第7章30話 勇気ある愚かな選択

◆  ◆  ◆  ◆  ◆




「んー、なつ兄……どうすればいいと思う?」

「そうだなぁ」


 ラビが対戦の設定をしている間、千夏に呼ばれたありすは今後の対戦についてどうすればいいか相談をしていた。

 今後ジュウベェの問題を解決するまでは千夏は戦いに加わることは出来ない――それはクエストも同じだ。

 しかし、事戦闘に関しては千夏は頼りになる……とありすは思っている。

 たとえ共に戦うことは出来ずとも、何かアドバイスはしてもらえるのではないか、そんな期待があった。


「一つは、ヤツの魔法を見極めることだな」

「魔法を見極める……どんな魔法を持っているか?」

「ああ。とりあえず、あいつが他のユニットの魔法を奪っている……ってことはある程度は持っている魔法の予測も出来るが……」

「ん」


 前回対戦でラビが予想した魔法については共有済みだ。

 しかし、知り合い以外のユニットが襲われている場合、どんな魔法を使ってくるかは予測できない。

 そのあたりは初見であってもアドリブで対応するしかないだろう。


「気を付けなきゃいけないのは、元の魔法よりも強力になっている場合がある……ってことだな」


 千夏が思い浮かべるのは、《終極超態ギガロマニア》を一刀で切り伏せた《開闢剣》――ガブリエラの『オープン』だ。

 『開く』という魔法ではあるが、明らかにガブリエラが使った時よりも強力だったように思える。


「んー……同じこと、ガブリエラも出来る……かも?」

「まぁそうかもな。ただ、あそこまでの威力になるかはわからねぇな……もう試すこともできねーし」


 ありすと千夏の予想では、オープンは『開く』魔法である。

 《ギガロマニア》を倒した時は、おそらくは『傷口を開いた』のだと予想している。もしかしたら反対の魔法『クローズ』であれば、『傷口を閉じる』ことが出来るかもしれない。

 もっとも、千夏の言うように出来るかどうかを試すことは今や不可能なのだが。


「それに、本当なら組み合わせ不可能な魔法を組み合わせることが出来る、っていうのが厄介だ。《開闢剣》に《重撃剣》を組み合わせるとか、本当なら無理だしな」

「そっか。二人以上のユニットのコンビネーションとも違うことができる……」


 《重撃剣》――の元であろう『重撃かさね』の効果は『直後の攻撃を多重化する』ではあるが、それはユニット本人の攻撃に限定されている。仮にミオが重撃を使ったとしても、共に戦うアビゲイルの攻撃が多重化されないということだ。

 しかしジュウベェは違う。

 他人の魔法を奪って自分のものとしているため、本来ならば組み合わせ不可能な魔法同士を連携させることが出来るのだ。

 《ギガロマニア》にしても、《開闢剣》だけならばおそらく持ち堪えることが出来ただろう。それを《重撃剣》で多重化されてしまったがため、ダメージが許容量を超えてしまったのだ。


「持っている魔法を調べて、どんな組み合わせがありえるか考える……」

「ああ、問題は……魔法を使われたらもう手遅れ、ってことになりえるとこなんだよなぁ……」

「ん……」


 『けん』に徹することすら難しいのも問題だ。

 一撃でやられないまでも、魔法を使われたら致命傷を負わされることだってありえる。


「だが、俺たちには一個だけヤツよりもアドバンテージがある」

「? それは……?」

「前回の対戦で俺たちが全滅しなかった、ってことだ。だからこうして対策を考える時間も出来た」

「んー、でももう時間もない……」


 確かに全滅しなかったのは幸運であったろう。

 そのおかげでジュウベェのギフトの隠された能力を知ることが出来たし、対策を考えることも出来るようになった。

 ありすの言う通り次の対戦はもう間もなく始まってしまうし、根本的な対策は結局立てることは出来なかったが……。

 それでも今回を乗り切ればまた時間は作れる。その時間で今度こそ対策を立てることが出来るかもしれない。


「……ジュウベェにやられないようにして、向こうに魔法を使わせて、よく『視』る……ん、やることはわかった」


 話していてとりあえず対戦でやるべきことは見えて来たのだろう、ありすは一人納得したように頷く。

 実際、それくらいしかやれることはないだろう。千夏もそう考えている。


 ――だけど、それだけじゃじゃないんだよな……。


 前回の対戦の最後、ジュリエッタが妨害したことで使われなかった《投擲剣》のように、逃げ回ろうとしても逃げ切れないような攻撃をしてくる可能性はある。

 だからこそ、桃香はをしてきたのだろう。

 ジュウベェの魔法を見つつ、かつ今回の対戦を確実に乗り切る方法――時間をかければもしかしたらもっと良い案は浮かんだかもしれないが、現状では桃香の提案が最も簡単に実行可能かつ確実な方法だ。それは千夏も認めるところである。

 ……それゆえに、これから起こることを想像し、憂鬱な気分となってしまう。


”桃香……えっ!? ちょ、何を!? ……って、この設定……!?”

「? ラビさん……?」


 と、その時ラビの慌てた声が聞こえてきた。

 ありすがそちらの方を振り返ると――桃香がラビを抱きかかえ、対戦開始のボタンを押そうとしているところだった。


「トーカ!?」

「待て、ありんこ!」


 駆け寄ろうとしたありすの肩を千夏が掴み、押しとどめる。


「なつ兄!?」


 驚きつつも振り払おうとするが、生身のありすの力では千夏が本気で抑えに掛かったら抵抗することは出来ない。

 結局、ありすは桃香を止めることは出来なかった……。


「……なんで……」


 マイルーム内のディスプレイに、対戦フィールドの様子が映しだされる。

 そこには当然のことながら、ヴィヴィアンとラビの姿しかなかった。


「なんでこんなことするの!?」

「……」


 今まで見せたことのないような、感情をむき出しにした声でありすは千夏に詰め寄る。

 あまりの剣幕に千夏はわずかにたじろぐ。


「やめてよ! どうして!? トーカひとりで戦う必要なんてない!! いつもみたいにわたしと一緒に戦って、あいつをぶっ飛ばせばいい!!」

「……ありん…………


 涙声が混じり始めたありすの叫びを聞き、千夏は意を決する。


「バカバカ! トーカのバカ!!」

「ありす、聞け――」

「なつ兄も知ってたんでしょ!? なんで止めなかったの!? なつ兄がいても勝てなかったのに、トーカ一人じゃ――」

「いいから聞け!!」

「……っ!?」


 こちらも今まで聞いたことのない大声でありすに叫ぶ。

 大声で怒鳴られ、ありすがびくりと身を竦ませる。


「さっき話しただろ……あいつにやられないようにしながら、魔法を使わせて、どうすればいいのかを『視』るって」

「…………まさか……!?」


 その言葉だけで、ありすは理解した。

 桃香と千夏が何を考えてこんなことをしたのかを。


「どうして……どうしてトーカを止めなかったの!?」

「……止めらんねぇよ……」


 大きくため息を吐き、千夏は絞り出すような声で続ける。


「もし、俺が戦えたんなら……俺がやるべきことだった……」

「なつ兄……」


 おそらくは、言葉通りのことを千夏はしただろう。

 このままでは勝てない――そうなった時、千夏が一人でジュウベェと対戦し、持っている魔法を使わせてそれをありすたちに見せる。その結果倒れることとなっても構わない……そう思い行動したはずだ。

 同じことを桃香も考えたのだ。

 ありすに恨まれる――あるいは泣かれることは承知の上で、それでもここで桃香一人が犠牲になれば、後一回分のチャンスが生まれる。

 何も考えずに二人で挑んだとしても勝率は大して高くはないだろう。それどころか、今度こそ全滅の可能性が高い。

 だったら、少しでも勝率を高くするために動く方がだ。

 そう言った桃香の言葉に、千夏は結局止めることが出来ず、彼女に協力することにしたのだ。こちらも、同様にありすに恨まれることは承知で。


「お嬢の、あいつの覚悟を……無駄にしてくれるな」

「…………トーカの、バカ……」


 最後にもう一度だけそう呟くと、ありすはディスプレイに映し出される映像に集中する。

 もはやガタガタ騒いだところで現実は何も変わらない。

 桃香が一人でジュウベェに立ち向かうことは避けようもない。

 だったら、千夏の言う通り――桃香が犠牲になることを覚悟の上で挑んだこの対戦、一瞬でも見逃してはならない。


「……わかった。絶対に、無駄になんかしない……!!」

「ああ。よく『視』ろ、そして考えろ――あのクソヤローをぶっ飛ばす方法を!」

「ん!」




*  *  *  *  *




 私たちが今回の対戦フィールドに選んだ『平原』フィールドには面白い特徴がある。

 基本的にはなだらかな平原が果てしなく続く名前通りの場所なんだけど、ランダムで色々な変化をするフィールドなのだ。

 普段は太陽が昇っている『昼間』だが、時々星明りが綺麗な『深夜』だったり、空が真っ赤に染まった『夕暮れ』になったりと空模様が変わる。以前、対戦で雷が降り注ぐ『雷平原』に行ったことがあったけど、あれもこの『平原』フィールドの派生みたいだ。

 今回来た『平原』は……今までに見たことのない変化だった。


「……足を取られると面倒なことになりそうですね……」


 転ばないように足元を確認しながらヴィヴィアンが呟く。

 後ろを振り返ると、歩いて来た足跡がくっきりと残っている。


”……雪の平原……『雪原』フィールドかぁ……よりによってややこしい時に面倒なフィールドに当たっちゃったね”

「はい。ですが、幸いわたくしは格闘を得意とするわけではありませんし、むしろ活用できる場面もあるかもしれません」


 そこまで深くはないけど浅くもなく雪が積もっている『雪原』フィールドだ。

 とりあえず空から新しく雪が降ってくるわけではないのでこれ以上積もることはないだろう。

 後はヴィヴィアンが言うように、《ペガサス》なりで空を飛んでいれば影響はないだろうし、プラスに考えるならジュウベェの足跡を辿ることとかも出来るだろう。とはいえそこまで固執するほどの要素ではないが。


「……」

”……”


 まだジュウベェの姿は見えない。姿を隠すような障害物がいっぱいあるわけではないけど、風によって舞い上げられた雪によって視界はそこまでいいわけではない。

 そんな中、私とヴィヴィアンは黙ったまま静々と歩き続ける。

 理由は――ヴィヴィアンがなぜ一人で対戦に挑んだか、その理由が私にもわかったから。

 お互いにかける言葉が見つからない……そんな感じだ。


”……ヴィヴィアン”

「はい……」


 それでも、黙ったままでいてはいけない。

 ここで話さないと……千夏君の時は躊躇ってしまって大事なことを聞くことが出来なかった。


”なんでこんなことをしようと思ったの?”


 対戦が始まってしまった以上、今更怒ったりするつもりもない。

 それに……ジュウベェへの対抗策を対戦までに考え付けなかった。そのことも、きっとヴィヴィアンの行動の理由の一つではあるんだろう。

 でも、本人の口から聞いておきたいのだ。


「怒って……ますか?」


 恐る恐る、と言った感じで――ヴィヴィアンにしては珍しい態度だ――尋ねて来るけど、私は首を横に振って否定する。


”ううん、怒ってなんかないよ”


 実際怒ってないし。


”でもさ、ヴィヴィアンがこんなことしたんなら、きちんと理由を聞きたい。そうすれば、私だって協力できることがあるかもしれないし”

「ご主人様……」


 これも本音だ。

 ヴィヴィアンは抱きかかえていた私を首の後ろ――私がアリスと一緒に戦う時の位置へと置く。

 意図はわからないけど、とりあえず落っこちないようにヴィヴィアンの首に巻き付いて負ぶさる形に。いつもは抱きかかえられているのでなんか新鮮だな。

 今のところまだジュウベェは現れていない――が、


『ご主人様、わたくしは――この方法が最もだと判断いたしました』


 遠隔通話と切り替えた。

 マイルームに残されたありすたちも対戦の様子は見れるはず、そちらに聞かれないように――いや、ジュウベェに聞かれないように、か?


『”君は……一人で今回の対戦を乗り切って、んだね……”』


 対戦は一日に一度、私から折り返し対戦を挑んだとしても二度が限界だ。

 クラウザーから私への対戦は明日までは絶対に起きることはない――もしチートなりで何度も対戦できるようなら、昨日から今日まで間が空くことはなかっただろう。

 ヴィヴィアンは今日の対戦で全滅しないようにたった一人でジュウベェへと挑み、一日分時間を稼ごうとしているのだ。


『いえ?』

『”へ? 違うの?”』


 だが私の想像を裏切り、あっさりとヴィヴィアンは否定する。


『まぁその考えもないわけではありませんが……それはでございます』

『”ついで?”』

『ええ。結果的に時間は稼げますが、それだけでは勝てません』


 ……まぁ、考える時間が一日分伸びたっていいアイデアが浮かぶとは限らない。


『ですので――姫様が勝つために必要な材料を集めようと思います』

『”必要な材料って……あ、まさか!?”』

『はい。ジュウベェ様の魔法剣、その全てをわたくしが受けます』


 そういうことか……。

 不死身の秘密は置いておくにしても、ジュウベェに勝つには実力勝負で何とかするしかない。

 初見殺しの魔法剣がどれだけあるかはわからないが、前回の対戦で見ることが出来た魔法はわずかでしかないだろう。

 だからヴィヴィアンは、今回の対戦で全ての魔法剣をその身に受ける覚悟で、一人で挑んだのだ。

 魔法剣を見さえすれば、きっとアリスはそれを打ち破る方法を考え付くはずだと信じて……。


『相手の能力を見定めつつ、時間も稼げる――仮にこの場にジュリエッタが残っていたとしても、きっと同じことをしたでしょう。

 ジュウベェ様に勝てるのは、姫様以外におりません。当然、わたくしでも不可能です。

 ですが、わたくしであれば多くの攻撃を受けても耐えることは可能です』


 ……確かに、相手の攻撃をひたすら受ける、ということになれば体力特化のヴィヴィアンが最適だろう。

 ジュリエッタだったら体術でかわすとかで持ち堪えることは出来るかもしれないが、一撃食らえばそれが致命傷となりかねない。実際、前の対戦の時がそうだったし。

 アイテムを使って回復しながらならば、ヴィヴィアンなら10分間攻撃を受け続けることは可能……だろう。


『姫様と共に此度の対戦に挑んでも、全滅の怖れがありました。かといって、当然のことながら姫様一人で戦い、後のことをわたくしに託されても勝ち目はございません。

 なれば――こうすることが合理的であると、わたくしは判断いたします』

『”……そうだけど……確かにそうなんだけど……!”』


 そんな決断を『合理的』だからという理由でして欲しくなかった……!


『”合理的だから、それが一番いい判断だって私は思わないよ……”』

『…………あなた様がそれを仰いますか』

『”?”』


 なぜか呆れたようなヴィヴィアンの心の声。

 いや、もうとにかく対戦フィールドに来てしまった以上、ヴィヴィアンの判断に否をとなえても仕方がない。

 やってしまったものは仕方がない。ここからは、この機会をどう活かすかを考える――それが彼女の言う『合理的な判断』ってものだろう。

 ヴィヴィアンの作ってくれたチャンス……絶対に無駄にしてはならない。


「あら? あらあら、あらぁ?」

「……来ましたね」


 舞い上がる雪煙の向こう側から、ジュウベェが現れた。

 現実世界の粗暴さとは全く結びつかない……所作だけ見れば和服を着たお嬢様なんだけど、これが戦闘になった途端、苛烈な攻撃を加えて来るかつてないユニットと化すのだ。


「貴女一人かしらぁ?」


 きょろきょろと周囲を見渡す仕草を見せるが、演技くさい。

 うわべだけの丁寧さといい、何から何まで作り物めいて見えるのだ、ジュウベェは。


「……ふふ、えぇえぇ、そういうことですか。貴女方の終わりが一日伸びた……ただそれだけですわぁ」


 向こうもヴィヴィアンが時間稼ぎを考えたと判断したのだろう、おっとりとした、だが確固たる嘲りを込めた笑みを浮かべる。

 癪だけど、わざわざ向こうの勘違いを正してやる必要なんてない。


「ふふっ、まぁ合理的な判断ですわね。捨て石になるのは貴女の方がよろしいでしょう」


 ……ほんと癪に障る……!!

 ジュウベェはヴィヴィアンが最後に一人残っても何も出来ないと言っているも同然だ。

 要するに――敵ではない、そう言っているのだろう。

 しかし――


「まさか」


 ヴィヴィアンは場にそぐわぬ朗らかな笑顔でジュウベェの言葉を否定する。


「当然、貴女様を斃すつもりでここへと来ております。ただの捨て石で良い――そのような覚悟の者など、わたくしたちの中におりません」


 ……まさか、これも本音……?

 ヴィヴィアンはジュウベェの魔法を引き出すだけではなく、可能であれば倒すつもりでこの場に臨んでいるのか……。

 どうやら、私はヴィヴィアンのことを見くびっていたようだ。

 彼女の覚悟は私の想像を遥かに超えるレベルで固まっている。

 だったら……私もこの対戦、ヤツの不死身の秘密を解き明かすべく動かなきゃいけない。


『”ヴィヴィアン、今日はこのまま君に掴まったままでお願い”』

『はい、お望みのままに、ご主人様』


 ダイレクトアタックなしなのでどこにいても別に構わないだろうし、ヴィヴィアンに掴まっていることで彼女の動きの妨げにならないとも限らない。

 でも、ジュウベェと限りなく接近するであろうヴィヴィアンのすぐ傍にいること――その距離で戦いを見極めることで、不死身の秘密の一端を掴めたらと思ったのだ。

 ヴィヴィアンも頷き、快く私の願いを聞いてくれる。


「ふふ、困りましたわねぇ……貴女とあたくし、力の差は歴然としておりますのに……それに、聞いていた話と少々違いますわね?」


 クラウザーから見たヴィヴィアン桃香だったら、きっとこんなことをする子には思えなかっただろう。

 困ったと言いつつも霊装に手をかけ戦闘準備を整えるジュウベェ。


「まぁいいでしょう。うふふ……一人ずつ、順番に片づけていくというあたくしのやり方に違いはありませんもの」


 どうやら昨日の対戦でこちらを全滅できなかったことにより、ジュウベェたちは一人ずつ私たちを削って行くことに切り替えたようだ。

 おそらく今日アリスと共に対戦に来たとしても……きっと狙われたのはヴィヴィアンだけだったんだろう。

 ……クラウザーにしろ、ジュウベェにしろ、一人ずつ仲間を奪っていきアリスと私を追い詰める、そういうつもりか……悪趣味な奴らだ。

 そのためもあって、対戦から逃げないように脅しをかけた、というわけか……。

 自分が負けることなど微塵も思っていないのであろう、余裕綽々の態度を崩さないジュウベェだったが……。


「申し上げた通り、貴女を斃すつもりでわたくしはこの場に立っております。

 故に――あえて言わせていただきます」


 ヴィヴィアンも右手に霊装――『全知全能万能魔導書』を手にし、一つ大きく深呼吸。

 そして――未だかつて見たことのない、怒りに顔を歪めた表情へと変わり、左手の中指を突き立てつつ叫ぶ。


「あまり、ナメてんじゃねぇぞ、この盗人風情が――っ!!」

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