第81話:分け御霊の術②

それから少し休憩して結菜と酒吞童子の【分け御霊】を行う事になった。


「優希よ、貴殿は神剣、又はそれに値するものは持っているか?」


「これで大丈夫ですか?」


俺は神様から貰った神刀を取りだす。


「なんだそれ……神力まみれじゃないか……」


「まぁ、神様から貰った物ですから」


唖然とする晴明さん、それから大きくため息をつく。


「そうか、もう何も聞くまい……。それでは準備をしようと思うのだが良いだろうか?」


「はい、それで何をすれば?」


「あぁ、結界として区切る為の麻紐があれば良いが、それと三盆や榊は……ある訳無いか……」


「ありますよ? 全部。この間使ったので……」


苦笑いをしながら折りたたみ机とその上に言われたものを出していく、この間地鎮祭をやる時に使ったし。


「何故持っているんだ……まぁ良い並べてくれ、後は麻紐を結ぶ棒が必要だが……」


周りを見回す晴明さん、まぁ石柱で良いなら簡単だし。


「柱の材質は何でも良いんですか?」


「あぁ、区切りの為の結界だからな」


「じゃあ『——クリエイトロック!』」


細く頑丈な石柱を生み出す。


「…………。それじゃあ結ぶか……私は触れられない故任せるぞ」


呆れられた……そしてしれっと魔法をスルーされる。


「麻紐で区切ったら【分け御霊】を入れる入れ物を、祭壇のこちら側に置くんだ」


右手側を指差す、そういえば入れ物はどうするのだろう?


「優希よ、こちらに来い。そして耳を貸せ」


酒呑童子に言われ近づく、そして耳打ちをされる。


「今、結菜の身体に植え付けられた鬼道によって胎にはもう一つの身体……簡単に言うと赤子が出来ておる、今は妾の【鬼國鏡界伏魔宮鬼道】で抑えておるが清明の作りし結界に入ると一気に膨れ上がり産気づく、故に結菜の胎を切って赤子を取りだすのだ」


よく見ると、結菜のお腹は少し大きくなっている。つまり帝王切開とかいうのが必要というわけだ。


「母体は大丈夫だったはずだろ?」


「そう思ったのだがな……この大江山に入ってからおかしいのだ、鬼道への呪力の入り方が尋常ではない。それに結菜も同意しておる」


ダンジョンの効果なのだろうか、どうやら茨木童子の鬼道が強くなっているらしい。


「わかった、つまり時間の勝負って事だな、と言っても俺は出産の手伝いや手術なんてやった事無いぞ?」


「わかっておる、だがお主ならば結菜の傷も間を置かずに治せるだろう?」


「回復魔法頼りって訳か……随分結菜も思い切った事言うな……」


「本来なら優希殿の回復魔法で、肉体の複製を作ってもらうつもりだったのだがな……」


「そうなのか、今はその方法はもうダメなのか?」


「あぁ、正直結菜の魂が赤子の方に移りかけているのだ、故に先に魂を分けねばいけなくなった、それに母体の方に重篤な傷が入れば自ずと健康的な赤子の方に移り変わるだろう」


「わかった、だから切って取りだすんだな」


「そういう事だ、赤子は傷付けるなよ」


そう言って、酒呑童子は神妙な顔で作った結界の元へ行く、自然と俺の手を強く握りながら。


「話は終わったか? ならば始めるぞ。優希は【狐の窓】で魂を見た後、魂を両断するのだ、それから入れ物は……」


結菜のお腹の膨らみに気付いたのだろう、言葉を詰まらせる晴明さん。


「そこは大丈夫です、晴明さん後気をつける所はありますか?」


「大丈夫だ、優希の腕ならば問題は無いだろう」


「それじゃあ始めようか、行くよ結菜、酒呑童子」


『はい!』


「あぁ!」


繋いだ手から結菜の、耳からは酒呑童子の声が聞こえた。


『ぐぅぅぅぅぅ! あぁぁぁぁぁぁ!』


「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」


結界を跨ぐと、途端に二人が苦しみ出す、膨れていくお腹を押さえる二人。


「はぁ!」


結菜の下腹部を思い切り斬りつける、魔法鎧がクッションになり胎内が見える位の傷で停止した。


「あぁぁぁぁぁぁ!」


そこに手を入れてまだ小さい赤ちゃんを引き摺り出すと同時に、赤ちゃんが急成長し始める。


「優希、今だ! 魂の繋がりが今一番薄い! そこを呪文と共に切り掃うんだ!」


晴明さんが声をかける、素早く印を組み狐の窓で繋がりを見ると、混ざり合っていた魂が別れ、綺麗に色分けされている。


「『天地の理よ、数多輝く星の理よ、御魂を分かち、陰陽の理を持ってここに現れよ――双魂ノ儀』!」


繋がりの薄い所を斬ると完全に離れ互いの体に収まる、結菜の身体と魔法服を復元魔法で治療をする。


「優希さん……ありがとうございます……」


「大丈夫か?」


「はい、力が抜けただけですし……。痛いのは前に優希さんに刺された時に慣れちゃいましたから……。それよりも酒吞さんを……」


「あぁ、任せてくれ」


結菜を座らせて酒吞童子の元へ行く、いつの間にか結菜を二回りほど小さくなった姿まで成長していた。


「酒吞童子、大丈夫か?」


「あぁ、大丈夫だ……結菜の方は、沢山血が出ていたが大丈夫か?」


「大丈夫、結菜の方は治療が終わったし。じきに立ち上がれるよ」


「そうか、それは良かった……」


そう言っている間にも結菜と同じ姿まで成長して、瓜二つになる。


「んっ……これで成長が止まるのか……結菜には残念な報告だな……」


そう言って笑う酒呑童子、その体がふわりと浮き上がる、先程と同じ様に魔力を纏い黄金の羽衣に変化する。


「さて……物語の最後はハッピーエンドではなくてはな……」


「酒吞、まさか貴様!!」


晴明さんが悲痛な声を上げた瞬間、俺達は吹き飛ばされた。


「ククク……全くお人好し共というのはこれほどに御しやすいとはな!!」


落ちていた神刀を拾い上げ、俺達に突き付けるのだった。


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作者です。


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