エピローグ:ひと時の休息を。
光りが収まると、二人が降って来る。
「お疲れ様、二人共」
それを受け止め着地する。
「はぁ……はぁ……」
「まったく……、ぼろぼろでは無いか……」
息切れしている結菜を酒吞が優しく撫でる。酒吞も矛先鈴が刺さっているのでのほほんとしてるのは不味いんだけど……。
「酒吞、抜くから少し我慢してね」
「わかった、優しく頼むぞ……いたぁ!?」
遠慮なく抜いて回復魔法をかける、その後は魂の様子を確認すると楔と茨はすっかり消えていた、角と片目の色は戻らなかったけど……。
「うぅ……痛いぞ優希!」
「我慢して下さい、優希さんも私もたくさん心配したんですから」
「それに一気に引き抜かないと、血が体内に残っちゃうからね」
「うぅ……酷い奴だ……」
「あ、そういえば清明さんの鏡、治るかな?」
「治ったとて魂は戻らんよ、それにあ奴の事だ。いくつも身代わりを作っておるだろうし問題は無かろうて」
「まぁ、修理したし、後で試してみるよ」
流石に功労者だし放置するのも気が引けるからね。
「お主が良いなら良いが……。ふぅ……それにしても、もう夜明けか……」
酒吞の鬼道とダンジョンの繋がりが終わり崩壊していく、彼女が見る遠くの空は夜明けの朱色が顔をのぞかせていた。
「ヤバいな……早く帰らないと……」
今日は優羽との水族館の日だ。
「どうしたんだ(です)? 」
二人が首を傾げる、その姿を見ると双子の姉妹の様だ。
「えっと……今日は娘と水族館に行く日なんだ……」
「ほう、ならば。早く帰らないとね」
「そうですね、なので優希さん私が優希さんに抱かれる形で……」
「仕方ないな、私は背中で我慢しようか……」
二人にサンドイッチにされる俺、流石に帰りは転移なんだけど……。
「えっと……転移じゃ駄目?」
「ぶーぶー優希さんロマンが無いです」
「そうだなぁ……優希、もう少し女性が喜ぶ事をしなさいよ」
「えっと……はい……」
そうして酒吞を背中に乗せ、結菜を抱いて帰るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「という訳で、酒吞さんは私の式神になったので、公の場ではおねーちゃんで通そうと思います」
両親の前でドヤ顔をする結菜、それと凄く申し訳無さそうに顔を伏せている酒吞。
「優希君、話が見えないのだが……」
「えっと……この方は昨晩結菜と一緒になっていた酒呑童子さんでいいのかしら?」
帰って来て早々に結菜に起こされた二人が目を丸くして聞いてくる。
「はい、えっと結菜に入ってた……で良いのかな? その酒呑童子さんです、因みに歴史上で〝鬼〟と呼ばれた存在です」
「まさか……本当に存在していたとは……」
「ですが、どうして? 結菜と同じ姿を?」
「えっと話せば長くなるのですが……」
酒呑の過去、晴明さんの事、分御霊の術の事、茨木童子の企み、それを踏まえた上で結菜自身が酒吞を助けたいと願った事。
それを結菜と共に話し終えると結弦さんと菜緒さんが大きく顔を見合わせた。
「事情は分かった、まず酒吞童子さん。結菜を助けてくれてありがとうそして、これからよろしくお願いします」
「結弦殿……」
「私も結菜がお嫁に行って、少し寂しいと思いましたので酒吞童子さんが居て下さると嬉しいですわ」
「あーその事なのですが……結菜とはまだ、同居しません」
「「「「えぇ!?」」」」
いや、結菜と酒吞は何で驚くのさ……帰りがけに決めたじゃん……。
「どどど、どうしてだい!?」
「結菜が何か粗相を!?」
驚く二人を手で制しながら説明をする。
「えっと、結菜はまだ学校生活が1年ありますし、わざわざ毎朝転移で通学するのも気が休まらないですから最低あと一年間はこっちで過ごしたいとの事です」
「それに、結菜はせっかく両親と仲良くなれたのに、即離れ離れは寂しいと言ってたからねぇ」
「酒吞さん!? それは言わない約束でしょ!?」
「あれ? 〝言わないでは〟お約束という奴では? 私鬼だからわかんなーい」
酒吞の暴露に肩を掴んでがくがくと揺さぶる結菜、一方の酒吞はおとぼけをしている。
その姿に4人の笑いが溢れる、そこで襖が開いて耀が顔を出す。
「ご歓談の所すみません皆さん。優希、楽しそうな所悪いけど……そろそろ優羽との約束の時間よ?」
「あ゛っ……もうそんな時間?」
時計を見ると8時を過ぎていた、確か水族館の開館時間は九時半だよな……。
「うん、でも向こうのホテルのチェックアウトとか、移動があるからそろそろ時間が無いわよ」
「そうだな……ほとんどはメアリーがやってくれるだろうけど。流石に任せっきりは不味いしな……」
今日は一日優羽に使う時間だし、明日にはこっちでのダンジョン探索になる。だったら時間は多く取ってあげないといけないからな。
「すみません、娘との約束がありまして……」
「そうか、じゃあ急がないとな」
「そうね、娘に嫌われてしまうもの」
「ありがとうございます、結菜と酒吞はどうする?」
「行っても良いのですか?」
「あぁ、今日は優羽がメインだからそこまで構えなくなっちゃうけど……」
「わかりました、行かせてもらいます。皆様とのご挨拶もしたいので」
「了解、酒吞は?」
「そうね、私も行ってみたいわ。水族館って行った事無いし、結菜が寂しくない様に相手もしないとね」
そう言って結菜の頭を撫でる酒吞。
「わかった……あーでも服とか無いか……」
「それでしたら私の服がありますので、行きましょう酒吞さん」
「わかった、ひっぱるでない!?」
立ち上がる結菜、引かれた酒吞も躓きそうになりながら引っ張られていく。
「じゃあ、私は二人の準備手伝って来るわね」
耀も二人の後を追っていった。
「さて、それじゃあ俺も出発前に一つやる事を……」
倉庫で清明さんの分け御霊を探さないと。
「「優希君(さん)」」
立ち上がろうとしたら結弦さんと菜緒さんに引き留められた。
「この度は、大変に迷惑をかけた、それに結菜の事を救ってもらいとても感謝する、ありがとう」
「えっ、えっと。俺がやりたい事をやっただけですし、それに結菜を二人から取ってしまう形になってしまいましたし……」
「それでもよ、私達の勘違いを正して、私達に結菜の大切さを教えてくれた。それに酒吞さんという新しい家族まで連れてきてくれた、とても感謝してもしきれないわ。それに優希さんのお陰で娘の花嫁姿が見れそうですもの」
「えっと……それは心……西園寺さんがお二人を叱ったからですし、それこそ酒吞の事は俺と結菜の我儘ですから」
「そうだなぁ……だとしても花嫁姿が見れるのは嬉しい事だよ、そうだ、3人の結婚式は神前式で良いか?」
「そうですね、神前式でしたら酒吞さんの角が隠せますしね」
「えっと……どういう事ですか?」
3人って……?
そう答えると、二人がキョトンとする。
「まさか……」
「気付いて無いのですね……」
呆れたように言う二人、俺は理解しようと頭を巡らせるのだった。
⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤⏤
作者です。
【第12回ネット小説大賞】二次選考通過してました!!
【ファンタジー長編コンテスト】中間選考突破してました!!
読者の皆様ありがとうございます!!
248万7000PV超えました!!ありがとうございます!
毎日、そしてここまで読んでいただける方、ありがとうございます!
読んでいただける方には感謝しかありませんが!!
♡も4万7900超えました!! 爆増過ぎて驚きました!!
毎日ありがとうございます!!
☆も1347になりました、1340超えました!ありがとうございます!
感想も新規ブクマもありがとうございます!!
6270超えてました! ありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます