第2章8話 ヴィヴィアン捜索 3. 彼女たちの人となり

*  *  *  *  *




 本当の本当に何も考えていないわけではないので、一先ずありすと情報共有をする。

 ヴィヴィアンの魔法の正体についての推測、そしてヴィヴィアンの『候補』となる二人について……。


「……ミドーとサクラのどっちか……」


 学校にいる間は不自然な態度にならないように敢えて伝えていなかった情報を伝えると、ありすは少し考え込む。特にショックを受けている印象はないが、ありすの場合は本当に表情に出ないからわからないんだよね……。


”二人はどういう子なの?”


 とにかくどちらがヴィヴィアンなのかはっきりさせたい――二人とも違うのであればそれはそれでいいのだが……ああ、いや、ますますヴィヴィアンの正体がわからなくなってしまうので困ると言えば困るか。

 情報が欲しい。私は二人がどういう子なのかさっぱりわからないので、そのあたりはありすの方が詳しいだろう。


「ん……ミドーは……うちのクラスの『裏』委員長……」


 ん?


「サクラは、委員長……」


 んん?

 何、その『裏委員長』って……。


”えーっと、つまり……?”


 委員長に裏とか表とかってあるの?

 ありすもどう説明したらいいのか困っている様子だが、私も困る。


「んー……ミドーの方が、すごい」


 ……そっかー……。


「でも、二人とも、クラスのみんなからは好かれている……と思う」


 そこは私もありすの視界を通して見て感じでわかった。

 なるほど、なんとなくわかった。桜嬢の方がクラス委員長なのは確かだし、学級会とかをけん引する役割なのは間違いない。けど、裏で色々調整したりするのが美藤嬢の方、ということだろうか。委員長と裏委員長が同じ方向を向いているのであれば、まぁ頼もしいことこの上ない。


「二人は、確か……ずっと同じクラスで、家も近くて、仲がいい……」

”ふんふん。幼馴染ってやつかな”

「そう、それ」


 本格的に現実離れした『お嬢様』の桜嬢と気安い関係だなーとは見てて思ったが、家が近所でずっと同じクラスというのであれば納得だ。

 ……気安いと言えるかどうかは別として、ありすもまぁ大概だとは思うけど。この子の場合は、どっちかというと『物怖じしない』かな。


「……ミドーは、完璧超人……」

”へぇ?”

「ん、テストはいつも100点……運動は何でも出来る……男子にも女子にもモテモテ……」


 わかる。


「サクラは……うん……」


 なぜか目を反らす。

 ……前にマックで遭遇した時もそうだったが、意外と困ったちゃんなのだろうか?


「ん……うちのクラスの、ゆるキャラ……? みたいな……?」


 えーっと……好かれていることは間違いなさそうだけど、美藤嬢と比べてその発言ってことは……。

 ……うん、そこは触れないでいてあげた方が良さそうだ。


”そっか。まぁ方向性はちょっと違うみたいだけど、どっちもクラスの中心人物で、皆からも好かれているってことだね”


 やはりどちらもヴィヴィアンとは結び付きそうにない。

 現実での印象から探るのはちょっと無理そうだ。変身後と現実世界との姿や言動は一致しないのはわかってはいるが……。


”ありすはどう思う?”


 割と手詰まりになってしまった感がある。

 ここは一つ、実際に二人と同じクラスでそれなりの期間過ごしてきたありすの意見を聞いてみたい。


「……多分、サクラがヴィヴィアンだと思う……」


 意外にもありすはヴィヴィアンの正体が桜嬢の方であると言い切った。多分、付きだが。

 何か根拠があるのだろうか? それとも、ただの当てずっぽうか。


”それはどうして?”


 私の知らないことをありすは知っている、もしくは感じ取っているかもしれない。

 興味本位で尋ねてみると、かくんの首を傾げ、んー、と唇に指を当てて考え込む。


「んー……あのね、わたし、思ったんだけど――」


 ありすがヴィヴィアン=桜嬢であると思った根拠を話そうと言葉を選んでいる。

 と、そこで視界の隅に対戦希望者が現れたことを示すアイコンが表示された。


”ちょっと待って。ありす、対戦したいってプレイヤーが現れたみたいだ”

「! ん、ヴィヴィアン?」


 可能性としてはありうる。

 アイコンをクリックしてみると……。


”……いや、違うみたい。

 プレイヤー名……は? 『トンコツ』!?”


 何その名前。ふざけてるの?

 何とも力の抜ける名前だが、とにかくクラウザーではない。


”どうする?”


 対戦を受けるか受けないかはこちらで決めることが出来る。

 クラウザーに集中するのであれば拒否してもいいのだが……。


「ん、行く」


 即断即決でありすは対戦を受けることを選択した。

 昨日の今日で異なるプレイヤーから対戦依頼が来たのが、果たしてクラウザーと関係があるのかどうかはわからないが……いずれにしろ得られるものはあるだろう。


”わかった。じゃあ対戦を受けよう!”

「ん!」


 対戦場所を『荒野ステージ』、対戦時間を『30分』、プレイヤーへのダイレクトアタックはなしに設定。BET額は前回と同じく1000ジェムに指定して、私たちは二度目の対戦へと臨む――

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