第74話:茨木童子

「我は金童子! 酒呑童子四天王が一人ここから先は茨木童子様の命で通さな……」


「邪魔です!」「邪魔だよ!」


「ぎゃああああああ!?」


冬華が弓で射って、春華が一刀の元に切り捨てる。


「ふぅ……これで一つ」


「さぁ次だー」


駐車場から登り始めた俺達、しばらく登ったのだがどうやら山頂部分がダンジョン化して回廊状態になってる。しかも回廊を抜けるには宝玉が必要との事らしい。


「しかし、敵も可哀想よね……十分に準備してるのにこうして出オチの様にやられるなんて」


消えゆく亡骸を見ながら同情した雰囲気で言う耀。


「あはは……まぁ春香達だし、チラッと見たステータスだと数百倍は違うから相手にはならないよ」


今のだったら心愛でも十分に一人で倒せるレベルだし。


「それにしても、登れど登れど先が見えないわね、駆け上ったりした方が早そうだけど不味いかな?」


アミリアが、登るのを面倒そうに言う。


『恐らく回廊自身が歩く速度で生成されてるので、ダンジョンの外に飛んで行ってしまうかと思います』


「それだと無理そうね……」


うむ、正直俺も面倒だ。というか寒いし早く結菜の元に到着したい。


「アマテラスさん、スサノオちゃんの草薙剣で斬るのは駄目なの?」


『すみません、前回と違って根源を斬って無いので、今切り離してもただ単にそこの区画が外に出るだけですね』


「そうか……厄介だね。まぁ速足で歩こうか」


「そうですね」


皆も頷いて歩き出す


それから5分後。



「我は熊童子! 酒呑童子四天王が一人ここから先は茨木童子様の命で通さな……」


「はぁっ!!」


「ふぎゃああああ!?」


ミュリが瞬殺する、というかこいつ等さっきと同じセリフで出て来たな……。


「同じセリフだったね……」


「うん、流石に見た目は違ったけどね」


宝玉を拾いながら冬華の言葉に相槌を打つ。


「まぁ多分次も同じなんだろうなぁ……」



◇◆◇◆

「我はほしg「邪魔」」


名乗りをする前にユフィが魔法で潰す、なんか可哀想だな……。


「次」


宝玉を持ち上げてすたすたと歩くユフィ、多分ちょっと面倒に思ってるんだろうな。


そして歩く事10分、最後の四天王が現れた。


「我はとらくま童子! よくぞここまで来た! だがその快進撃もここで終わりだ!」


他の鬼よりも一回り大きい鬼が現れた、自己紹介聞いたし良いか。


「はぁっ!」


「はっ?」


スパッと斬って倒す、唖然としてたけどまぁ他の奴等よりは長生きできただろう。


「という訳で宝玉集めたけど、どうすればいいの?」


『そうですね……あっ、ダンジョンに変化が現れました!』


都合よく扉が現れたので開く、屋外なのに室内が存在している。そして部屋の奥に一人の男性と裸で全身に入れ墨が施された結菜が祭壇へ寝かされていた。


「ん? あの仕掛けを超える者がいたとはな……」


「あぁ、弱すぎて話にならなかったよ」


肩を竦めて言う、挑発に乗るかな?


「そうか、それでどうした? 私はこう見えて事を急いてるのだが」


「お生憎様、こっちもその子を返してもらいに来たんだけどな」


結菜を指差して言う、一瞥するとこちらに向き直る。


「ふむ、つまりは我と酒吞の悲願を阻む敵か……」


「悲願? 叶わぬ願いでしょ?」


そう言うと、茨木童子は青筋を浮かべて剣を抜く。


「貴様ぁぁぁぁ!!」


「残念だけど、お前の相手は俺じゃ無いんだよ……『我が魔力により上凪優希が命ずる! この藁人形いれものに繋がりし高潔なる汝の魂を繋ぐ。魂の繋がり、五行の理、天地の陰陽に従い、わが友を天下無双の徒となり給え! ――豪剛心身ごうごうしんしん!』」


――ガギンッ!


振り上げられた刀を弾き返す、力だけならシルバーオーガにも匹敵するけど、それだけだ。


「はぁぁぁぁぁあ!!!!」


「ぐはぁ!?」


俺に強化された心愛が飛び出して茨木童子を殴り飛ばす、錐揉み回転しながらダンジョンの壁に突き刺さる。


「お待たせ優希」


そのタイミングで転移で結菜を奪還した耀が戻って来る。


「これは……酷いですわね……『我が力よ、癒しの水となりこの者を包み癒せ――パーフェクトヒール!』」


エアリスが全身を魔法で生成した水に回復魔法を合わせた簡易カプセルで回復を行う、血や墨が水に滲み出て結菜の肌が綺麗になっていく。


「ぐ、ぐぞぉ!! きざまらぁ!!」


壁から身体を引き抜いた茨木童子、先程の男性の姿から醜悪な鬼の姿に変化している。


「ゴロズゴロズゴロズゥゥゥゥゥ!!」


「心愛、合わせる」


魔眼を発動したユフィが重力魔法を振り下ろしてるガントレットに付与する。


「はぁ!! 寝てなさい!!」


「グギャァァァ!?」


見えない左手受け止めようと瞬間、魔法が発動して半身が潰れる。


「はぁぁぁ!!」


「——!?」


普段の数倍の身体強化で回し蹴りを浴びせる、防ごうとした右手と刀を砕きながら削ぎ取った。


「————!! ——!!」


蹴りの余波で喉が潰れたのだろう、叫んでいるがその声は届かない。


『優希様今です! あの祭壇ごと茨木童子を斬れば龍脈と切り離せます!』


「スサノオちゃん!」


『はい!』


空間を裂いて現れたスサノオちゃんが草薙剣へと変化する。


「優希さん!」


茨木童子を祭壇へ投げ込む心愛に合わせて剣を振り上げる。


「これで! 終わりだ!!」


「——————!!」


祭壇もろとも両断する、光が溢れダンジョンが崩壊していった。



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作者です。



【第12回ネット小説大賞】二次選考通過してました!!


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