小さな魔女のはじめてのおつかい3

「ご馳走様でした!」

「美味しく頂きました。食器片付けますね」

 手際よくお皿を回収するウル。わたしも片付けを手伝いたいけど、この間お皿を持ちながら転んでしまって、心配をかけてしまった。

「ありがとう、ウル」

 だからお礼をだけを言って、コップの中に残ったホットミルクを飲んだ。ホットと言うには冷たい。冷めてしまったようだけど、しっかり飲みほしウルに手渡す。

「ウル、今日は運ぶだけでいい」

「えっ。ですが……」

「ルーチェが早く行きたそうだからな。俺の手伝いしてたら遅くなるだろ」

「分かりました。ご主人様少しお待ちください」

 そんなに顔に出てたかな。自分の顔は見えないのでわからないけど、ちょっと恥ずかしい。

「うん。わたし部屋で薬とかの確認してくるね」

 昨日2回点検したけど、やっぱり不安だ。最初だし、失敗したくない。わたしは自分の部屋に戻る。

 今日の納品は傷薬に、やけどの薬、あと胃腸薬。初めてだから数は少なめにした方がいいというお兄ちゃんの意見が採用され、数も種類も多くない。それでも念入りに何度か数を確認する。納品書に記入ミスや、漏れがないかも2、3回確認した。ちょうど終わった頃に、コンコンと控えめなノックが聞こえる。

「ご主人様準備終わりましたか?」

「うん!」

 わたしは薬の入った箱に、小さくなる魔法をかけてカバンに入れた。部屋のドアを開ければ笑顔のウルがいる。

「それじゃあ行こっか」

「はい。ご主人様、歩いて向かいますか?」

「うん、行きは歩くよ。……帰りはもしかしたら頼むかも、その時はよろしくね」

 本当は最後まで自分で頑張りたい。けどお兄ちゃんとも無理をしないって約束したから。もしダメな時は素直にウルを頼ろう。

「お任せ下さい!」

 家を出る前にキッチンに寄る。お兄ちゃんは、朝ごはんの食器を洗っている最中だった。

「お兄ちゃん。行ってきます」

 わたしの声に振り向いたお兄ちゃんは、少し寂しそうな顔をしている。

「いってらしゃい。頑張ってこい」

 カバンの紐をぎゅっと握り、わたしは元気に「うん!」と返事をした。

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