第63話:戻った平穏と一同伊勢へ

――ミシミシ――ギギギギギッ――バキバキバキッ!


草薙の剣で両断した大木、それに亀裂が広がっていく。


「あれ? これマズイ?」


ぐらりと揺れ倒れそうになる……がその動きが止まる。


「全く、こうなると思って控えててよかったわね!」


「ん、優希は時々猪突猛進」


二人共魔法で大木が倒れない様にしてくれる。


『優希様! わたしを地面に突き立てて下さい!』


「あぁ!」


地面に剣を突き立てる、するとその姿が八岐大蛇となって大木を縛り上げ喰らいつく。


『さぁ! 冬華様・ユキ様!』


「「うん、いっくよぉ!!」」


冬華が弓を射る、それに合わせてユキが繋がれた宇迦之御魂さんを投げ飛とばす。


吐普加美依身多女とほかみえみため!」


鉾先鈴さきほこすずを真ん中迄行った亀裂に突き立てると、魔力が宇迦之御魂さんへ流れ込む。


そして砕け散った大木がキラキラと粒子となり消えていく、ゆっくりと降りて来る宇迦之御魂さん、その姿は綺麗な大人の女性となっていた。


「ふぅ……これで今回の騒動は終わりかな?」


「そうなるといいですね、優希おにーさん。これをどうぞ」


タオルを手渡してくれる春華、そういえば春華ちゃんは草薙剣とか興味ないのかな?


「ねぇ、春華——」


『優希さぁーん、抜いて貰って良いですかぁ~?』


春華に聞こうとしたらスサノオ君の声が聞こえた。


「あぁ、少し待ってて。今行くよ」


「えっと……どうしたんですか優希おにーさん」


「いや、春華は刀剣とかに興味ありそうだし、あの剣には興味無いのかな?って思ってね」


大蛇から剣に戻ったスサノオ君を指差す。


「少しだけありますね、でも銘とかは無いでしょうし、なにより神様が変化したものは少し畏れ多い気がするんです」


「そっか、まぁ確かに三種の神器とか呼ばれるものだし、気後れはしちゃうよなぁ……」


ずぼっと剣を引き抜く、すると元の少年の姿に戻る。


「ありがとうございます、両手が塞がってる状態だったので自分で引き抜けなかったんです」


ぺこりと一礼するスサノオ君、上気した顔と見た目が凄く女の子っぽいけど素戔嗚尊って男だもんな、ツクヨミさんも弟って言ってたし。


「というか、剣先は腕なんだ……」


「あはは……腕と明確に認識してる部分では無いのですが……感覚的に腕だなぁと思ってるだけですね」


「へぇ……それはそうと、修繕しちゃわないとな……」


一応伏見稲荷の本殿までしか入れない様に規制してる訳で、奥宮やそれ以上は立ち入り禁止にしているのだ。


「わかりました、それでは皆さんに伝えてきますね」


「ありがとう春華」


春華が皆に伝え回ってくれる、まぁ一ノ峰自体もダンジョン化や大木との融合が解けて元の大きさに戻ったから声をかけるだけなのだが。


「じゃあ皆離れたし……『復元』」


呪文を唱える、巻き戻しでお社や鳥居、周囲の神蹟から小さな祠まで綺麗に元通りだ。


「「ふぁぁぁぁ! 凄いです!!」」


宇迦之御魂さんとスサノオ君が目を輝かせている、確かに巻き戻しみたいに復元してるから見ていて面白いかもしれない。


「ありがとうございます優希様!」


「うん、直すくらいならどうって事無いしね、それより魔力溜まりとか大丈夫そう?」


ダンジョン化前の形に戻したから、大丈夫とは言え一応は気になるのだ。


「はい、大丈夫です。龍脈からの流れも安定しております」


「うむ、私で一度断ち切り、優希様の復元で龍脈を繋いだからな。それであれば稲荷姫でも安定して扱えるであろう」


ドヤ顔で言うスサノオ君、というかあの剣を刺す行為、あれでまさか龍脈を断ち切ってるとは……。


「あぁ、だから最初大木を斬った際に再生しなかったのか」


「はい、そうです! さすがは優希様! 正解までがお早いです!」


――ピピピ、――ピピピ!


「あ、やばい。そろそろ伊勢に向かう時間だ」


折角だからと予約していた観光列車で向かうつもりだったのだ。


「そうなのですか! では私は一度、メンテナンスの為に高天原に戻ります。後で姉上と共に再度ご挨拶へ向かわせていただきます!」


そう言ってお辞儀をすると、ふっと消えてしまった。恐らくここに居ると気を遣ってしまうからなのだろう。


「宇迦之御魂さんはどうする?」


「妾は今日一日、こちらにおります。安定したとはいえ何かが起こらないとは限りませんので」


「わかった、でも何かあったら一人で対処しようとしないで、すぐにその魔道具を鳴らしてね。そうすれば居場所がわかるし転移の目印になるから駆け付けれるし」


防犯ブザーの魔道具を指差す、すると大きく頷く。


「あいわかった、重ね重ねお手間を取らせて申し訳ありません」


「良いって良いって、遠縁の親戚みたいもんだし。気にしないでくれ」


「優希、それは結構気を遣う位置だと思うわ……」


「そうだね……微妙に頼み辛くて気を遣う位置ね……」


「私も親戚が多いのでわかります……」


耀や鈴香に里菜が言う、そういうものなのか……。


「ま、まぁ無理せず何かあったら伝えてくれ」


「はい、畏まりました!」


俺達の言葉に笑う宇迦之御魂さんに手を振り、俺達は麓の社務所に転移した。



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作者です。


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