……ごめん、『殺す』だの強い言葉を使うべきじゃなかった。流石にちょっと気が立ってたかな、はは……”
様々な事実を聞いたことでキャパオーバーになってしまったせいだ、と笑って誤魔化した。
……通じたかどうかは微妙なところだけど。まぁ実際キャパオーバー気味だったのは確かだし。
”まぁ何にしても、今はヘパイストスとマサクルのことに集中しよう。私たち的にも彼らは到底放置しておけないからね。
それに、ゼウスが『ゲーム』に介入しているかどうかは……不確定なんでしょ?”
「……そ、そうね……」
そもそもの話として、ゼウスとやらは『ゲーム』の開発をしていると言っても、『ゲーム』の進行そのものに介入しているかどうかは今のところ未確定だ。
……クラウザーの使っていたチートとか見る限り、開発の人間が関わっているのはほぼほぼ間違いないとは思うけど、それがゼウスとイコールかどうかは勝手に断じられない。
疑わしきは罰さず、だ。
”うん。だから、まず私たちはヘパイストスとマサクルに対処しよう。ゼウスに対処しなければならないとしても、それは後でいいと思う――ピッピが前に提案していた『ゲームのクリア条件』が活きて来るのも、結局のところヘパイストスの件を解決してからだしね”
忘れてはいない。
元々ピッピが私に協力を要請する見返りとして提案したのは『ゲームのクリア条件』――正確にはほぼ勝者となりえるための『ラスボス出現の条件』だ。
それを今聞いても仕方ないし、活用できるのも『眠り病』を無事に解決してからだろう。
「…………そう、ね……ごめんなさい、ラビ。協力をお願いする私の方が迷っていちゃ話にならないわよね……」
戸惑い、悔やみ、怖れ……それらがピッピの表情から消えた。
まぁまだ迷っている、というか後ろめたく思っているのは何となく伝わってくるけど。
「気を取り直して、今後のことについて話し合いましょう。まだ補足しなければならない情報があれば、私の知る限りは全て提供するわ」
”うん、よろしくピッピ”
何にしても情報源として今頼れるのはピッピだけなのだ。
流石に事ここに至ってピッピの方が加害者でヘパイストスが被害者だとは思えない。基本的にピッピの言葉は信用していいだろう。
”……”
「まずは現在のヘパイストス――いえ、マサクルたちの位置と今後の予測ね……」
私の言葉に同意し、目の前の問題について真剣に考え始めるピッピをどこか私は醒めた目で見ていた。
もちろんピッピと会話している私自身はそんなことはおくびにも出さない。
――もしも、ゼウスにしろヘパイストスにしろ、そしてアストラエアにしろ――
――ありすたちの■■に余計な手出しをするなら排除しなけれならない――
……心のどこかで私はそう思っていたのだ。
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