第7.5章10話 ワクワク成長タイム

 私がなっちゃんのお守りのため星見座ほしみくら家へとお邪魔した日の夕方――数日ぶりに、私のユニット七名が全員揃うこととなった。

 遊びに行っていたありすと桃香、それと雪彦君も夕方前に帰宅。最初はこの三人でクエストに行っていたのだが、そのうちなっちゃんと楓が参加。

 しばらくしてから死んだ目をした椛も加わって六人に。

 で、椛が千夏君に(また勝手に)連絡をしてみたところ、千夏君も来れるということで目出度く全員集合と相成ったわけだ。




 この間もそうだったけど、七人が揃ってクエストに行くと凄まじい勢いで敵を殲滅していく。

 初見の強敵であろうともほぼ問題なくクリアできてしまうのだ。

 ……数少ない問題と言っても、突っ込んでいったガブリエラが相手の動きを止める系の能力を持ったモンスターに捕まる、とかくらいだ。そして捕まったところで他六人がすぐさま救出できるし、そもそも麻痺とかの状態異常でもない限りはガブリエラが自力で脱出できてしまう。

 …………うん、あれだ。問題なかったね、きっと。


「ん、ジェムも大分貯まってきた」

”そうだね。ピッピから引き継いだ分と合わせて、ジュウベェ戦の前まで戻った感じかな”


 七人でクエスト行くって、『ゲーム』側的には想定外のことなんだろう。

 当たり前だけど使い魔一人当たり本来はユニットは四人までが最大だ。単純に倍近くの戦力を私たちは持っているわけだし、『ゲーム』の想定する難易度をぶっちぎってしまっていると言ってもいい。

 協力プレイ可能なクエストならばまだ違うんだろうけどね……。

 で、そんな過剰戦力気味の私たちは、結構な高難易度のクエストでも簡単にクリアできてしまう。

 高難易度であればあるほど、クリア報酬のジェムはいっぱい貰えるようになっている。

 というわけで、今私たちは結構なハイペースでジェムを荒稼ぎしていっていることになるのだ。


”それじゃ、折角だし皆のステータスを成長させようか”

「ん、賛成」

「うゅ? さんせー!!」


 かわゆい。


「……これ以上俺ら強くなったら、マジでクリア楽勝なんじゃないっすかね」

「うん。でも油断大敵……ピッピが言うには、この『ゲーム』は『クリアを想定していない』難易度らしいから」

「そうにゃ。ま、強くなって損はないと思うにゃ」


 流石、楓と椛は慎重だ。

 七人揃って戦えば今のところ敵なし、という感じではあるけど、この先どうなるかは全くわからない。

 そもそもモンスターの強さがどこまであるのかがわからないのだ。何となく『嵐の支配者』のレベル9が最高なのかと思ってたけど……アリスたちの力を取り込んだアトラクナクアや『冥界への復讐者ジ・アヴェンジャー』、それにムスペルヘイムなんかはもっとレベルが上だったかもしれない。

 これから出て来る――そして私たちが戦うであろういわゆる『ラスボス』の強さだって全く読めない状態なのだ。クリアを目指す私たちとしては、ステータスは上げられるだけ上げた方がいいに決まってるだろう。

 ……ステータスを上げることで、実は何か不都合が起きる、なんていう罠仕様がないとは言い切れないのがこの『ゲーム』なんだけどね……。




 というわけで、今回は皆の成長を行おう。


”ありすは……まぁもう仕方ないね”

「んー……残念」


 前回のジュウベェ戦の前に、ジェムを使い果たす勢いで成長させてしまったしね。

 実はステータス的にはまだまだ伸ばす余地はあるみたいなんだけど、ジェムを大量に使っても伸びるのがほんのちょっとだけなので効率が物凄く悪い。


「しかたない。わたしに注ぎ込むより、皆を育てた方が有意義……」


 ありすも納得してくれてはいる……はず。

 同じジェムを消費するなら、伸び幅のわずかなアリスに使うよりも、他の六人に使った方が全体としての強化につながるだろう。

 七人揃って常にクエストなりに行けるのであればいいが、前にも述べた通り現実世界の都合で一緒に行けないことは多いし、対戦では変わらず四人までしか参加できないのだ。

 もしかしたら今後高難易度クエストで『人数制限』があるものも出て来るかもしれない。

 いざという時に備えて、全員の強さを満遍なく上げておく方が安全だ。


「……でも、わたし……新しい魔法とか霊装が欲しかった……」

”そ、それは……まぁ仕方ないよ、うん”


 ちなみにアリスだけど、どれだけ成長させてもステータスしか上げられないみたいだ。

 前のヴィヴィアンの時みたいに新魔法が使えるようにはならなかったし、アビゲイルの『シルバリオン』みたいな追加霊装も現れなかった。

 ……まぁアリスって既に『完成』されているユニットだとは思うんだよね。『ゲーム』のバランス的に少しおかしいくらいに、初期から完成度が高かったと思う。

 というか、『pl』とかみたいに自力で新魔法作り出してるし……システムから新しいものが渡されるってないんじゃないかなー。




 ヴィヴィアンについてはステータスアップのみ。

 相変わらず体力だけが異様に伸びて行って、他のステータスは控えめだ。


「うーん、わたくしはこれ以上は成長させないでもよろしいのでは?」


 桃香も自覚している通り、ヴィヴィアンについてはもうほぼ完成したと思っていいのかもしれない。

 まぁもしかしたらもっと成長させたら、また新しい魔法とかが出て来るかもしれないけど……それを期待してジェムをつぎ込むならば、やはり他の子を育てた方が戦力の底上げになるだろう。


”体力の伸びはほんとすごいね……”

「っすね。ジュリエッタの何倍あるんだか……」


 体力の異様な伸びは全く衰えを見せない。

 千夏君の言う通り、既にジュリエッタの倍以上――四倍近くはあり、体力だけで見るならば七人の中でもダントツだ。

 全員に対する支援を主な役割としている関係上、ヴィヴィアンが倒れにくいというのはメリットではあるが、基本的に後方にいるのでそこまで体力を減らす機会もない……難しいところだ。


「でも、ヴィヴィアンは結構瀕死になることが多い気がする……」

「た、確かにそうですわね……」


 『嵐の支配者』戦なんか正にそうだったね、そういえば……。

 つまりはまぁ、私たちが想定した通りの流れで戦えることなんてあんまりない、ってことなのかな……。




「おお!? 何かディスガイズが進化した!?」


 ジュリエッタは今回の成長でステータスだけでなく、ディスガイズが言葉通り『進化』した。

 今までのディスガイズは姿を変えるだけで相手の能力とかはコピー出来なかった。それに、他の魔法を使うとディスガイズが解除されてしまうという欠点があった。

 まぁこれだけでもディスガイズって結構強力な魔法だったとは思うんだけど、今回の進化で更に使い勝手が良くなった。


”ステータス自体は変わらないけど、ディスガイズで化けたモンスターの能力をある程度コピー出来るようになった、ってだけで十分強いよね”

「っす。それに、部分変化可能ってのは色々と使い道がありそうっす。メタモル使っても解かれなくなったってのも大きいっすね」


 ディスガイズの変更点は三点。

 一つはモンスターに限りだけど、変装した相手の能力を一部コピーすることが出来るようになった。

 どういうことかというと、例えば魚系のモンスターに変装ディスガイズしたとしたら、水中を自在に泳ぐ能力――水中呼吸も可能になるということだ。

 今までだと泳ぐにしても自力で泳ぐしかなかったんだけど、これからはそういう必要はなくなる。

 余り使い道はないかもしれないけど、ムスペルヘイム戦の時に火山で吸収した溶岩龍なんかにディスガイズすれば、溶岩の海を泳ぐことだってできるというわけである。


 二つ目の部分変化は、身体の一部分だけディスガイズで変えることが出来るようになった、ということだ。

 今までメタモルを使ってやっていた部分変化を、ディスガイズでも出来るようになる……とだけ聞くとあんまり意味はないように思えるが、ディスガイズならば『肉』の消費がないというのが大きな利点だ。

 よく使う音響探査エコーロケーションとか暗視能力とか、そういう役に立つけどあんまり『肉』を使いたくない能力については、これからはディスガイズで節約しつつ使えるようになる。


 三つ目のメタモルを使っても解除されない、はディスガイズの使い道を大きく広げるものだろう。


「ん、ディスガイズで変装して相手の目をごまかしながら、メタモルで攻撃もできる……なつ兄ずるい」

「ずるくねぇっ! てかちくビーム止めろって!?」


 あくまでメタモルで出来る範囲ではあるけど、モンスターやあるいは障害物に化けて相手の油断を誘いつつ、メタモルで不意打ちできるようになった。しかもディスガイズは解除されないので、そのまま隠れて行動を続けることも出来る。

 これは体力が低めのジュリエッタにとっては大きな利点であろう。


「バンちゃん、なんだか忍者みたいにゃー」

「忍者というより……暗殺者?」

「……確かに……」


 楓と椛の意見に千夏君も頷かざるを得ない。

 恰好はともかくとして、能力的には何気に搦め手寄りだし『忍者』とか『暗殺者』っていう感じなんだよね、ジュリエッタって。

 ま、本人の性格的にも性質的にも、接近戦での殴り合いが得意だから今までそういうイメージが無かっただけで。




”なっちゃんは…………何て言うか……”

「う? ……なっちゃん、だめ……?」

”い、いや!? ダメじゃないよ!? なっちゃんは凄いなって”

「なっちゃんすごい? ……やったー!」


 と、ぎゅうぎゅうに抱きしめられる私。

 なっちゃん、というかガブリエラは何て言うか、『凄い』。これはまぁ嘘ではない。

 何が凄いかというと……とにかくステータスの伸びが全然収まる様子を見せない。


「にゃはは、ピッピも驚いてたにゃ」

「うん。もう結構成長させたはずなんだけどね……」


 ピッピもそりゃ驚くだろう。

 なにせ、ほぼ伸び幅がなくなるくらい育てたアリスよりもステータスが高かったというのに、未だに伸び率に変わりがないのだから。

 その反動なのかどうなのかわからないけど、魔法や霊装についてはほとんど変わりがない。

 これはまぁガブリエラの持つ魔法の内容にもよるかな? オープン、クローズ、ゲート、リュニオン、いずれも効果がはっきりと決まっていてあまり伸びしろのある魔法ではないからだ。


「んー、ナデシコはほんとにスゴイ」

「えへへ~」


 ありすはどう思っているのか――多分言葉通りだろうけど――なっちゃんの頭をなでなでしている。


「ふーむ、戦力的には頼りにはなるんだが……」

「なっちゃんさんですからね……」


 そこが不安っちゃ不安ではあるけどね……。

 でもステータスが上昇する=より頑丈になって安全になる、という意味ではありがたい。他の子ももちろんそうだけど、なっちゃんについては特に危険な目に遭って欲しくないしね。




 ウリエラとサリエラは、共にステータスが伸びただけであった。

 ただ、この二人の場合……ヴィヴィアンと同じくステータスには大分偏りがある。


”相変わらず素早さは滅茶苦茶高いね……”

「まぁ、私たちはそれが生命線だから」

「にゃはは♪ でもユッキーには流石に追いつけないけどにゃー」


 そりゃまぁ、魔法を使わずにバイクで移動するクロエラ並みの速度とか言ったらびっくりだけどね。

 二人の偏りは実は素早さだけではない。


”体力は……まぁ相変わらずだとして、意外なところが伸びたねぇ”


 ウリエラ・サリエラはどちらも全く同じステータスである。

 その二人なんだけど、意外なことに攻撃力のステータスが高めになってきている。


「……多分、霊装を使って物を壊したりすることを想定しているんじゃないかな」

「流石に今日行ったフィールドの結晶とかはクラッシュで壊さないとダメだけど、ちょっとした岩くらいなら自力で壊せた方がフーちゃんの魔法は使いやすいにゃ」


 ジュリエッタみたいに格闘戦をする、というわけにはいかないだろうけど、多分椛が言う通りなのだろう。

 後はいざという時に自分の身を守れるように、とかかな……。

 それと二人は魔力の伸びも良い。元々どちらの魔法も魔力消費量はよほど無茶な使い方をしない限りはさほどでもなく、逆に色々と消費が重くなりがちなギフトの方に回しやすくなっている。

 【消去者イレイサー】【贋作者カウンターフェイター】共に対象の魔法の消費に拠っている。私たちが想定する使い方――【贋作者】ならばアリスの魔法のコピーなどだ――によっては魔力消費が激しくなるので、魔力は多ければ多いほど安心だ。


「ふー姉とはな姉のサポートは頼りになる」


 ありすはそう言うけど……この二人、何気に真面目に戦闘したらそれはそれで強いんだよな……。

 そのことを知っている私と千夏君は、揃って苦笑いを浮かべるのであった。




 最後はクロエラ。

 クロエラもやはりステータスに大きな偏りがあるタイプで、とにかく素早さが異様に高い。


「……クロエラ、ひょっとしてもうバイクに乗らないでも、わたしの《神馬脚甲スレイプニル》やトーカの《ペガサス》とかけっこ出来るんじゃ……?」

「さ、流石にそういう魔法とは比べられないよ……」


 自信なさげに反論する雪彦君だけど、実は私もありすと同じことを思っている。

 クロエラの素早さに関しては本当に七人の中でも抜きんでている。

 瞬間的な速さで言ったら、まだジュリエッタの《アクセラレーション》とかの方が上なんだろうけど、クロエラの場合は素のステータスであるという点が強みだ。継続的な――そして魔力の消費を伴わない速さを発揮し続けられる、というのは強み以外の何物でもないと思う。


”あと、霊装の強化というか……オプションパーツが増えたってのもいいね”

「う、うん……」


 もう一つの大きな強化は、クロエラの大きな特徴であるバイク型霊装『霊機メルカバ』に対して行われた。

 追加霊装……とはちょっと違っていて、バイクに対して新しいパーツを取り付けることが出来たのだ。

 今回の追加は『サイドカー』だった。


「サイドカーということは、隣に誰かを乗せて移動が可能なんですのね」

「そういうことだにゃ。サイドカーに一人、後ろにもう一人乗せれば二人までは消費なしで運べるってことにゃ」


 バイク型霊装のちょっともったいなかった点は、『輸送能力』だ。

 椛の言う通り、後ろに乗せればまぁ今までも一人運べないことはなかったんだけど、そうなるとクロエラにしがみついていないといけなかったし移動する以外のことはほとんど何もできなかった。

 でもサイドカーがあればその問題も解決だ。

 サイドカーに乗っているのであれば自由に魔法を使うことも出来る。クロエラが運転、もう一人がサイドカーに乗って――例えばアリスが乗ったとしたら、移動に関する消費なしにクロエラの移動速度でフィールドを走り回りながら魔法を撃ち続ける、『高速移動砲台』と化すことが出来るだろう。

 単純な移動手段としても、一人分多く乗せることが出来るようになる。

 長時間の高速移動が苦手なジュリエッタ、それとウリエラ・サリエラのサイズならば三人まとめてサイドカーに乗せられるし、ガブリエラをクロエラの後ろに乗せれば、後はアリスとヴィヴィアンが自力で移動すれば全員が足並みを合わせて長距離を高速で移動することが出来るようになるだろう。……そんな場面があるかはわからないけどね。


「バイクも変形できるようになった。良かったね、雪彦」

「え? な、なにが……?」

「変形とか、好きでしょ」

「…………うん」


 楓の言葉に雪彦君は顔を赤らめつつも頷く。そうだよね、変形とか合体って好きだよね、男の子だし。

 それはともかく、霊装の強化はまだある。それが楓の言う『変形』だ。

 これは魔法での変形ではなく、霊装の機能として変形できるようになっている。

 具体的には走行魔法ドライブと連動して、走る道に合わせて自動的に最適な形態へとバイクが変形するようになっているみたいだ――説明にはそう書いてあったけど、これは実験してみないとわからないかな。

 多分だけど、空中走行する『エア・ストライド』とか、使ったことはないけど水上走行とかのドライブを使うと、それに合わせてバイクが変形するようになったのだろう。

 今までも不便はなかったわけではないみたいだけど、空中なら空中、水上なら水上とより適した形態になるのであれば、クロエラの強みである『スピード』を損なうことなくあらゆる場所を走破できるようになってくれると思う。


「にゃはは、それで~? ユッキーは最初に誰を隣に乗せるにゃ~?」

「え、えぇ!?」

「お姉ちゃんも気になる」

「き、気にしないでいいよ!?」

「ん、わたし乗ってみたい」

「お。そうだな、俺も興味あるな」

「こ、こ、恋墨さんと兄ちゃん……!?」


 なぜか究極の選択を迫られる雪彦君。椛も煽らないで欲しいなぁ……。


「……んー、変身した後なら、わたしとなつ兄一緒に乗れる?」

「ああ、確かに。それか変身解いても乗れるな。現実世界じゃアウトだろうけど」


 そりゃね。まぁ『ゲーム』の中まで現実の法律を適用させたらきりないし。


「うゅ? なっちゃんも!!」

「ナデシコも乗れる」

「俺とありんこが変身して、チビ助は変身しないで乗せれば…………まぁいけるか」

「え!? え、ちょっと……!?」


 まぁドライブはメガリスとか弱いモンスターしか出てこない、簡単なクエストでやってもらえばそれでいいか……。

 ……三人いっぺんに乗せないで、順番に乗せればいいんじゃないかなぁ、なんて私は思うんだけどね……。




 ともあれ、今回の強化でまたまた私のチームは全体的に強くなったと思う。

 油断大敵ではあるけど、今ならば『嵐の支配者』とかムスペルヘイムも、私たちのチームだけで何とかなるんじゃないか……そんな気さえしてくる。いや、別にあんなのとまた戦いたいわけではないんだけど。

 後はリスポーン代をちょっと多めに確保しつつ、消耗していたアイテムの補充に使う。

 アイテム自体には特に目新しいものはなく、いつも通りの回復アイテムとか割と便利な『ポータブルゲート』の購入だけで済ませる。

 便利機能も今は新しいものは特にない。ユニット間通話も全員持っているので買い足す必要はないし、アイテムホルダーの数拡張も今回は売ってなかったので現状維持だ。


”さて、今日はこんなところかな”


 流石に七人分ともなると成長させるだけで結構な時間を使う。

 ヴィヴィアンとかガブリエラみたいにステータスを伸ばすことしか出来ない子は悩む必要はないんだけど、新しい能力が貰えるジュリエッタやクロエラなんかは皆ともあれやこれや相談しつつだったのでそこそこ時間がかかった。

 今日のところはもう時間もないし、クエストには挑まずに解散かな。


「ん、仕方ない」

「ですわね。なっちゃんさんも、もう時間でしょうし」


 別になっちゃんのせいというわけではないけど、今の私たちはなっちゃんが基準となっているためあまり夜遅くの活動は控えるようになっている。

 まぁそれでも希望者がいれば、今まで通り21時まではクエストに行くこともあるんだけど……他のことをやったりとか、『ゲーム』から離れたプライベートな時間も必要だろうしということで、特に強制したりはしない。


「あ、お姫ちゃん。この間のお泊り会のことだけど――」


 解散するか、と言ったところで椛が桃香へと話しかける。


「はい。何でしょう、椛お姉さま♡」

「あたしたち、全員参加できることになったから」

「本当ですか!? それは良かったです♡」


 行動が早いな!

 星見座姉弟は揃ってお泊り会参加可能が決まったとのことだ。


”なっちゃんも大丈夫なの?”

「もちろん。父様と母様にもお話して許可を取った」

”そっか、ならいいんだけど”


 親抜きで三歳児をお泊りさせるって、大丈夫なんだろうか……? いや、本人たちが親にも許可を取ったと言っているし、星見座家的には問題はクリアしているという認識なんだろうけど……。


「ふーむ、じゃあ後は俺だけか……」


 残るは千夏君だけだけど、彼については昼間に楓たちが『ちょっと待った』をかけたため保留中だ。

 ……一体あの双子が何を考えているのやら……。


「みーちゃんたちもまだですわ――まぁ和芽お姉さまはわかりませんが、みーちゃんは大丈夫だと思いますけど」

「ん。ミドーはお泊り常連……」


 ……それってあんまり褒められた話じゃないとは思うんだけどなぁ。

 まぁ美々香は桃香の幼馴染でもあるんだし、子供のころからよくお泊りとかしていたらしいから気にすることはないとも思う。


「そういや、日程ってどうなってるんだ?」

「あら? お話していませんでしたっけ?」

「してねー……と思う」


 確かに日程はまだ不明だったかな?

 ……その状態で親御さんに許可取る、って何気にハードル高くないだろうか? 比較的自由が利くであろう大学生とかならともかく、小中学生は流石にね。


「来週――いえ、再来週の週末を予定していますわ。ちょうど月曜日が祝日ですし」

「ああ、なるほどな……むぅ、急と言えば急だが……」

「ま、別に遠出するわけでもないから大丈夫にゃー。バンちゃんもだけしておくにゃ」

「? なんだかわからねーが、まぁいいか……」


 ……ほんと椛たち何する気なんだろ……?

 とにかく、お泊り会は再来週の週末――金~月のうちのいつになるかはまだ未定だが、その範囲内であればいつでも大丈夫とのことだ――にやることとなった。

 色々と不安なこととかはあるけど……まぁ子供たちが楽しんでくれればいいな、と私はそう思うのであった。

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