第2章13話 ヴィヴィアン捜索 8. 取引に対する考察
* * * * *
”……どう思う、ありす?”
シャロちゃんとの対戦を終え、一旦部屋へと戻ってきて私たちは話し合う。
少なくともトンコツたちとは今は敵ではないのだが……。
「ん……ヴィヴィアンについては、嘘は言ってないと思う……」
ヴィヴィアン=桜嬢という点については、ありす自身もそう推測していたため疑うつもりはないようだ。
まぁ筋は通っているように思えるし、現状他に手掛かりがないので私としてもまずは桜嬢がヴィヴィアンであると仮定して動こうと思う。
「何か、気になる……?」
とりあえず対クラウザー戦については、残る課題はどうやってクラウザーとヴィヴィアンを引き離すかという点だけだ。
何はともあれまずは対戦でヴィヴィアンに勝てなければ話は進まないだろう。
私が気にしているのは、そっちの方ではない。
”ちょっとね。トンコツとシャルロット……彼女たち、
そう、私が気にしているのはトンコツたちの方だ。
ヴィヴィアンたちについての話には嘘はないだろう。しかし、どうも自分たちについての話は嘘、あるいは隠している情報が多い。もちろん、いずれ本当に対戦する時が来るだろうし、フレンドではない私たちに自分たちの情報を全て漏らすことはないだろうけど……。
その点を除いても、やはり信用するのは
”シャロの《アルゴス》――あれで監視してたっていうのは、まぁ多分本当なんだと思う。
じゃあさ、予め《アルゴス》をあちこちの対戦フィールドに撒いておいたって、どうやってだと思う?”
「……対戦、したから?」
”そうだね。じゃあ、一体
「……ん……?」
そうだ。《アルゴス》を撒くためには対戦フィールドに入らなければならない。対戦フィールドに入るには、当然対戦をする必要がある。
でも、彼女は『自分ももう一人のユニットも対戦向きではない』と言っている。
対戦向きではないというのが嘘で、複数のプレイヤーと既に沢山対戦しているという可能性はあるか?
……これは多分ない。実は対戦に自信があるというのであれば、わざわざ私たちと対戦しながらも『取引』を持ち掛ける必要はないはずだ。クラウザーを倒すにしても、自分たちでどうにかしようとするだろう。勝てるかどうかわからないので、私たちを当て馬として利用しようという考えもなくはないが……対戦に自信があるならやっぱりそんなことをする必要はないと思う。
では、どういうことか?
”多分、トンコツは――誰か他のプレイヤーと既に組んでいるんだと思う”
「そ、か……。仲間同士で対戦して《アルゴス》を撒いた――」
”うん。対戦時間も最短にして、BETも低くしておけばお互いに損はしないだろうしね”
とまぁ、そういうことなんじゃないかと私は思う。何にしても、彼らは私たちを利用しようとしているのは疑いようはない。利用するためにアリスの正体という手札を手に入れたのは偶然であろうが。それに、全対戦フィールドに《アルゴス》を撒き終わっているかどうかも怪しい。対戦フィールド数は結構あったし、何より対戦モードが実装されてから今日が三日目だ。本当にアリスの正体を知ったのは偶然なのだろう――対戦初心者が『クセ』のないフィールドを最初に選ぶのではないか、という初心者心理を読んでコロシアムに優先的に撒いた可能性は高いとは思うけど。
で、対戦において脅威となる『最強のプレイヤー』であるクラウザーを排除する――そのために私たちを当てようとしているのだろう。
「ん……どっちにしろ、クラウザーは私たちも戦うつもりだったし、別にいい……」
利用されること自体は癪だが、確かにありすの言う通りだ。何にしても私たちはクラウザーと戦うことになるのだから、ある程度の情報をもらえたことについては素直に喜ぶこととしよう。
出来れば仲良くはしたいとは思うんだけど、こっちを利用する気まんまんの相手と上手くやれるものかどうか……。
”……そういえば、あのシャロ――シャルロット、もしかして……”
「ん。多分違う」
ふと思ったことを口にしようとしたが、ありすも同じことは考えていたのだろう。即座に否定される。
シャルロット=美藤嬢じゃないかな、と思ったんだけど……。もしかしたら、もう一人のユニット――確か『ジェーン』だったか――の方が美藤嬢の可能性もある。だから、桜嬢の方がヴィヴィアンであるとすぐにわかったのではないかと思ったのだ。何しろ、美藤嬢なら当然ありすも桜嬢の知っているわけだし。
ま、シャルロットの正体とか、美藤嬢が誰のユニットなのかは一旦置いておくことにしよう。機会があれば、いずれわかることだ。
まずはクラウザーとヴィヴィアンについての問題を解決させよう。
……と私たちが再度相談をしようとした時、対戦希望のアイコンが現れる。
相手は――半ば予想していたが、やはりクラウザーからであった……。
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